予言者来訪
「魔王、事態が変わった」
「…………」
ミッション終了後の夜。
夕飯を食べ終えソファーで横になっていた俺。
牛さんになる覚悟はないが、夢の中で初めて女子から告白される至福を得たので、後先なんて割りとどうでも良い。
リアルで一条に騙されたのが影響しているかは要調査だが、目が覚めたら綺麗さっぱり忘れてしまうのだろう。
そんな中、先を読める癖に空気の読めないチャンネル割り込みの常習者が、気になる一言を引っ提げて割り込んできた。
予言者よ、告白後の手順を色々とショートカットして、カワハギになりきり突き出したこの口角の始末どうしてくれる。
「プライバシーの侵害だぞ。入る時はノックして欲しいものだな」
「光が戻った」
障害物は移動する予言者をすり抜けていった。
幾ら物理法則を意味をなさない夢でも、情緒や雰囲気が台無しだからせめてルールに乗っ取ってほしいものだと、形式だけになってしまったお祓いや録音再生するだけのお経並に警鐘を鳴らしたい。
「どういう事だ? 前置きをショートカットするなんてお前らしくない」
「君が討伐した勇者の光が再び灯ったんだ」
相変わらずフードの闇が濃くて表情は読めないが、声色が珍しい事に低め。
しかも今回は何もちゃちゃを入れて来ない。
今ので緊急性の高い案件と理解。
不満なのだが今回は大目にみた。
「じゃ、勇者王エドウインが見つかったのか?」
「ああ、結果的にそうなる」
だが、予言者は歯切れが悪かった。
浮気がばれそうな野郎みたく歯切れが悪かった。
酷い、私というものがありながら……、などと、何時もみたいな冗談はこの場では相応しくないので避ける。
「予定では光が再び灯ったらそいつが勇者王だったな?」
「そうだな」
嫌な予感したので根本的部分を確認。
分かったのは、幻とはいえ学園の光景と予言者の不協和音が半端ない事だけ。
クロード教諭と良い勝負だ。
「ならどうしてそんなにトーンが暗いんだ?」
「予定が大幅に狂ってしまった。こんな事は経験したことがない。一体何が起こっているんだ?」
「それはこっちが聞きたい」
予言者は幽霊宜しく幻影みたく教壇に立ち、「勇者王が三人いた」と、静かに口を開いた。
「はあっ!? 何だって?」
聞き捨てならぬのでもう一回聞く。
「再び光が灯ったのが三人いたんだ。しかも強い輝きだ」
「一体誰なんだ?」
「小泉 楓子、香月 まどか」
「あいつらか……。後一人は?」
「お前の幼馴染み円谷 凛子だ」
予言者は教室の黒板に名前を書き出す。
異世界人の癖に漢字が妙に上手いのは一旦置いておいて。
俺は自分の視聴覚を疑った。
 




