再び校舎裏
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夜。
周囲は昔、弟が誤ってぶちまけた墨汁の様に漆黒に染め上げられていた。
しかし同じ子供でも、お隣さんのお転婆と絵の具ウォーズを繰り広げて家がパステルカラーになったのに比べれば可愛いもの。
奉仕活動は終了。
関係者以外帰宅して学園内は閑散としていた。
街中だから満天の星空と表現するには明るかったが、それなりに視認は可能だった。
なのだが、
「サラサ、何であんなことしたの?」
「楓子が悩んでいたのだ。友人として何か出来る事はないのかと思って」
「それは知っているよ。私も相談受けていたからね」
ここだけ雲行きが怪しい。
円谷は冷静に怒っていたからだ。
信頼を裏切った俺達に起死回生が出来る都合のよいアイテムは無い。
舞台はつい先日、我が盟友にゃん太郎救出劇が繰り広げたメインステージである木の下。
ここは伝説の木として知られている余齢五千年を超す老木が余生を送っている所だ。
「でも、あれはやりすぎだよ。ニュースになってしまったじゃない」
「ごめん」
「俺も同罪だ」
「勘太郎、あんたが付いていながら何をやっていたのよ」
そう、あの騒動はニュースとして日本中に流れてしまったのだ。
幸いMAPLEの正体は俺達以外知らない。
原因は間違えなく高いネームバリューだ。
報道陣は押し寄せるは、親達には大目玉を食らうは、先生達にもお説教される。
良かれと思ったことがことごとく裏目に出てしまった。
ここまで大騒動になるとは思ってなかった。
一条にも嘘を付かせて申し訳ない気持ちで一杯だ。
「ごめん。お前のメンツ潰してしまった」
「そんなものはどうでもいい。何で私に一言相談してくれなかったのか。それがとても悲しいだけよ。私と勘太郎の関係ってそんなものだったの? 私達の共に刻んできた16年間の時って何だったの?」
何も言い返せない。
まだ何時ものように殴られた方が気が楽だ。
「凛子重い、重すぎる! これじゃ意中の人に逃げられてしまうよ」
「凛子さん、そのぐらいで許してあげれば?」
「そうそう、本人達も反省しているみたいだし」
「「サラサ(ちゃん)は言うな!」」
「きゅう!」
ハムスターの鳴きマネで誤魔化す一条。
どさくさに紛れて被害者サイドに回ろうとしたが流石に看破。
香月と小泉。
結果的にこいつらにも巻き込んでしまって、随分迷惑を掛けてしまった。




