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幼馴染みは暴君


 そうこう悶々とイマジネーションが沸いている間にも、我が母校『紅葉ヶ丘学園』に到着。


 我が母校はお堅い学園の割りにミッション系のハイカラな佇まい。

 校名も英語で表記されていて都会的だが、実際は都心に電車で二時間掛かる中途半端田舎だったりする。

 

 校門を潜ると特設テントを設けていた。

 そこが本部。

 何時もなら風紀委員が俺を待ち構えているが。

 ありがたい事に今日はいない。

 しかし、その代わりに腕組みした顔見知りが待ち構えていた。


「おはようサラサ、桂と一緒にきたの?」

「おはよう。桂ちゃんがさぼろうとしていたので、連行してきたのだよ」

「してねえし」


 思ってたけど。

 円谷が寄ってくる。


「おはよう」

「おう」

「おはよう」

「ちいす」

「…………」

「…………」


 何の変哲もない光景。

 だが、これは戦いである。

 挨拶を制す者こそ、この場の主導権を握る事になるからだ。


「お・は・よ・う。目覚ましにバックブリーカーしてあげようか?」

「おはようございませうお嬢様」


 力業の捨てゼリフというか決め技。

 対して早々に深々と礼。

 即ち白旗。


 凄みのある笑顔、手を鳴らす動作で軍配は向こうにあがった。

 俺はもう入院したくない。


「手間かかせないでよね遅刻魔。あんた一人いなくても何の支障もないけど、学園の品位が下がるからイベントだけはちゃんと参加して。馬鹿げた妄想している位なら協調してよね」

「誰が妄想だ風紀員兼ボランティア部員。俺は中二病じゃないと何度言わすんだよ」

「そうなのだ。桂ちゃんは本物だぞ」

「はいはい、良かったね」


 円谷は適当にあしらう。

 釈然としないが大人な勘太郎さんはセーブ。

 実際は怖いだけなんだけどね。

 この理不尽な暴君、アマレス経験者を怒らせてはいけない。


 光の加減で青っぽくも見えなくはない黒髪、ヘアスタイルは首元で全部同じ長さで揃えているワンレングスで決めている。

 相変わらず星形の古ぼけたヘアピンが髪の分け目に刺さっていた。

 いつまで後生大事にしているつもりだ?


 服装はもちろんジャージ。

 学校指定のジャージ。

 スタイルが一目瞭然なジャージ。


 カラーは学年全て赤で統一。

 紅葉ヶ丘とアクセントに紅葉がプリントアウトされてありがたい感がある。

 この横暴風紀委員はスレンダーでスタイルも申し分ない。

 だが、もう少し胸と尻辺りに肉を付けたら俺好みかもしれないなと、バレたらキャメルクラッチじゃ済まない事を考えてみた。


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