どぶさらい
「おい、ばかつら」
「……」
「ばかつら」
「……」
「シカトするな! ガンナム・レイドラーム!」
「俺は桂 勘太郎だ。ばかつらでもないし、ましてやガンナムなんちゃらと言う、そんな中二病ぽい名前じゃない。訂正を要求する」
大体、シカトの意味わかってて使っているのか?
正式名称は鹿十なんだぞ。
博打打ちの隠語。
説明するまでもないと思うが、猪鹿蝶の鹿の事を指した言葉だ。
何でも十月を表す鹿が明後日の方向を向いている事から『鹿十』なんだとか。
だから本来ならば『シカトゥー』って表現するのが筋で、昔の人に対する敬意なのではなかろうか。
「誰がするか。そんな事より、この臭い何とかしろし?」
「出来るかよ」
いやん、聴こえていたのね。
勘太郎はずかすぃー。
「魔王なんだからお茶の子さいさいだろ?」
「そんなのフィクションだ。お前は魔女狩りの異端審問官か?」
まだ日蓮と言ってくれた方が蒙古襲来を念仏で撃退したので信憑性がある。
「かもね」
「バカ言ってないでとっとと終わらせるぞ」
「ちぇ、はいなはいなと」
人を小馬鹿にした態度、世の中に絶望した感じ、まるで俺みたいだな。
でも、ここまで拗れてない。
弟を悲しませる事はせんよ。
――作業中。
せっせとどぶさらい。
無論、この膨大な泥を浄化なんて専門の業者じゃないから不可能だ。
だから、自分達がやれることは池に落ちているゴミの回収と周囲の清掃のみだ。
大きめの網ですくう。
ヘドロで死にかかっていたカエルを救う。
段々しんどくなってきた俺の心に手抜き魔が巣食う。
なので体力の限界がきたからサボろうとした矢先、
「もう、いやだ!」
「冗談じゃない、こんな事やってられるかよ!」
とうとう我慢の限界を超えた奴等が悲鳴はあげた。
予想していたとはいえ、何とも情けない限りだ。
同年代の若者として恥ずかしい。
何でもパワハラと騒がれる世の中。
親にも世間にも甘やかされて育ったのだ。
こうなったのも猿でも出来る反省を怠ったのが原因だ。
これから先こんなのが大量生産されたら、メイドインジャパンは世界から無くなるだろうと俺は警鐘を鳴らさずにはいられない。
そんなお前らに格言を伝授してやろう。
誉めて能力を伸ばす、そんなの世迷い言、幻想だ。
ハングリースピリッツは逆境の中でしか育たない。




