何かがおかしい
『もう一度聞くが、結論からいえば勇者王は三人ではなかった。これでいいか桂ちゃん』
「そうだな。予言者はイレギュラーと言っていた。なら三人とも不正解でも別段おかしくはない」
『でもさ、何か釈然としない。まるで予言者に踊らされているような錯覚に陥っているみたいだ』
一条のトーンが何オクターブ落ちる。
携帯の声はコンピューター処理された疑似声帯なので直に会っているよりかは大人びて聴こえた。
「確かに全てあいつの指示によるものだからな」
『それに予言者はどうなるのだろうか? 失敗した以上これから連絡が取りづらくなる。今後指示が出てこないとなると活動もしにくくなるのだ』
そう、今までは予言者の未来予想である程度作戦が立てられた。
だが、勇者が見付けられなかった以上、これ以降は俺達でやっていかなければならない。
これは羅針盤や方位磁石をロストした事に等しい事だ。
『でも桂ちゃん、本当に予言者は勇者を消すつもりがあるのだろうか?』
「どういう事だ?」
『前々から予言者の存在に疑問を思っていたのだ。あいつの説明する事は辻褄が合っている。だけど合い過ぎるのだ。完璧なアリバイがあるからといってシロと決めつけるのは時期早々な気がする』
一条はまるで完全犯罪のトリックを解こうとしている名探偵の如く、緊張感のある鋭い声色で俺に疑問を投げ掛ける。
「俺に色々とアドバイスをくれた奴だ。疑ったことはない」
『そうかもしれない。しかし、予言者を名乗る以上、優位性は向こう側にあり何でも可能だ。それに桂ちゃんに嘘を教えた可能性も示唆出来る。予言というのはあやふやなのだ。今までの言動を洗い直すと、エセ予言者の様に外れても逃げ口を色々用意している嫌いがあるのだ』
確かに胡散臭い奴だ。
いつの世も予言者や占い師の類いは人の人生を惑わす輩もいる。
だが、俺の前に現れた予言者は魔王の記憶を取り戻してくれた恩人。
もし、何も知らずに勘太郎として勇者王と対峙したら、ものの数分で死ぬ心構えも出来ずこの世を去っただろう。
「まるで遊ばれているってことか?」
『そこまでは確証出来ない。でも、桂ちゃんの勇者討伐の指示に法則性が感じられるんだ』
「法則性?」
とうとう探偵ものになってきたぞ。
俺の脳内では一条が探偵帽被ってパイプを咥えている姿が浮かんだ。




