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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第七章 双子竜 編
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魔術師

騎士として証の指輪を貰い受け、隠れている魔術師の尻尾の先端が少しだけ見えた。もう一歩踏み込まなければその尻尾の先端は直ぐにも隠れてしまいそうで神経を尖らせていたんだと思う、レーゼンの後ろに付いて訓練所に着いた頃には空は暗くなっていた。俺に刃引きされた剣を手渡し、己も剣を手に目の前に立つ。


「シンラ君、刃引きこそしてあるが当たればそれなりにダメージは負うのを言うまでもないな?」


期待されているのか、それともレーゼン自身が楽しみたいからなのか、その辺の判断は出来ないけど本当にやるしか無いようだ。彼は剣を構えて待っている以上は、こちらも剣を構える他無かった。

「どこからでも来てくれ、勝ち負けは関係無い」

その言葉を合図に俺は覚悟を決めて踏み込んだ。



袈裟斬りに振るった剣は容易く受け流され、三歩下がったレーゼンはその三歩で加速し右に剣を薙ぐ。それを半歩下がって避けたが体の近くを通り抜けて行った剣の音に驚く。レーゼンの顔にはそんなものじゃないだろ?さぁこい。見せてみろなんて事でも考えているような表情で、俺は両手で握っていた剣から右手を離して片手で構える。右の手は開いたままダラリと垂れ下がるように力を抜いた。


レーゼンが息を吐いた所で一気に踏み込む、振り下ろしてきた剣を刃の根元に近い部分で受けそのまま柄で肩を一発当てる。レーゼンの体に柄が当たり押し出すように力を込めた。人一人分の空間が開いたところに右手で鳩尾に一撃。だが、完全に捉えきることは出来ず、彼はそのままバックステップでこちらの攻撃の勢いを殺していたのだ。


「いいぞ!シンラ君!このような戦い方をする者は今まで出会った事が無い」

「そう仰る割りには簡単にかわすじゃないですか」

「それは経験からの判断でしかないよ、誘っておいて悪いが仕事がまだ立て込んでいてね?行くぞ」


腕を切り落とすような一撃、俺は下から剣で跳ね上げようと手首のスナップを効かせて払う。剣を払ってしまえば腹に右手で一撃が届く、そう思った。

剣と剣が当たると思った瞬間、俺は咄嗟にバックステップで距離を開けた。

今何が起こったか理解出来ない、当たると思ったタイミングよりワンテンポ速くレーゼンの剣が届いていたのだ。剣がぐにゃっと曲がったように見えて、ボールペンをぐにゃぐにゃする遊びが頭に浮かぶ。


「初見で避けるか、シンラ君は本当に面白い男だな。ならこれはどうかな?」

左に薙ぐ剣筋を剣で受けようとするも、今度はワンテンポ遅いタイミングで衝撃が走り俺を剣を飛ばした。それでも腹へ一撃入れようとしたところでレーゼンは剣を収めた。


「君のその手は一体なんだね?」

そう言われて自分の手を見ると龍の手が完全に剥き出しになっていた。俺は拳を収めて数歩下がりレーゼンを見る。

「シンラ君は人間では無いようだね」

「はい・・」


どこか残念そうな顔をしたレーゼンは一度目を瞑り一息入れるとスイッチを入れ替えたようだ。

「本来なら、君のような者が城に居ること事態が由々しき問題だ。騎士になる事も許されない」

人間じゃないと分かった途端、急に距離を開けるように話し出すがそれもこの国では仕方ない事なのかもしれない。俺は指輪を外して返そうと動いたが手でそれを制される。


「君の腕は前は本物なのは認めるしかないようだ。私のアレを初見で避けたのだからね」

「あんな剣見た事がありませんでした」

「それでも、いや。君が今後を竜殿の騎士としてだけ生きると言うのであれば今回のこれは見逃そうと思うが?」

「それだけで宜しいのでしょうか?」

「それを了承するのなら明日の明朝には城出て竜殿へ帰るといい、もう会う事もあるまい」


途端にこの扱いとは、それでも自分が認めた以上は捻じ曲げないか?とんだ騎士団長だよ。俺は腕に包帯を巻いて部屋へと戻る他無かった。



ドアのノックに返事をすればラガノが入室して、先程起こったことを全て話す。「騎士も剥奪されたか?」そう問われたがそれは無いと答える。

そもそも騎士そのものが嘘なんだから気にする必要も無いのに。ラガノは夕食を旧友達として情報を仕入れていたらしく、得た情報を話してくれる。


「あの二人は何度か王と接触した事があるみたいだったぞ」

「それは最近の話なのか?」

「いや、二年前を最後に王や后の姿は見ていないようだ。ただ、違う者達は謁見したことがあるとか」

「何がどうなってんだか、俺には時間が無いってのに」

「明朝までに何とかしないと今後城に入るチャンスはシン殿には無いか・・・」

「今夜中に何が何でも魔術師について探るしかないだろうな」

「こうなっては仕方ないだろう」

「はぁー浅はかな行動だったかな」

「断るにも難しい状況であっただろうし、終わった事を嘆いても時は戻らんよ」

「だな、行動は夜中の方がいいだろうし少し休んでも良いか?」

「自分が起きておくからシン殿は眠るといい」



ベットに横になると直ぐに意識は溶けた。

そしてまたあの夢の中に、あの空間に俺は立っていた。ジャラジャラ音が聞こえて上を見上げて、あの時の夢と同じだと分かる。

違っていたのは、地面は朱色に染まりジャラジャラとなる鎖が複雑に絡み合っていること。手を伸ばすだけでそれに触れることが出来てしまう程で、垂れ下がってきている鎖も目に入る。


「いたいよ・・かえりたい・・・たすけてよ」

同じ声だけど前より弱々しい声で訴えて、またジャラジャラ音が鳴る。

「そこにいるのか!聞こえるか!!」

「だれ・・・だれ!!こわいよ!!たすけてよ!」

「待ってろ!今助けてやるからなっ!」

 

鎖を掴み腕の力だけで登った先に何かが見えた。

手を捻り込んで少しでも奥へ進めたところで腕に痛みが走って、あまりの痛みに俺の顔は苦痛に歪む。鎖が生きているかのように脈動し俺は地面に落下した。腕を見ると指輪が怪しくギラギラ光り茶色い線が触手の様に手を這っていた。

「どこ?どこにいったの?ねぇ!たすけて!」

「待ってろ・・・今助けてやるから!」

立ち上がろうとするが痛みで力が抜けてしまいそのまま倒れた。


「シン殿!どうした!シン殿!!」

揺さぶられる感覚に目を覚まし自分の腕を見た。

何も無い、あの触手みたなのも痛みも、同じ夢だったのか?あれは続きだったんだろうか。

「しっかりしろシン殿!大丈夫か?」

「大丈夫だ、なんか夢を見てたんだ。誰かが俺に助けを求める夢だったんだ」

「随分うなされてしきりに腕を触っていたぞ」

「夢の中でこの指輪が反応してたんだよ」

「外すべきだと自分は思うが?」

「大丈夫だ」

「これから動くに当たり先に竜殿へ行くのはどうだろうか?王達も心配ではあるが、王達へ近づくよりも竜殿側の方が近づきやすいと思うのだが?」

「ここから怪しまれず行けるのか?」

「城内に関しては自分に任せてもらおう、古巣だ」

「頼りにさせて貰おうか隊長殿」


流石に甲冑を着て動く訳にもいかず、普段着ている服やローブも持ってきてはいなかった。

甲冑の下に着ていた白いシャツと茶色のズボンで行動する以外に無いがガチャガチャ音が出るよりマシだろう。ラガノの後に付いて一度外に出たら既に暗く、ぽつぽつと明かりが見える。兵士と魔法兵とがツーマンセルで巡回しており明かりは魔術師が行使している魔法のようだ。ラガノは兵から見えない死角を巧妙に利用しどんどん先へと進み、城の正面から見て左奥にある建物の裏手で止まった。


「この建物が竜殿になる。巫女達はここで生活をしているから慎重に行くぞ」

「流石にばれそうだな・・」

「上手く行く事を祈るしかない」


ラガノが扉をゆっくり開けるが、それでもギィィと鳴る音を完全に消すことはできず二人して動きが止まる。扉を最小限だけ開いて、体を滑りこませる様に中へ踏み入る。その様は泥棒にしか見えないだろう。体を出来るだけ屈めて移動を開始、目的地は地下のようでラガノはハンドサインをくれている。

裏手から入ったお陰もあって地下に降りる階段までの距離は二十メートルもない。


竜殿内部には明かりが消され周囲は闇だったこともバレずに進める要因で、俺達は何事も無く階段まで辿りつく。内心悪い事をしているようで心臓の鼓動が自分で聞こえるほど高鳴っている。地下へ降りると廊下の最奥に両開きの扉があり、上とは違い等間隔で鈍い明かりが灯っていて、隠れる場所も無く最奥の扉以外何も無い直線だけの廊下を足音を殺して進み続ける。扉の前で一度止まり俺は何か仕掛けが無いかを確認してゆっくり扉を開いて様子見をするも、中は他の龍殿同様に中心に向けて傾斜のかかったすり鉢状をしていた。


その空間は薄い緑で統一されていて中心の祭壇に何者かがいることを確認した。一度身を引き、誰かいると合図を送ってラガノにも確認させると、ローブで顔は見辛いが自分は知らないと答えた。どうやら一番最初に最大の当たりを引けたらしい。


俺が扉を押そうとするとラガノはそれを止めた。

もう少し様子を見て判断したい、そう言うことだろう。息を殺し隙間から中を覗くと動きがあった。


「我が力の糧と成り、膨大な力を我に差し出せ」

その言葉の後、中心の祭壇から緑の霧が噴出して魔術師を覆った。

「ふん、死に底無いが大人しく力を差し出せばいいものを手間をかけさせるな」


無理矢理、祭壇から竜の力を引き抜いているのか?どうにも隙間からだと分かりにくい。魔術師は祭壇の前に立っていたが不意に振り返り掌をこちらに向けた。掌が見えた途端に指輪が鈍く光り手にピリピリと痛みが走った。

「っ!」

「シン殿その指輪!」

指輪を外そうと試みるが外れない。

この装備は呪われているを体験することになるとは。

「覗き見するのは好きだがされるのは嫌いでね?

出て来てはどうだろう?」

「最早、隠れる必要もあるまいシン殿立てるか?」

「余裕過ぎて涙出るわ」


扉を開くと魔術師はこちらを見上げて口の端を釣り上げ笑った。

「これはこれは、元騎士団長殿に新たな騎士君じゃないか」

「貴殿はここで何をやっているのだ」

嘲笑するように笑う魔術師は「それはこちらが聞くべき問いだろう?侵入者諸君」ワザとらしく両手を広げて悦にでも浸ってるんだろうか、分かっててやっているなら相当な大根役者だろう。

「貴殿・・・」

「外にいた君ならこの国が変化していく様をよく見て取れただろう?」


フードを取るとラガノは絶句した。


本話も読んで下さりありがとう御座います。

ブックマークをして下さっている方にも感謝です。


双子竜編は次話から数えてあと八話予定しております。

明日もアップロード出来ると思いますので、次話も宜しくお願い致します。


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