第九十六話 アレンの帰還
(そんな・・・・・どうして・・・・・そんなことはあり得ないのに・・・・・これじゃまるで100年前と同じじゃない)
ユミは自分が斬られた事に激しく動揺していた。
それ故にチビドラの行動にすぐに対処出来なかった。
「〈龍突〉!」
女は一瞬にして目の前に現れたチビドラの槍を鎌で受け止めた。
「なんで!」
チビドラが驚きのあまり声をあげた次の瞬間、女はチビドラの槍を弾きチビドラの胴体を鎌で斬りつけた。
チビドラの腹から大量の血が吹き散る。
そしてチビドラは力なく地面へと墜ちていった。
ユミ急ぎチビドラへと駆け寄り傷の状態を確認する。
「申し訳・・・・・ございませんです」
「しっ、喋らないで。傷口から血が出るから」
ユミは口を大きく広げ付近の魔素を取り込むと口から炎を出した。
「ぐ、ぐがあぁぁぁぁぁぁ」
「我慢して!」
ユミはチビドラの傷口を炎で溶かしなんとか塞ぐことに成功した。
「はあ、はあ、はあ」
「これで一先ずは大丈夫よ」
チビドラへの荒治療を終えたユミは女へと向き直った。
「あれ・・・・・? ここは何処?」
だがそこには先程までの殺気を放った女ではなく今の状況を全く理解していないような戸惑った様子の女がいた。
「・・・・・は?」
ユミはすっかり変わってしまった女に思わずそう口から漏れた。
「あなた何を言って――」
「え・・・・・キャアアアア」
地上にいるユミを見ようと下を見た瞬間女は自分が浮遊していることに気づいた。
女は驚きのあまりスキルをきってしまい地上へと落ちてきた。
「痛たた」
ゆっくりと起き上がる女にユミは警戒し、鉤爪を女へと向けた。
「え、嘘・・・・・じゅ、銃刀法違反ですよ!?」
女は自分に武器を向けるユミに驚きゆっくりと後退りしていく。
(覚えて・・・・・ない? もしかしてチビドラの攻撃が当たったのが心映武器ではなく心操魔動機械だとしたら・・・・・説明がつく。それにもしかしたらこの人銃刀法違反を知っているってことはタカシと同じ世界から来たんじゃ・・・・・)
「あなた、もしかして日本人?」
「え、あ、はい。そうですけ――」
瞬間女は内側から爆発した。
女の肉片や血が付近に飛び散る。
「う、嘘・・・・・」
ユミは突然の出来事に言葉を失い唖然とした。
「グガァァァァ」
斬りつけられたホムラは思わず叫けんだ。
が、なんとか歯を食い縛り男へと攻撃を試みようとしたがかなわなかった。
男がホムラを遥か後方の木へと蹴り飛ばしたからだ。
「兄さん!!」
「余所見とは随分と余裕だなあァァァ!」
男はホムラを蹴り飛ばした姿勢からすぐさま体勢を直すとカエデへと一瞬にして近寄った。
だが、
(リユイ様に比べたら大したことない!)
すぐさま<炎鎧改>(リユイに名付けをしてもらったことでスキルが進化した)を発動させた。
一瞬にしてカエデの周りの草木は燃えた。
だが男は自分の体が燃えるのを無視しそのままカエデを殴り飛ばした。
「クハァ」
カエデは予想外の攻撃をもろにくらい遠くへと吹き飛ばされた。
そして最悪なことにカエデはゴブンへとぶつかってしまった。
「え、えええ!?」
ゴブンは突然カエデが飛ばされてきて驚きもするもなんとか受け止めた。
「だ、大丈夫でヤンスか?」
「ご、ごめ――」
だが男の攻撃は止まらなかった。
「ハアアアアアアアアアア」
男は殴り飛ばすとカエデを受け止めたゴブンごと二人を吹き飛ばした。
直後、ブーたんの肩に女が刀を突き刺した。
「うああああああああああ」
「え、あ!? ブーたんさん!!」
自分のしていたことに気づいたサラは一瞬自分を守っていた魔法を解いてしまった。
「隙あり」
その一瞬を女は逃さなかった。
「死ねェェェェェェ!!」
サラの目の前へと転移した女はサラを己の刀で斬りつけようとした、だが――
「くわああああああああ」
サラには切り傷一つつかなかった。
「え」
サラの目の前にはブーたんがいた。
「サラ様、大丈夫・・・・・ですか?」
「ブーたんさん!!」
「・・・・・チッ、邪魔だあああああ」
女はブーたんに刺さった刀を強引に抜くと蹴り飛ばしどけた。
ブーたんは力なく地面へと倒れた。
サラはブーたんへとヒールをかけようと思いかけるが今そうしてしまったら自分は殺させると自覚し仕方なく魔法剣を構えた。
(ブーたんさん・・・・・このままじゃ・・・・・)
女はブーたんをどけるとサラへと斬りかかった。
サラは三属性の魔法を魔法剣へと纏わせると女の刀を受け止めた。
サラの魔法剣を女が斬りつけた瞬間物凄い魔法の衝撃が女の刀を弾き返した。
女は弾かれた衝撃で体勢を崩す。
そこにサラは麻痺ナイフ投げを行った。
避けきれなかった女の腕に麻痺ナイフが刺さろうとした瞬間、女はサラの背後へと転移した。
「もらったああああああ!」
「そうはさせねええええ!」
アレンの雄叫びが聞こえた瞬間サラへと振り下ろされた刀は炎の魔法弾により吹き飛ばされた。
「間に合ったか」
「アレンさん!! 帰ってきたんですね!」
「おう。それにしてもあの狼煙があがってなけりゃあ俺は急いで来てなかった・・・・・狼煙をあげたのは正解だったな」
「狼煙・・・・・?」
「ユミ様の命令で私があげた感じです」
そこにヒトミとシズクがサラを女から庇うようにいつのまにかに現れた。
「ヒトミさん! シズクさん! 二人がいるってことは・・・・・」
「はい、あの男は殺ったかもなの」
「サラちゃんとオイトさんは国に戻って国民に避難命令をして」
そこにチビドラを背負ったユミも来た。
「ユミさん! ・・・・・あの・・・・・私・・・・・」
「いいから速く。私達がここでくいとめるからその間に速く行って!」
「は、はい!」
「行きましょう、サラ」
「はい、お義父様」
サラはオイトと共に国へと走っていった。
ユミはチビドラを下ろすと木に寄っ掛からせるように座らせ己の心映武器を出現させ構えた。
「アレン・・・・・間に合わせてくれて助かったわ。その左腕が・・・・・!」
「おう! ああこれか? こいつが魔動機械の義手だ。そうだ、ちょと力を見せてやるよ」
「おい、てこずってんじゃねえか」
「やれやれ一人増えていますねえ」
そこに丁度二人の男が現れた。
一人はソウ、ソレイを瀕死にしそしてあえてそのままにしてきた者、そしてもう一人はホムラ、カエデ、ゴブンを半殺しにした者だ。
「見てろよ!」
アレンはそう言うと義手に様々な属性の魔石を詰め込むと男二人と女に義手の掌を向けた。
すると掌の真ん中に丸い空洞開き、そこから様々な属性の魔法弾が超高速で放たれた。
「なっ」
「危な」
「チッ」
三人は散り散りになりアレンの攻撃を避けることに専念しだした。
「どうよ。あの帝国の最終兵器の使っていた武器から考えたんだと」
アレンは魔法弾を放ちながらそう得意気に言った。
「凄い・・・・・けど気を抜かないで。行くわよ!」
「「了解!」」
だが西聖国の者達も負けていなかった。
「奥の手を使うぞ」
「「了解」」
二人は地魔法、一人は風魔法のようなエネルギーを各々の心映武器に纏わせたのだった。




