壁ばぁーんと壁どかーん
竜殿の外に出たラガノは捕まっている二人を救出する為、城内の牢を目指す。外に出ても聞こえくる数度の爆発音に、兵が集まるのも時間の問題だ。
はやる気持ちを抑えてゆっくりとした足取りで城内へ入り先を進むが、城内は既に音の正体を探そうと動き出している。
今のラガノが城にいてもおかしくは無いが、城の兵でもない自分が何食わぬ顔で牢へ行くには怪しまれてしまう。こんな時、自分の大柄な体型と身長に嫌気が差し歯を食いしばる。周りの兵と似た体型ならば騎士の甲冑を纏うだけで兵に紛れる事だって出来るのに、そんな気持ちで進む道半ばで兵に声をかけられた。
「ラガノ殿!」
声をかけて来た兵士は状況をまだ把握していないようであった。賊が侵入したかもと示唆し城内への侵入だけはさるなと兵へ命令する。
本来なら自分の命令など聞く必要も無いが、錬度が低い兵達は自分の言を真に受けてくれそうだとその場を後に廊下を曲がった。その先、牢の扉の前。
大柄な兵士が武器を手に警戒しているのを見つける、ラガノは一気に加速し兵の後ろから一撃入れると意識を奪う。武器を回収、兵士を下り階段の下へ寝かせて地下の道を進む。音の反響だけが響く中、牢を確認しては先に進みまた確認しては進むを繰り返す。
最奥の牢まで確認したが二人の痕跡すら見つけることが出来ずにいた。エッチェンは嘘を言ったのではないか?それとも新たに牢を作ったのか?
牢のどれもが長い間使わていない様子、単純に牢へ入るようなことをした者がいないからだと考えれば納得は出来るが牢にも錠はされてはおらず、ラガノは最奥の牢の扉を開けて一部屋ずつ調べて行く。
壁を、床を、きっと何かあると思い全てを牢を調べたが何一つ手がかりを発見することは叶わなかった。違う入り口の可能性も無く、地下牢から出た所にレーゼンは立っていた。
「まさか、君がこの様な事をするとは思いもしなかったよ。彼のような人外を城へ連れてくるとはね」
「お二人をどこに隠したレーゼン!」
「お二人なら王室だよ。エッチェンが牢とでも言ったのか?牢と聞いただけでこの地下牢へ来るとは」
「レーゼン!お前は何をしているか分かっているのか!指輪の力でお前も・・」
「勘違いしないで貰いたい、私が彼をこの城へと引き入れたのだよ?今度こそ完全な国にする為にね」
「なっ何を言っているのか分かっているのか!」
「彼が元々フォスキア竜殿付きの騎士隊長だったら何か悪いのかね?」
「全て掌で踊らされていたと・・そういう訳か」
「もう遅い、どうだラガノ?今からでもこちらへ着け!君なら歓迎するが?」
ラガノは沈黙と共に剣を構えた。
「君と戦うのは骨が折れるが、仕方のないことか」
レーゼンも剣を抜き正面から互いの剣を受ける。
何合かの打ち合いの後、互いに距離を取るが着地後直ぐに渾身の突きを放つ。
「光りの束となりて堅牢な盾を!ランテスクド!」
ゴキャン!ガギギギッ!
正面へ放つ突きは生み出されたランテスクドにより阻まれ、弾かれそうになりながらも何とか拮抗している。
「貴様は百年前のように異種族を排他し続けるつもりか!」
「勘違いしないで貰いたい、排他では無く淘汰だ」
ランテスクドを自ら破裂させラガノを吹き飛ばしたレーゼンは剣を振りかぶった。寸前の所でそれを受けるが剣と魔法を使うレーゼンに対するのは相当に辛い。
「百年前に宮廷魔術師がある計画を立てた」
「何を言っているんだ!」
「人間だけが住まう世界こそ至高である!見出しに書き記されていたある書物が出てきてね?戯れにと読んで見たらこれが存外に面白い内容だったよ」
それがどうした!訳の分からん事を言うなと受けた剣を右に押し出し、右手を剣の添えてシールドバッシュの要領で剣の腹をレーゼンへ叩きつける。
体格と力ではラガノに軍配が上がりレーゼンは後ろへと突き飛ばされたが、カウンターに風の魔法の代名詞であるディベントを放った。風が地面を抉りならがらラガノを挟撃しようと迫る中、彼は気にも留めずに全力でレーゼン目掛けて走る。挟撃しようと左右から迫った風は地面に弧を描き衝突し消失する。
ラガノは魔法を放つことこそ出来ないが、魔力で肉体強化程度なら難なくこなす。彼と同じ魔力で同じように強化したとしても元のスペックが違えば結果も自ずと変化する。脚に多くの魔力を流し爆発的な加速力で切りかかったが、レーゼンはそれを回避し背後から剣を振るうも、既に振り返ったラガノの一閃により剣を折られた。
「剣だけでは勝ち目は無いようだ、百年前の戦争の真実を君は知っているか?」
「何を!」
「本の内容だよ。紡がれた言葉の中には戦争の真実が書いてあったのだ、とは言っても本を書いた魔術師の手に寄って引き起こされたんだがね?」
「・・・」
「いいかい?百年前の戦争で魔術師がしたかった事、それは国を割ることなんかじゃなかったのだよ。魔術師が失敗した結果として権力争いに拍車がかかり、国が割れ、醜い殺し合いが起こり、戦争へと発展したのだよ」
「いい加減な事を!」
「最後まで聞きたまえ。魔術師がしたかった事、それは双子竜の力を得て己が竜にとって変わる果ての無い夢物語だったのだ」
「まるでオトシゴ様のようだ」
「違う、竜そのものになりたかったのだよ彼は。ただ、双子竜を殺そうとして誤ったのだ彼は。そして私は彼の意思を継いでみたくなったのだよ!異種族を淘汰するのはその過程から生まれた結果だ!」
ラガノは全力で剣を振り抜いた。
レーゼンは跳躍で上手く回避し数メートルも後ろに着地し手をかざす。
「片手ぐらい君に贈ろう、実験は既に成就する手前まで来ているのだからね」
「逃げるのかっ!」
「これからフォスキア様を殺して残ったクレフィア様の力で竜のそれになるのだ!君如きに構ってはいられないのだよ」
「行かせると思うか!!!」
「闇を纏い地を縫え!ガビャグニス!」
レーゼンが行使した魔法はすぐ効果を表す。
ラガノが立つ地面から闇色の鎖がジャラジャラ音を放ち絡み付き動きを封じた。さらにそれを囲うように鎖の檻が完成するとラガノの姿はもう見えない。
「確かに強いが相性は何にだって存在するのだよ」
それだけを言い残しレーゼンは切られた腕を止血しながら闇に消えた。
一方、ノヴィスから少し離れた森の中。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!ねぇ!!」
「主様どうした?」
「飼い主様がどうしたのですよ?!」
「お兄ちゃんがね、二人のお姫様がまだ生きてるから助けろって」
「ノシュネ様それは本当なんですの!!」
「お兄ちゃんがそう言ったけど、聞こえないの」
クレフィアは立ち上がりアティーが魔術師に指示を出すとリクティフも騎士達に準備をさせた。
「アティー!正面は我ら騎士が後方から援護を頼めるか?」
「城付近まで行って一度、斥候を出すわ!状況が分からない!」
「分かった!我々は姫達を探すクレフィア様は我らと共に!」
「分かりましたわ!お二人はどうされますの?」
「レミナ達は主様のところ!」
「ノシュネちゃんも私め達といくのですよ?」
「うん!」
「では魔術師の部隊も入城後ノシュネ様の護衛に回ります!」
森からいの一番に飛び出したのは言うまでもなくドリドゲスだった。他の馬なんかに負けないもんね!とばかりにどんどん加速して気が付くと二十馬身も距離が開く。
「ドリドゲス速い!!」
「ドリちゃんも飼い主様が心配なのですよ~!」
「風凄い!!」
「ヒ~~~~~~~ン」
その後方、リクティフ達が必死に馬を走らせるもどんどん距離が離れてしまう。
「なんという脚力だ!」
「オトシゴ様が乗るに相応しい馬ね。追いつける気がしないわ!」
「しかし、あれだけ先を行かれると・・・」
「行かせて差し上げなさい!シン様はお二人に任せていいですわ!!」
レミナ達が先に門に着いたが後方はまだ到着に時間が掛かりそうで、先に着いたはいいけどどうしよう?状態だ。
「奥から主様の力を感じる」
「なのですよ!」
「お兄ちゃんは竜殿にいるよ!」
「お姉様!あれは私めに任せて欲しいのですよ!」
「どうする?」
エルジュがドリドゲスから降りて門へと近づいて行く。それを見た兵士達はこんな時間になんだ?とは思わずにエルジュのぐにぃを見て鼻の下が伸びている。無視して扉にエルジュが触れたら・・。
「悪いねお姉ちゃん!時間が時間なんだ開門は出来ない」真面目
「一人旅かい?」普通
「踊り子なのか?美人だねぇ?」ちょいエロ
「いい乳してるね」糞な四人の言葉を聞かずに思いっきり拳をぶち込む。
バッキィイイと木が文字通り木っ端微塵となって通り道が出来てしまった。腑抜けた兵士達だ、本来なら即行動を起こすべきなのに目の前で起こった事象に思考が追いついていないようだ。ドリドゲスは何食わぬ顔で進み、エルジュも何食わぬ顔で騎乗しあっと言う間に街へと侵入するであった。
「エルジュちゃんすっ凄いね」
「らくらくちんなのですよ!」
「エルジュは良くやった」
「ヒン!!」
夜の帳が落ちる町中に「褒められたのですよ~!」の声が木霊する。後方の騎士達が追いついた時には皆が門の穴を見て絶句することになるだろう。
そして、後方の騎士達と魔術師が門前に着くと
「どうやってあんな穴を・・」
不思議そうな顔をしていた。
だが、リクティフが先行して門を通過するのを見た者達は躊躇なく同様の行動をとる。
「アティー!斥候を出す余裕は無さそうだ!」
「流石に門前で待っているかと思ったけど、まさかあんな無茶な・・」
「いいですわよ!時間がおしいですわ!このまま城門もあんな事になる前に追いつきますわよ!」
「「はっ!」」
城門前まで到着した一行を見た兵士達はまたも馬鹿をやらかす。この場に居るってことは正規の手続きで町に入った者達と勝手に勘違いしているのだから。
「ここから先は城なんだ。夜も遅いから外観を見学するなら朝にするといい」
丁寧に説明する兵士を横に今度はレミナが門の前に立ちそして触れる。
「だ~くえねるぎぃいふらしゅっはりけぇえん!」
絶叫と共に城門が抉れる様に吹き飛んだ。
そして、ドリドゲスは何食わぬ顔で進み、レミナもエルジュに手を引かれて騎乗する。
「お姉様凄いのですよ!」
「レミナちゃんすっ凄いね!」
「ヒン!」
「主様には内緒!アレは怒られるやつだから!」
そんな会話をしてまたも簡単に侵入を許してしまうが、流石に城の真ん前で次から次へと兵士達が集まり始めた。武器を持ちレミナ達を見ているがこんな女の子達がここで何してるんだろう?と腑抜けた醜態を晒すのである。そうしている内にクレフィア達も到着し後方から行き成り魔法を叩き込まれて大混乱となった。
「アティー!一先ずここだけでも数を減らすぞ!」
「あなた達は先に行って!」
「分かった!眼前の兵ぐらいは減らして行くぞ!」
抜刀したリクティフに続き騎士の怒号で城の兵士達は弱腰で、なるべくは殺すなよ!の指示を聞いた者から馬を下りほぼ一撃で沈めて行く。
「クレフィア様!我らが道を作りますゆえ!しばし待機を!」そう叫んだ直後に三名の騎士がクレフィアを囲んで守りに入る。「分かりましたわ!あなた達も死ぬことは許しませんわよ!」
その言葉を聞いた騎士達の顔は自信に満ち溢れる表情の者ばかりであった。
「レミナちゃん!お兄ちゃんあっちだよ!」
「わかった!」
「行くのですよ!!」
「ヒン!」
魔術師達はお構いなしにドカドカ魔法を打ち込み、その度に兵士の叫び声が聞こえる地獄絵図を見ていた。城の騎士や兵士達が相手なのだ、各々が命を捨てる覚悟で臨んでいるのにも関わらず攻戦一方で拍子抜けしているようだ。
「ノシュネ様!我々もここを片付けた後に合流致します!」
アティーが叫ぶとノシュネは返事をしてドリドゲスは走り去った。ドリドゲスが竜殿へ着き、扉に容赦なくエルジュが打撃を打ち込む。
騎乗したまま入ると竜殿の巫女達は驚き脅えている様子、相手をしている暇など無くドリドゲスはズカズカ進み階段を発見して嘶く。下馬したレミナを先頭に地下へ降りた先に空間が広がっているその先にシンを見つけるが・・・。
「主様!!」
「飼い主様!?」
「お兄ちゃん!!」
「ヒン」
血に塗れたシンはそれに反応出来ずに地面に伏していた。
本話もお読みいただきましてありがとう御座います。
ブックマークにも感謝です。
連休中にお船のイベント消化出来たのでアップロードしました。
明日も次話投稿出来ると思いますので宜しくお願いします。




