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めたもるふぉうぜ  作者: 八澤
システムE ver.夢 
24/24

えぴろおぐ

 ジジジ……ピ!










『どうも、マユです。今このビデオを見ているのはカナちゃんだと思います。もしも違う人だったら、すぐに消してください。特にお兄ちゃん! 本気で頭を叩くよ。……三十秒待ちます』


 マユちゃんの姿が映っていた。マユちゃんは自分の部屋のベッドに腰掛けて、カメラに向かって恥ずかしそうに喋っている。あ、そうか、だからマユちゃんの家に遊びに行った時、部屋の中に脚立が置いてあったんだ。


『カナちゃんへ。今まで、私と仲良くしてくれて、ありがとう。私が転校してすぐは、内気な私は、上手く周りの人と会話をすることが出来ず、友達が出来ませんでした。新しい学校、嫌だなーと思って、不登校になりそうだった。恐怖の二人組を作ってくださーいという死刑宣告に近い拷問を先生が宣言した時、あの時、カナちゃんが声をかけてくれて、一緒になった』


 私はもうほとんど忘れていたけど、確かに、あの時に二人組になった気がする。私は、ただ適当に近くで小さくウロウロしていたマユちゃんに、声をかけたんだった。


『本当にうれしかった。あれから一緒に遊ぶようになって、心の底から楽しかった。……だから、あの日、カナちゃんとさよならした時は、泣いちゃった。もう号泣。二度と会えないと、思っていた。だから、私がまた戻ってきて、カナちゃんと一緒のクラスになった時、運命に感謝したよ。うー、でも、なんか皆私にあまり近寄ってこなくて、少し寂しかった。カナちゃんも、普通に話してはくれるけど……、やっぱり、避けていたよね。まぁ、私の親のこともあるから、仕方ないかな。嘘、少し怒っています。だから、私の部屋に連れ混んだら、乱暴しちゃうかも、そしたら、許してあげる』


 首絞められるほど、マユちゃんは怒っていたのか。……そうだね、私は最悪だ。ごめんね、マユちゃん。マユちゃんの心境を考えると、自分の酷さが不気味に浮かび上がってくる。もう謝っても、意味無いんだ。私は、馬鹿だ。


『お兄ちゃんは、かなり変態だけど、私は好きです。面白いし、何か、強い芯のようなモノを、体の中に持っているからです。まぁ、多少恐いと思うことがあったけど、お兄ちゃんは年下の女の子に叩かれるのを好むので、それを利用して、私はなんとかお兄ちゃんの行動を耐えていました。お兄ちゃんは何も言わないけど、私は知っているだ。私が転校してから、あっちの学校に馴染めなかった時、お父さんと新しいお母さんに、私のために、前の学校へ戻ろうと、言ってくれたこと。ありがとう。お兄ちゃんのおかげで、こうしてまたカナちゃんに会えた。お父さんも、もう元に戻って優しいし、仕事を凄い頑張って、あんな大きな家を(中古でリフォームしたんだけど)買って凄い、新しいお母さんも、私を本当の娘のように接してくれる。とても優しい。ありがとう。でもね、駄目なんだ。私は、この世界が嫌いでした』


 マユちゃんの想い出が、蘇る。自分の本当のお母さんが居る世界、それをマユちゃんは夢見ていた。


『もう、息をするのも、最近は辛かった。ご飯を食べるのも、水を飲むのも、寝るのも、目を瞑るのも、……何もかも、嫌だった。恐いとも思っていた。自分がこの世界に存在していることに、とても恐怖していたんだと、思う。だから、私は逃げたかった。ふふ、昔、カナちゃんが、あの家には、絶対に人が居るって言っていたよね。アレを、私は思い出したの。私の記憶だと、あのお化け屋敷だけ、色が黄色と赤に染まっていたの。私が、昔見た、あの駅のホームの世界と、そっくりだった。だから、あそこが、また夢の世界だと、私は考えたの。そこに行けば、私は、夢の世界に行けると思った。私は、変わると思った。でも、一人で行く勇気が、無かったの。恐かった。何も無いかもしれないと、思って、とても恐かった。そんな時に、カナちゃんを想ったの。カナちゃんは、私にとって、ヒーローです。あの時、私を助けてくれた時から、私はカナちゃんのことが、大好きだった。……えっと、友達として、だよ。恋愛とかじゃないよ。カナちゃんが横に居れば、私はどこまでも行ける気がした。この世界から、私を救い出してくれる気がした。カナちゃんにぎゅっと手を握られるとね、……お母さんを思い出して、胸が温かくなる。それに、……一緒にまた遊びたかった。もう、昔みたいに、馬鹿な遊び、今はしないじゃん。だから、最後くらいは、ね? ……ごめんね、つき合わせちゃって。もしかしたら、凄い恐い思いをしたかもしれない。カナちゃんは恐がりだから、可哀想かな。まぁ、許して。てへ。最後に、私のことは、忘れないでください。絶対に、絶対に、忘れないで。ずっと頭に留めておくとか、そういうのじゃなくて、ほんの少し、頭の片隅に、小学生の頃、マユちゃんという仲の良い友達が居て、一緒に遊んだなーと、ふと思い出すような、そんな記憶でいい。それが、私が、自由と、思える事実だから。……なんで、そんなことを強制するのかって?』


 急に、画面に黒いノイズが生まれ、それは広がっていく。マユちゃんの顔が隠れて、何も見えなくなる。


『それは、私が、今、ここでは、死ぬことも、生きることも出来ない、生物でも、無生物でもない、ただの黒い影に変わってしまったから。人間のシコウだけ』


 そこで、ビデオは終わった。何故か、DVDは取り出すと、裏面に刃物を突きつけたかのように削られていて、二度と再生することは出来なかった。


これにて『めたもるふぉうぜ』は終了です。この物語の主要人物のその後が、私が執筆している『システムE ver.2』と今後載せる予定の『せせらぎのかすかな香り』で描かれていますので、ご興味がありましたら、お読みください。

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