そして謎が残った
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夜も深まって庭では虫達が無料リサイタル実施中。
昔、混じって鼻歌で参加していたら、一斉に逃げられて居た堪れない気持ちになった。
そんな思い出があるので今回は不参加。
要は放置する。
俺の前衛的リズムは野生のミュージシャン達にはインパクトが大き過ぎたのだろうか。
謎が深まるばかりだ。
我が家の十六畳ある広めのリビングでは、先程の影響を受けレンタルしてきたクレシェントカレンが支配。
第一期全十六巻コンプリート。
後半のバトルシーンで敵と戦っている映像が100インチの大画面で流れていた。
つい先頃まで親に電話越しで散々世の中の常識やら道徳を怒声混じりで説かれる。
それも両親なので通算三時間は掛かった。
然もあらん。
この状況で能書きやご託を並べる気概はないので、迷惑を掛けた子供の義務として終始防衛態勢を貫いた。
ただ、明日にも面を突き付けて本番が待ち構えている。
それなら今怒らなくても良いではないかと愚考するも、こちらは養われている弱い立場、ならば今の内に短時間で切り抜けられる様に対策&イメトレをしないといけない。
予習復習のプロである学生の専売特許をここで生かす。
だが、
『ふっ、今宵も月が血のように赤いのだ』
「お疲れさん、一条は普通に挨拶出来ないのか?」
『意志疎通がパーフェクトな我が半身にそんな気遣いは無用』
「はいはい」
精神的に疲れ果てた処へ一条から第三波が到着。
スマホなのでテレビ電話にしないかと提案するも、ウサギになっているのでと却下された。
目が充血してウサギなのかパジャマがウサギさんなのか興味が尽きない。
世間話と事件の話をした後、今回の顛末を切り出された。
『――それにしても何も起こらないってどういうことなのだ?』
「分からない。光はきっちり折った。にも関わらず、今回対象者達は復元しなかった」
折角なのでソファーで寛ぎながらバディと反省会と今後の対策を話し合うつもり。
一条も親に説教されたらしくて鼻声になっていた。
俺の膝の上には遙斗が占領。
俺に寄りかかりポップコーンを食べながら、「頑張れカレン!」真剣にカレンを応援していた。
更にその上には遊びに来ているにゃん太郎が、「ぶにゃあ♪」気持ち良さそうにうたた寝している。
だが、ポップコーンの食べかすの雨の中、折角の毛並みが油で侵食されているのに微動だにしないとは、器が大きいというか豪気だ。




