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藤娘とコスプレイヤー


 着物は成人式のような派手さはないシックな藍色。

 そこに多数の藤が目立たぬように咲き誇っていた。


 お題目は藤娘。


 これの成り立ちは日舞や歌舞伎など色々あってまちまち。  

 元々は明確なストーリーはないそうだが、絵から抜け出したとか人形だとか藤の精霊または花魁など時代と共に枝分かれしたという。


 人差し軽やかに舞う姿は、こだわりを完全に捨て、晴れやかで艶やか。

 藤の代わりに持っている木の枝を小道具として見事に使い、スマホから流れ出る三味線のリズムに合わせる。

 何時もの香月からは想像できない本物も精霊がそこにいた。


 ともかくお世辞抜きで綺麗といって良い。。

 他の皆が溜め息混じりで惚けるのも頷けた。


「――どーもどーも」


 だが、舞い終わった金髪の舞姫は何故だかVサイン。

 最後だけ締まらなかった。


「流石は私のライバル。もっと頑張らないと」

「ばか、楓の方がもう数十歩先に行っているよ」

「MAPLEはあくまでもバーチャル世界のヒロイン。私の目標はあくまでも正義の味方。もっと精進しないと……」


 MAPLEこと小泉 楓子はそう自身に言い聞かせ、俺の方向に向き直る。


「桂さん。正直まだ、私は貴方が大嫌い。親友のサラサさんを泣かした罪を忘れた事は無い」


 丸メガネに映っているものは、裁きを受けろ、この犯罪者と訴えかけている鋭いまなこ。


「分かっている。あれは俺がどうにかしていたんだ。俺も今さらお前には許して欲しいとは言わないよ」

「でも、感謝もしているの。あんなに内気だったサラサさんをここまで明るくしてくれたのは、間違いなく貴方の功績。貴方の中二病に影響されるとは思ってなかったけど、お礼を言わせて」

「俺は何もしてない。それに俺は中二病でもない」


 本当にただの何処にでもいる隠居魔王だっただけだ。


「それに私はヒロインになりたかった。それは今も変わらない。でも、ただ皆を助ける事だけが使命じゃない事に、今回のヒーローショーで分かった気がした」

「皆を笑顔にするのも大事なヒロインの仕事だし」

「うん。良い勉強になった、ありがとう」


 あの小泉が俺に頭を下げた。

 面を食らった俺は何も言えなかった。


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