賽は投げられた
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俺と香月の班は同じ市内にある自然公園に来ていた。
人数は50人くらい。
全校生徒で分けたからこんなもんだろう。
しかしながら、多数の偽善者を擁する紅葉ヶ丘学園生でも眼前の不毛な光景に、天竺に着いたらヒンドゥー教だった三蔵法師みたく落胆と嘆きしかない。
今回俺達はここで奉仕活動をする。
内容は公園の清掃。
定番中の定番で意外性要素はゼロだ。
ここは人気の憩いスポット。
市民に活用されているということは、それだけ汚れやすいということだ
だから俺達くじで選ばれた精鋭、池の清掃中隊が目標の惨状に硬直していても何の問題もない。
そう、池が濁っていた。
茶色というよりもう黒に近いヘドロだ。
これならモルタルと説明されても信じてしまうだろう。
ラーメンのスープよりこってり濃厚。
極太面が良く合いそうだ。
異臭もひどく獣や人間のアンモニア臭が鼻について、朝食べたものが油断したら逆流してしまう。
「これは酷い」
「うぷぅ」
清掃メンバーは皆気分悪くなっている。
こんなの人間のやることじゃないとまでほざいている奴もちらほら。
だが、それじゃごみ処理や汚水清掃業者や汲み取り業者に失礼だ。
毎日我らが目を逸らしている汚れ仕事をこなしている彼等に、いつも感謝を忘れてはいけない。
無冠のチャンピオンとは彼らの事を指しているものだと俺は思う。
「ほら、みんなぼやいてないでさっさと終わらせよ!」
檄を飛ばしたのはドロップアウトギャル香月。
意外な所でリーダーシップを発揮した。
「「「えええぇぇ!?」」」
帰りたがっている清掃チームは仲良く拒絶のユニゾン。
「そらそら、あんたら手を動かせよ! あーしみたいな劣等生に手柄とられたら内申書に、ラスボス級の大ダメージ食らうよ!」
反応した池清掃チームは文句をぶつぶつ良いながらもモソモソと動き出した。
嗚咽を繰り返しながら、出るわ出るわゴミだらけ。
こんなところじゃ、さぞ泉の女神様は大忙しだっただろう。
金と銀相場が荒れそうだ。
今回のミッション第一弾はもう始まっている。
ここでターゲット香月 まどかを再び倒す。
それが俺の今日最初の仕事。
でも、勘太郎悟空が大活躍しても、結局はあのたぬきち御釈迦様の掌の上なんだろうなと、ロンリーウルフだったのでまだ釈然としない。
問題は何をもって香月の心を折るかだ。
言うまでもなく、作戦は立てている。
1・皆と一緒にどぶさらい。
2・池に落とす。
3・綺麗好きな香月は放棄する。
しかし、こんなチープな予定で本当に香月の心を折る事が可能なのか?
不安が募る。




