11、5年経ちました
まだ、恋愛には程遠い……
「シャルロッテ様、流石ですわ。もうここまで出来るようになるなんて」
「先生の教え方が良いからですよ。いつもわかりやすく教えて頂きありがとうございます」
こんにちは。シャルロッテ・カトラリーです。
この世界に来て、買われて5年。
10歳の誕生日を迎えました。やったー。
誕生日と言っても私の場合、産まれた日なんてわからないので、名前がついた日が誕生日なんですけど。…歳はわかったのに誕生日はわかりませんでした。
で、今日がその誕生日で、パーティーの日です。
お貴族様は誕生日ごとにパーティーを開くらしいです。お金持ち凄い。
まぁ、私にとっては初めてのパーティーなんですけどね。普通は5.6歳くらいからやるらしいです。
やらなかった理由はヴィル様が表に出したがらなかったから。「私の可愛い可愛いシェロが汚れる」って。
ルセット兄さん…あぁ、この家に来て少しした頃に、呼び捨てor兄さん付けを強要されました。以来兄さん呼びです。…精神的には年下の男の子を兄さん呼び…ちょっと美味しいよね?…じゃなくて、ルセット兄さんも同じ理由でパーティーは開いていません。
だから、ルセット兄さんも初めてのパーティーなんです。
あ、私とルセット兄さんは誕生日が一緒なんですよ。勿論ルセット兄さんはちゃんと産まれた日が誕生日です。
…ヴィル様はルセット兄さんの誕生日前日に私を買いました。…弟と言う名の誕生日プレゼントかな?スケールでかいわ。
「シャルロッテ様は本日のパーティー、緊張なさっていますか?」
「え、あぁ…まぁ。初めて、ですからね。でも大丈夫です。私にはルセット兄さんがいますから」
「ふふっ ここでシャルルヴィル様の名前が出ないのが良いですわね。…流石です。…ヴィル様は今でも貴方方兄弟にベタベタとしていますの?」
「まぁ、はい。それがヴィル様です」
「そうね…でも、良い歳して弟離れ出来ない兄なんて嫌よね?…再教育しなくてはいけないわね」
マリア先生は黒いオーラを携えて笑顔で言った。
…ヴィル様、逃げてください。
彼女の名前はマリア・フローラ。
カトラリー家の家庭教師の1人で、私に色々な事を教えてくれる。ヴィル様の家庭教師だった事もある、年齢不詳な綺麗なお姉さまである。
ヴィル様はマリア先生に頭が上がらない。
あと、名前の通り、めちゃくちゃ良い匂いがする。
因みに今はダンスの授業の時間です。
ダンスってさ、相手との距離が近いよね。心臓の音、聞こえそうなレベルで。…私、男でよかった。相手が女の人でよかった…。男の人と至近距離とか無理。吐きそう。
え?奴隷になった時やヴィル様達の男の人と至近距離でいたじゃ無いかって?あれはカウントしないよ。だって、あの時の彼は"男の子"だし、ヴィル様は"鼻血"だし、エセンさんは"凄く良い人"だし、ルセット兄さんは"兄さん"だしな。 緊張なんてしないよね。ドキドキはするかもしれないけど、吐きそうにはならないと思う。(多分)
「シャルロッテ様とルセット様の晴れ舞台、楽しみにしていますわね。…シャルルヴィル様が悪さをしないように見守らせて頂きます」
「えっと、よろしくお願いします?」
2人でそんな話をしていたら、コンコンと扉を叩かれた。
「マリア先生。ルセットです。シェロの授業は終わりましたでしょうか?」
「はい。終わりましたよ」
そうマリア先生が答えると扉が開かれた。
「マリア先生。失礼します」
一礼してルセット兄さんが入ってきた。
ニコニコ笑いながら。
「あら、ルセット様。大きくなりましたわね?」
「…そうですか?まだ、大きくなりたいですけどね。大きい方が守れる範囲が広そうですから」
「ふふっ。守れる範囲、ね。ルセット様はまだ11歳ですからまだまだこれからですよ」
「はい。自分に期待しておきます」
「ふふっ そうね。…では本日は可愛いシャルロッテ様をルセット様に守って頂こうかしら。私はシャルルヴィル様を見張るので忙しそうですから」
「勿論です。俺はシェロといればご令嬢に囲まれる事も少ないと思いますし、俺自身がシェロに変な虫が付くと困りますから」
「変な虫」
「シェロ?安心して。俺がシェロの背後も完璧に守ってみせるから」
「背後」
「それは安心ですわね」
「安心」
……私的にはルセット兄さんも背後が危ないと思うのだけれど。背が伸びたといってもまだ、可愛いし。私、自分の身は自分で守りますけど。
「私ってそんなに頼りないですか?」
ちょっと拗ねたように、怒ったように言ってみた。
「そんなわけない……けど、心配かな?」
頭を撫でならがそう言われた。
……頼りないですか。
そんなに弱く見えますか。変な虫が付くくらい。
「では、私はルセット兄さんに肉食草食問わず令嬢様がつきまとわないように、守らせて頂きますね」
どうせ私には何もできない。なら可愛い外見を生かして令嬢の自信をなくしてやりますよ。ルセット兄さんに近づくなら私以上に可愛くなってからにしろよってな。
決して『キミの隣に並びたい女の子いないと思うけど。女の子より綺麗だから』って言葉が頭に浮かんだからそう思ったわけではない。
実際、まだ私は見た目女の子だし。一人称を私に戻すレベルで。
ルセット兄さんと1歳しか変わらないのに、一回りくらい私の方が小さいのだ。おかしい。
この世界の平均はわからないけど、可愛いルセット兄さんは女の子に見えない。
私はまだ見た目美少女なのに。せめて美少年になりたい。
「ほんと、俺の弟 可愛い」
ルセット兄さんは私をぎゅーっと抱きしめた。
…ルセット兄さんの体にすっぽり収まるサイズの私。…私も大きくなりたい。
「お2人は仲が良いですわね?シャルルヴィル様が嫉妬しそうですわ」
「でしょ?実際、ヴィル様嫉妬してるよ。でもいつも嫉妬しながら鼻血出してるよ。悔しいけど、俺の天使の間には入れないって」
「……シャルルヴィル様……」
マリア先生は残念な物を見るような目をして遠くを見ていた。
「さ、シェロ。ヴィル様が帰って来る前に準備を終わらせてしまおう?」
「…はい」
シャルルヴィル様は朝から張り切っていたにも関わらず、急な仕事でお城に行っている。ギリギリまで渋っていたが、「早く終わらせて帰ってきてね」と可愛く言ったら「わかった。急いで終わらせて帰って来るから待っててね」といい笑顔で出かけて行った。…最近ヴィル様の扱い方がわかってきた気がする。
「お2人共、安心してご準備なさってください。帰ってきた時はシャルルヴィル様は私が足止めしておきますから」
黒いオーラを纏って、素敵な笑顔をしているマリア先生に見送られて身支度と言う名の準備に向かった。
少しして、誰かの断末魔が聞こえた気がしたけど、気にしないことにした。




