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再訪の約束




 オーク将軍デブリンガー・アブラハムの栄光への道(ビクトリーロード) 第二十章



********** オーク将軍デブリンガー ***********



 翌日、私は朝の視察を終えると、ピピとランをシャウエッセンの街へ送り届ける為に、リーネ達の元へ向かおうとしたら、プドルに呼び止められてしまった。

 

 プドルによると三人は朝食を摂った後、屋敷の子供達と庭で遊んでいるらしかった。 


 私はプドルに案内されて、屋敷の庭へと歩を進める。

 すると、遠くから楽しそうな声が聞こえてきた。


 

 私達が庭に入ると、そこでは屋敷の使用人の子供達を追いかけている三人の姿があった。

 恐らく追いかけっこをして遊んでいるのだろうが、家の子供達より歳が上の三人は、必然的に追いかける側になってしまっているのだろう。

 キャッキャッと嬉しそうにはしゃぎながら逃げ回る子供達は実に楽しそうだ。

 

 まだ幼すぎて追いかけっこに参加できないニアは、メイドのネイリーの膝の上で皆の追いかけっこの様子を見て喜んでいた。


 「やれやれ、あの二人に楽しんで貰う為に招待したつもりだったが、今日は子守をさせてしまったか。」


 「でも、十分あの子達も楽しんでくれていると思いますよ。」


 プドルは実に楽しそうな顔をして遊びまわる子供達を眺めている。

 本当に子供が好きなのだな・・・。


 プドルは、既にバルドッグと夫婦になって五年以上になるのだが、未だに子供は出来ていない。

 確かに、世の中には結婚しても子供が出来ない夫婦と言うのも少なからず存在しているのだが、私が思うに、彼らの場合は出来ないのでは無く、作らないのではないのかと思っている。


 二人とも、仕事に対して非常に責任感が強い。

 特にプドルは、私の特殊部隊においても非常に重要な役目に着いていた。

 回復の要の彼女が抜けてしまったら、戦闘部隊の我々には大きな痛手になる。


 だからこそ、彼等は敢えて子供を作らないようにしていたのだろうと思っている。

 しかし、60歳とはいえプドルはまだまだ若い、子供も十分産める年齢だ。

 私にとって、プドルは姉も同然の大切な家族だ、是非幸せになって貰いたい。

 バルドッグだって、子供が好きなのだし、やはり私の為に色々と無理をさせて来てしまったのかもしれない。

 機会があれば、二人にそれとなく提案してみる事にしよう。



 暫くの間、私とプドルは庭のベンチに腰掛けて、今も元気に走り回る子供達とリーネ、ピピ、ランの三人を静かに眺めていた。

 リーネは今までも時々こうして子供達の遊び相手をしてくれていたが、今日は友達が一緒だからか、何時も以上にはしゃいでいた。


 『しかし、こう見ているとやはり、まだ子供だよな・・・。』


 夕べプドルに散々言い含められてしまって、私自身もその気になっていたが、やはりリーネはまだ子供だ。

 そんなあの娘を・・・。 


 私がリーネの事で再び悩みだした時、横に座っているプドルからツンツンと肘で腹を突かれた。

 思わずプドルの方を見ると、彼女はジト目でこちらを見ている。


 うわっ・・・まさか見抜かれたのか?  


 「幼く見えても女の子は、見た目以上に大人なんですよ。 少なくとも、既にあの子はご主人様の事を一人の女として愛し始めています。 それに・・・。」


 プドルは子供達を見たまま、小さな声で続ける。


 「あの子は既に子供を産める身体です。 ちゃんと本人に確かめました。」


 え・・・確かめたってどういう事なのだ!? 

 私は今のプドルの言葉に意味が分からずに、頭の中は完全に混乱してしまっていた。



********** ハーフエルフの少女リーネ **********



 久しぶりに、ピピとランと一緒に過ごした一日は今までで一番楽しい一日だった。

 以前一緒に暮らしていた時は、毎日が不安でお腹が空いていて・・・。

 私達は遊び回る元気も無かった。


 しかし、昨日は違った。 教会で夕暮れまで遊んで、焼き芋を焼いて・・・。

 ご主人様と一緒にポークビッツの街までやって来て・・・。



 皆で楽しく食べた夕べの立食パーティーも、なんだか悪い事をしているみたいで少しドキドキしたけれど、好きな物を好きなだけ食べる事ができた。

 ピピは、初めて食べた魚料理が気に入ったらしく、何度もおかわりしていた。


 

 プドルさんも一緒に四人で入ったお風呂では、二人はお風呂に入る事自体が初めてだったらしく、三人で大はしゃぎしてしまった。

 最初、プドルさんに叱られるかもしれないと緊張していた二人だったけれども、とても楽しそうに私達を見ていてくれるプドルさんに安心したのか、直に元気になった。



 お風呂でワイワイ騒いでいると、今度は使用人の女の子達もお風呂に入って来た。

 私達は全員で身体の洗いっこしたり、一緒にお風呂に浸かったりした。

 お陰で、ピピもランも皆と凄く仲良くなれた気がする。



 夜は同じ一つのベッドで三人一緒に眠るのだ。

 お部屋は、ワタシが最初に用意して貰ったワタシ用のお部屋だった。

 ベッドも、凄く大きくて私達三人でも十分眠れる大きさだ。

 尤も、ワタシは殆どご主人様の横で眠っているので、此処で眠ることは無かったのだが・・・。

 私達はベッドに入っても直ぐに眠ろうとはせず、ベッドの上に座って三人で夜遅くまでお話をした。

 

 ピピとランの教会での毎日の生活や、ワタシのご主人様のお屋敷での生活の話など、色々と話し合った。

 ワタシは、自分が奴隷になった事を二人に話してしまわない様にちょっと大変だったけれど、私達は眠気に負けるまでずっと話し続けた。


 「しかし、アタイが一番ビックリしたのは、リーネの変わり様だわ!」


 「え? ワタシそんなに変わった?」


 「うんうん、凄く変わったよ。 私もとっても明るくなったと思う・・・。」

  

 「そ、そうかな・・・。」


 ワタシは、自分がそれ程変わったつもりは無かったので、少し驚いていた。

 確かに、人見知りな性格を治さなくちゃいけないと思って、使用人の子供達とは積極的に遊ぶようにはしていたけれど・・・。


 ワタシが、自分の変化?に戸惑っていると、ランが突然とんでもない事を言い出した。


 「そう言えばピピ、このお屋敷に来た時に扉を開けてくれた男の子の事、好きになっちゃったでしょ?」


 「うえっ!? な、何故それを!?」


 「え? ピピってば、ビット君の事好きなの?」


 ワタシが何気なく今日バルドッグさんの代わりを務めていたホビット族の男の子の名前を言うと・・・。


 「あ、あの男の子、ビット君って言うの!?」


 「え・・・うん、そうだよ。 執事見習いのビット君。 今日は執事のバルドッグさんの代わりにお屋敷の執事の仕事を頑張ってるの。」


 「バルドッグさんって、シャウエッセンの街で別れた男の人だよね?」


 「そう、何時もはバルドッグさんのお手伝いをしているんだけどね。 まだワタシと同じ見習いだから。」


 ワタシとランが話しているのを、少し不機嫌そうに聞いていたピピがいきなり尋ねてきた。


 「も・・・もしかして、リーネ・・・ビット君の事好きだったりする?」


 「ええっ!? どうしてワタシがビット君の事を!? ワタシが好きなのはご主人様だけだよ!」


 あ、ついご主人様が好きって言っちゃった。

 しかし、ピピはワタシのその言葉を聞いて凄く嬉しそうな顔をする。


 「それじゃあリーネは、ビット君の事、好きじゃないのね?」


 「う、うん。 勿論お屋敷の人たちの事は皆大切だし、大好きだけど・・・。 ご主人様とは全然違う好きだから。」

 

 「よかったー。」


 ピピは思いっきり安心したように息をついた。

 そんなピピを見てランがニヤニヤする。


 「良かったね、ピピ。 リーネがライバルにならなくて。」


 そう言われてピピは急に顔を赤くする。


 「え、いや・・・そ、そう言う訳じゃ・・・。」


 急にモジモジとしだすピピ。

 

 「そっかー、ピピはビット君の事が好きになっちゃったんだね。」   


 成る程、お屋敷に入る時に、ピピがやたらとモジモジしていたのは、お屋敷に入る事に緊張していたんじゃなくて、ビット君にドキドキしてたのか・・・。


 ビット君はピピと同じホビット族の男の子で、ピピより二つ年上の14歳だ。

 このお屋敷で働いている孤児の使用人の内の一人で、一応孤児の中では一番年上になる。(但し、ホビット族なので体格は12歳位だ。)

 優しい顔立ちで、濃い茶色の髪の毛は、クリクリと毛先が跳ねている。

 性格はとても明るくて、孤児の男の子達のお兄さん的な感じだ。

 いつもはバルドッグさんのお手伝いをしながら、執事見習いをしている。


 お仕事が無い時などは、男の子達皆を率いて大暴れして、メイド組の女の子達に何時も叱られている印象だ。

 

 「そういえば、このお屋敷に居るホビット族はビット君だけだったっけ・・・。」


 ワタシはふと思いついた事を無意識に呟いていた。


 「リーネ、それ本当なの!?」

 

 「え? 何の事?」


 「だから、このお屋敷に居るホビット族はビット君だけだって・・・。」


 「う・・・うん、そうだよ。 このお屋敷には、半年前の事件で孤児になった子達がいっぱい住んでいて、色々な種族の子供が居るけれど、ホビット族はビット君だけだよ。」


 「そっか・・・そうなのか・・・。」


 ピピが嬉しそうにニヤニヤ笑う。


 「だけど、シャウエッセンの街とポークビッツの街ではちょっと離れすぎだよね・・・。」


 その言葉に目に見えてショックを受けた様子のピピは、頭を抱えてベッドに蹲った。


 「ああああああ~~~~~! そうだった~~~~~!」


 うーん、確かに別々の街だと簡単に会う事は出来ないよね・・・。

 転送屋さんのお金は、とても簡単に利用できる物でもないし、お手紙も、別々の街だと料金が結構高いって聞いた事が有る。


 ピピの為に何かしてあげられれば良いんだけれど・・・。


 けれど、結局その問題は朝になっても解決しなかった。



 夜更かししすぎたせいで、私達三人はプドルさんに起こされるまでグッスリ眠っていた。


 私達は慌てて身支度を整えて食堂に向かうと、朝食を摂った。

 朝は夕べとは違い、皆で大きなテーブルに座って食べる。

 ワタシにとっては、もうかなり慣れた光景だけど、ピピとランには珍しいらしく、キョロキョロと周りを見渡していた。

 教会ではどんな食事の摂り方なんだろう?



 朝食を食べ終わって、テーブルの前に座ったまま話を続けていた私達に、お屋敷の子供達が声を掛けてきた   夕べのお風呂の時のように一緒に遊ぼうと言うお誘いだ。


 この子達も皆、使用人見習いなのだが、基本的にお仕事は午後からで、午前中は自由に遊んでいても良くなっている。

 もう少し大きくなると午前中はお勉強だ。

 お屋敷のメイドさんが読み書きを教えてくれるのだ。


 私達を誘いに来たのは、皆10歳以下の子供達ばかりだった。  

 

 せっかくのお誘いなので、私達はお屋敷のお庭に行って皆で遊ぶ事にした。



 お昼前、私達が遊んでいるお庭に、ご主人様がプドルさんと一緒にやって来た。

 ご主人様達はお庭のベンチに座って、暫くの間遊んでいる私達の事を楽しそうに眺めていた。

 何だかプドルさんとお話している様だったけれど・・・。


 そして、お昼を少し回った頃に、プドルさんが声を掛けてくる。


 「さあ、お昼のおやつにしましょう、食堂にいらっしゃい。」


 「「「「は~~~い!」」」」


 「お昼のおやつ?」 


 ランが何の事かと尋ねてくる。 ピピも分かっていない様子だ。

 

 「このお屋敷では、お昼に軽いお食事が出るんだよ。 皆それを食べて、お昼からのお仕事をするの。」 


 「「すっごーーーい!」」


 二人が驚くのは当然だった。


 二日に一度しか食事が出来ずに飢えていた時は別としても、普通のお家では一日二食、朝と夜に食べるのが普通だからだ。

 お昼に食事を摂るのは、力仕事をしている人や兵隊さん達ぐらいなのだ。


 しかし、このお屋敷ではお昼に軽い食事(主におやつ程度のお菓子だが)がでるのだ。

 ワタシも最初はビックリしたもの。



 今日のおやつはパンケーキだった。

 甘いハチミツが掛かっている。

 食堂に集まった私達は大はしゃぎでパンケーキに飛びついた。


 凄くおいしかった。

 

  

 お昼のおやつを食べ終えると、とうとうピピとランがシャウエッセンの街に帰る時間になった。

 二人とも凄く残念そうにしている。勿論ワタシだって残念だ。

 

 シャウエッセンの街まではワタシとご主人様の二人で送っていく事になった。

 プドルさんはお留守番らしい。


 

 私達はお屋敷の扉の前で、牛車の準備が整うのを待っていた。

 

 扉の前にはビット君が立っている。


 ピピは、彼のことをチラチラ見ながらモジモジしている。

 何か話しかけたいのだろう。

 ランがピピの耳元で、何か話しかけた方が良いと言っているが、ピピは緊張して何も言えない様子だった。


 ワタシも何とかしてあげたいのだけれど、どうすればよいのかが分からない。


 『ご主人様に相談した方がいいのかな・・・?』

 

 ワタシは思い切ってご主人様に相談する事にした。

 クイクイッとご主人様の服の袖を引くと、ご主人様は気付いてその場にしゃがんでくれる。


 「リーネ、どうかしたのかい?」


 ワタシはご主人様に半ば抱き付くようにして、ご主人様の耳元に顔を近付けた。


 『ご主人様、実はピピがビット君の事を好きになっちゃったみたいなんです。 だけど、恥ずかしくて何も言えないみたいで・・・。』


 ワタシがそう言うと、ご主人様は優しい笑顔で二人の事を交互に見てくれた。

 そしてスッと立ち上がると、皆に話し始めた。


 「ビット、そこの二人はこれからも時々この屋敷に遊びに来る。 しっかりと自己紹介しておきなさい。」


 ご主人様がそう言うと、ビット君は姿勢を正して二人に自己紹介した。


 「僕はデブリンガー様のお屋敷で執事見習いをしている、ビットと言います。 これからもこのお屋敷にお越しの際は何なりとお申し付け下さい。」


 そう言って綺麗にお辞儀をしてみせた。


 あれ、ビット君の方も何だか何時もより気合が入ってる感じがする。 


 「あ、私はランと言います。」


 すんなり返事をしたランと違い、ピピは緊張で何も言えないで居た。

 そんなピピの背中をランが叩く。


 「あ、アタイはピピ! ピピって言うの・・・。」


 顔を真っ赤にしながら答えるピピ。

 恥ずかしいのか、ビット君の事をまともに見れないみたいだ。

 

 「ラン様とピピ様ですね、これからも宜しくお願い致します。」


 すると、緊張気味に応対するビット君の頭を、デブリンガー様がポンポン叩いた。


 「ははは、二人とも。 このビットは、普段はもっとやんちゃな悪ガキなんだ、そんなに畏まらなくても大丈夫だよ。 多分可愛い女の子の前だから格好つけているだけだから!」


 「ちょっ! デブリンガー様酷いですよ!」


 「なんだ? 私は嘘は言ってないぞ?」


 「ううううう・・・。」


 頭を抱えて悶えるビット君。

 そんなビット君を見て、ワタシは思わず笑い出してしまった。


 ピピとランも釣られて笑い出す。

 

 それから牛車の準備が整うまでの少しの間、ピピ達はビット君とお話できたみたいだった。



 牛車が門の前にやってくると、私達は順番に乗り込んでいく。

 ピピは一番最後に乗り込んだ。


 ピピは乗り込む直前にビット君に、顔を真っ赤にしながら話しかける。


 「また・・・きっと遊びに来るから、その時はアタイとお話してくれる?」


 「勿論、楽しみに待ってるよ。」


 つい普段の言葉使いで返事をしているビット君に見送られながら、ピピは牛車の中に乗り込んだ。


 ビット君が牛車の扉を閉めてくれると、牛車はゆっくり転送屋さんに向かって走り出した。

 ピピは、牛車の窓からずっと、私達を見送っているビット君の事を見ていた。


 その顔は凄く寂しそうだった。

 だけど、それも無理もないと思う。

 また遊びに来るって言っても、ポークビッツの街とシャウエッセンの街は、転送屋さんを利用しないと、先ず行き来は無理だ。

 そして、転送屋さんは物凄く高いのだ。

 

 確かに、今回ピピも金貨5枚の見舞金は貰えたけから、無理をすれば来れない事は無いけれど、そのお金をそういう風に無駄使いする訳にもいかないし・・・。


 何とかしてあげられないかなと考えていると、ご主人様がピピとランに何かを手渡した。


 「二人にはこれをあげるよ。」


 訳も分からず受け取った二人は、それをマジマジと見つめる。

 それは、綺麗な封筒だった。


 「中を見てご覧。」


 言われるままに中を見ると、中には数枚の紙切れが入っていた。


 「これは・・・?」

 

 「それは、ポークビッツの街とシャウエッセンの街を往復できるチケットだよ。 それがあれば、好きな時にこの街とシャウエッセンの街を行き来できる。 取り敢えず二人には五枚ずつ渡しておくから、何時でもリーネを訪ねて来るといい。」 


 二人は、ビックリした顔でご主人様を見る。


 「い、良いんですか? 転送屋さんは凄く高いのに・・・。」 

 

 「勿論だよ、二人はリーネの大切な友達だ、何時でも歓迎するよ。 それに、そのチケット一枚で街を往復できるから、遊びに来る以外にも何か困った事があった時は、遠慮なく私を頼って来なさい。」 


 「「あ、有り難う御座います! リーネのご主人様!」」


 二人は大喜びだ。 勿論ワタシも凄く嬉しい。


 しかし、やっぱりご主人様は優しいな、転送屋さんのチケットだって、あらかじめ用意してくれていたみたいだし・・・。 ピピの事をワタシに聞いたから、二人にチケットをくれた訳じゃないって事だよね。


 みんなの事をしっかり見ていてくれるって、凄いな・・・。

 強くて優しくて、いつも皆を見守ってくれていて・・・、ワタシもご主人様みたいに素敵な人になりたい!


 ワタシがご主人様の事を考えていると、ランがポツリと言った。


 「けど、本当にリーネはご主人様の事が好きなんだね、さっきからずっと見てるし!」


 「ええっ!?」


 ワタシはランの言葉に思わずランの事を見る。

 夕べ話していた事を覚えていたみたいだ!

 ピピはビット君の事で頭が一杯で、聞き流してくれていたと思っていたけれど・・・。

 慌てるワタシを気にも留めず、ランは続ける。


 「リーネのご主人様!」


 「なんだい?」


 「リーネの事、宜しくお願いします。 今のリーネは、あの時とはまるで別人みたいに幸せそうなんです。 それってやっぱり、ご主人様のお陰なんですよね!」 


 ワタシは恥ずかしさのあまり顔が赤くなった。

 

 「勿論だとも、リーネは私の大切な家族だ。 必ず幸せにしてみせるよ。」 


 その言葉は凄く恥ずかしかったけれど、まるでプロポーズみたいで・・・。

 少し嬉しくなったワタシはご主人様の顔をそっと覗き見た。

 すると、真面目な顔をしているご主人様の顔も、少し赤くなっていた。 

 


*********** オーク将軍デブリンガー ***********



 私達は、シャウエッセンの街に無事に到着した。


 私達は転送屋から教会に向かう途中で少し寄り道をして、お菓子を沢山買い込んだ。

 勿論、お屋敷の皆へのお土産だ。

 ピピとランだけでなく、教会のシスター達の分も買った。


 流石に全部持ち歩くのは大変なので、お屋敷のお土産の分はお店の人に転送屋さんまで運んで貰ってある。


 私達四人は、教会の皆の為のお菓子を抱えて教会に向かった。

 

 教会に到着すると、表を掃除していたシスター達が出迎えてくれた。

 私達はまた応接室に入って、メルビン司教とシスターエリーに挨拶をする。


 シスターエリーは、私達が抱えている荷物に驚いていたが、それがお土産のお菓子だと分かると、大喜びで他のシスターを呼びに行った。

 勿論、皆に分けてもらう為だ。


 私は司教に、実は私の屋敷に二人を招待していた事を話す、いわゆる事後承諾というやつだ。

 司教達も驚いてはいたが、無事、これからも定期的に二人を屋敷に遊びに来させる事を承諾してくれた。


 私とリーネは、ピピとラン、メルビン司教とシスターエリーに別れを告げると、二人でポークビッツの街へと向かった。




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