第九十七話 ユミの不安
そして
(何が『リユイが居なくたって私達はしっかりとやっていけると言うところを見せつけましょう』だ)
ユミは目の前の光景に絶望していた。
リユイの配下、そしてアレンは地に伏せていた。
ユミはなけなしの力で何とか立ち上がるもすぐに蹴られまた地面へと転がる。
武器は効かない筈のユミの肌には幾つもの刃物傷ができており絶え間なく血が垂れ流れていた。
起き上がる気力もとうとう無くなったユミは最後の抵抗と言ったように弱弱しく片腕を上げ心映武器である鉤爪を構えた。
だがその鉤爪も敵が降った剣に軽々と弾けれ無残に地面へと打ち付けられる。
「リユイ・・・・・!」
ユミはそう呟くとギュッと目を閉じ、死を覚悟した。
瞬間辺りの空気がまるで北極にいるかのような冷えきった殺気に包まれた。
そしてそれはいつの間にかにユミを殺そうとする男の心臓を己の心映武器で貫いていた。
「なっ・・・・・誰・・・・・だ・・・・・」
男はそう言うと死んだ。
「え・・・・・?」
ユミはなかなか止めをささない男を不審に思い、目を開くとそこには胸を刀で突き刺された男がいた。
そしてゆっくりと刀は引き抜かれ、直後男は横へと倒れる。
そしてそこには普段とは少し違う服装の血まみれのリユイが立っていた。
ポンチョは全身を覆うようなローブになっており、首には口を覆う大きさのネックウォーマーのような物を着け、フードを被っていた。
それでもユミはリユイだと分かった、否、分かってしまった。
まるで二人目と同じような雰囲気を醸かもし出していたのだから。
「雑魚が調子にのるなよ」
リユイのその声は震えていた。
何かを堪えるように。
「り、リユ・・・・・イ?」
ユミは恐れていた事態・・・・・つまりリユイが変わってしまったのか不安に思いそれ以上リユイに話しかけるのが怖くなり黙ってしまう。
「なんだぁぁ次から次えと!」
「チッ、めんどくさいなぁぁぁ!」
瞬間女はリユイの背後へと転移した、が、そこには既にリユイはいなかった。
「え・・・・・」
直後男の体が吹き飛んだ。
かと思うと空中で男の体がバラバラになり血が辺りを汚した。
「クッ、ククク」
リユイの堪えたような笑い声が女の耳元に聞こえたかと思うと女は既に首刀を突きつけられていた。
「帰ってお前に命令した者に伝えろ・・・・・これ以上ちょっかいを出してくるならば容赦しない、と」
「チッ!」
女はすぐに首に突きつけられていた刀を自分の刀で弾くと背後を斬りつけた。
だがすぐ後ろに気配を感じると既にまた刀を突きつけられていた。
「勘違いするなよ? お前は逃げられたのではなく逃がしてもらったということを!」
「チッ、気持ち悪いんだよ!!」
直後女は背後を斬りつけようと振り返った瞬間意識を失った。
次に目を覚ました時には既に森の外にいたのだった。
「ハア、ハア、ハア、ククク」
リユイは女を外へと転移させると笑いを堪えるように親指を噛んでいた。
親指からは血が滴り落ちる。
ユミは痛みを堪えてなんとか立ち上がるとリユイのところへと歩きかけ、止まった。
リユイが本当に変わってしまったのか怖くて確かめたくなくて進めないのだ。
「リユイ・・・・・」
なんとか声をかけることが出来たユミは真剣にリユイを見つめた。
リユイはゆっくりと手を下ろしフードをとると首を動かしユミを見た。
ユミは一瞬引いた。
リユイの顔が血で染まっていたからだ。
「・・・・・ユミ」
「リユイ・・・・・帰ってきてくれたのね」
ユミは少し震える声でそう言う。
リユイはユミから顔をそらすと地面を見つめた。
「リユイ・・・・・?」
「・・・・・また裏切られるぐらいならもう誰とも関わりたくないんだ」
リユイの言葉を聞いた瞬間、ユミの表情は険しくなった。
「リユイ、それ本気言っているの? 私達がリユイを裏切る分けないって分かっているよね? ねえ、本当のことを教えて」
「・・・・・」
リユイは気まずそうに黙まるとユミに背を向けフードを被った。
「しばらく、待っていて欲しい。自分でも自分がよく分からないんだ」
「・・・・・分かった、待つ。だから絶対にいつか帰ってきてね」
リユイはユミの言葉に何の反応もせず、そのまま消えた。
「リユイ・・・・・」
ユミはそう呟くと静かに俯いた。
リユイが消えた後、ユミは上空へと魔法を放ちオイト達に合図を送った。
すぐにオイト達は国民の避難を中止し、ユミ達の救出へと行動を移した。
「ユさん、大丈夫ですか?」
救急隊を連れたオイトがぐったりとしたユミへと声を掛けながら起き上がらせる。
「お義父さん後は私が」
「分かりました。私が他の方々の救助を行いますからサラはユミさんのことを」
「お義父さん・・・・・ありがとう」
オイトは頷くと他の者達の救助へと向かった。
サラはユミに肩を貸すとゆっくりと近くの木へと行きユミを木を背もたれにし座らせた。
「ヒール」
そしてユミへと両手を広げるとその両手から淡い光が溢れユミの体の傷を癒していった。
「ありがとう」
痛みが引いていき体が楽になったユミは一つ溜め息をつきゆっくりと目を閉じた。
「あの・・・・・何があったのですか?」
サラはユミへ恐る恐る聞いた。
ユミはゆっくりと目を開くと一滴の涙が零れ落ちた。
「ユミさん・・・・・?」
サラはユミが突然涙を流し始めたことに動揺するも急いでハンカチをメイド服のポケットからハンカチを取り出すとユミの涙を拭いてあげた。
「え、あ・・・・・なんで私・・・・・」
ユミはサラに涙を拭われ始めて自分が泣いている事に気がついた。
「私・・・・・私・・・・・」
ユミはなかなか止まらぬ涙に動揺するもその涙に身を委ねる事にしたの大声で泣き出した。
「うわああああぁぁんんんうああぁぁぁぁぁんんんり、リユイィィィィィ、リユイィィィィィ、なんで、なんで行っちゃうのよぉぉぉぉぉ」
ユミは人の目を気にせず泣いた。
ひたすらに泣いた。
堪えられなかった。
もう限界だった。
リユイが消えた今一人で国をまとめてきた。
だが最近はなかなか帰ってこない王リユイに国民の不安が出てきていた。
それ故にまとめるのにも最初の時にのように上手くはまとまっていなかった。
そういった時に西聖国の襲撃にもういっぱいいっぱいになっていた。
その時にリユイが目の前に現れたのだ。
すぐにでも抱きつきたかった。
だがそんなことをしていい様子ではなかった。
不満をぶつけたかった。
だがそんなことをしてはリユイはもう二度と帰ってこなくなってしまうかもしれない。
それ故に堪えた。
もうすでにはち切れそうになっているのにも関わらず堪えたのだ。
だがすでに限界値を越えていたストレスをユミは押さえつける小とは無理だった。
ユミは泣いた。
ひたすらに泣いた。
もうだれの声も聞こえなかった。
否、聞きたくなかった。
もう自分の殻の中に閉じ籠っていたかった。
だが殻は突然の温もりによって割られた。
サラがユミを優しく抱き締めたのだ。
ユミはその温かさに驚き目を見開く。
(人ってこんなに温かかったんだ)
ユミはサラの温もりにそんなことを考えた。
「ユミさん、あなたもリユイさんと同じです。もっと私達に頼ってください。そしてリユイさんが帰ってきたら一緒にいっぱいリユイさんに文句を言いましょう!」
「サラちゃん・・・・・」
「今はいっぱい泣きましょう。いっぱい泣いたら今度こそリユイさんがいなくても大丈夫なように鍛えて強くなりましょう!」
「ふふ、鍛えるって・・・・・ふふふ、そうね、リユイがいない今、私がしっかりしないとダメよね」
ユミはそう言うとサラへと抱きつき思いっきり泣いた。
サラはユミを優しく抱き締めユミが泣き止むまで背中をさすってあげたのだった。




