新しい力?
ノシュネを背にドラシャールを構え蒼煉を展開していた。レミナとエルジュには目で合図すると、彼女達はノシュネの横に移動し静観する。俺を止めないのは彼女達も怒りを感じているからだと思う。
「待ってくれシン殿!敵対する気は無いのだ!」
「シン様!」
「シンさん!」
「これが本性だな・・確定だ」
くだらねぇ、イライラするこいつだけは許せない!
そんな怒りだけが脳内を駆け巡る。
「出方次第では敵対させて貰う、ここからは考えてしゃべるんだな」
「シン・・・怖い・・・」
「ノシュネ大丈夫だ!主様は優しい」
「飼い主様は怖くなんてないのですよ?」
「ヴィスとか言ったか?お前は何がしてぇんだよ?大丈夫か?」
「貴様如き化物に言われる筋合いなど無い!そこをどけ!」
「どかしてみろよ・・・」
「レミナでも勝てない主様に勝てる訳ない・・」
「絶対無理なのですよ~」
さて・・・どう動く?クレフィアの動き次第だ。
俺は彼女がこんな事を率先してやるような人間では無いと思っていた。いや、今でもそう思っている。国という枠組みの中で権力を持つ者は多角的な方向から利用されることもあるだろう。それでも彼女達が何かに利用されているとは限らないし、自らの意思でここに赴いた場合は考えがあるはずだ。
「ヴィス・・・それをアタクシに渡しなさい」
「姫さ「いいから渡しなさい!」」
首輪を受け取ると彼女はそれを投げ捨てた。
「姫様!何をなさるのですか!それが無ければ!」
「ラガノ!テュル!捕縛しなさい!命令です!」
「「はっ!」」
「何をする私は騎士だぞっ!聞いているのか!」
「お前は少しやり過ぎだな、姫様の命令を無視どころか顔に泥を塗った」
「恩あるシンさんに向かっての暴挙に愚弄さらには状況を掻き回し敵対、貴様の行いは騎士どころか野党のそれと同じね」
クレフィアはどうやら全てを話す決意をしたらしく膝を地に付け俺とノシュネに頭を垂れて謝罪した。
「シン様、ノシュネ様、話をさせてくださいませ」
「シン・・・誰?」
「クレフィアって言ってお姫様らしい」
「姫・・・」
「アタクシはノヴィス=クレフィアと申します」
「ノヴィス・・・」
「はい、ノシュネ様を奉っておりました王家の人間です。今日はどうしてもノシュネ様にお聞きして貰いたい話がありまして恥じながら参りました」
俺は蒼煉の展開を止めドラシャールを背負い戦う意思が無い事を示した。ノシュネに振り向き話を聞くだけでも聞いてやってくれと頼むと彼女は頭を縦に振ったのだった。
「少し待って」
ノシュネが輝き始めるとそこからレミナと差ほど変わらない少女が立っていた。朱色の髪を肩まで伸ばし赤いワンピース姿、帽子でも被せたら女子サンタさんにも見えるだろう。
「レミナは蒼色だ!」
ローブをバサッと広げたレミナを見たノシュネは笑っていた。
「ノシュネは朱色!」
二人はすでに手を繋いで旧知の友に再会したかのように仲良しになっている。取り合えず話するかと促がし再開した。
「それで?何をどこから話すんだ?」
「何故、このような事態となってノシュネ様のお力を必要とするのかですわ」
「姫様ここは自分が・・・」
「いえ、アタクシ自身が話をせねばなりませんわ」
俺は地面に座ると右にレミナ、左にノシュネ、後ろにエルジュと周囲を完璧方位されてしまっていた。何故に俺を中心にして集まるんだよ動き難いじゃないか。
「百年前、戦争に負けた我々はノシュネ様を奉っている竜殿を破壊されました」
「なんで戦争になったか聞いてもいいか?」
「戦争の理由はとても単純な事だったそうですわ。二つの竜殿を一つにしようと意見が出た事を発端としますの」
「双子の竜なんだから別に一つにしても問題無さそうなもんだけどな」
「二つを一つにする、それは良いことだとアタクシも思いますの、ですがそれに伴う権利や地位等の問題が生まれたのですわ」
ノシュネを見ると下を向いたまま震えていた。
頭を撫でて大丈夫だと言ってやると龍の手をぎゅっと握った。
「互いの家は互いを欺き、騙し、挙句に殺し、そうして戻れなくなり戦争が起こり負けたましたわ」
「百年前の話なんだろ?今はどうなってんだ?」
「国自体は安定し平和ですが・・それは外から見ただけの場合ですわ」
「中はドロドロってか」
「十年前に国は外から魔術師を雇いましたの、力に優れ聡明な方ですが彼が来てからおかしな事が起こりましたわ」
「まるでそいつが黒幕でーすといわんばかりだな」
「確信を持っておりますわ!あの男がノヴィスで何をしているか!」
「お前らがだけがそれに気が付いている、てか?」
「えぇ・・アタクシは姫と言っても、国に関わりを持たせてもらえないお飾りのような者なので・・」
「ん?」
「簡単に言いますとお世継を生む為だけに存在が許されているようなものなんですの・・故に今は竜殿の中だけで生活をしてますの」
「もう一つの竜殿の竜とも知り合いって事だよな?」
「アタクシがいるのは破壊された後に形だけ再建された張りぼての竜殿ですわ」
「ノシュネに戻ってきて貰いたいって事か?戻ったところでどうすんだよ?」
「ノシュネ様にお戻り頂ければ、もう一つの竜殿に奉られているフォスキア様にも近づけると考えましたの」
「それでどうすんだよ?」
「先ほど確信に繋がるのですわ、城へ何度か呼ばれることがあるのですが明らかに様子がおかしい。
魔術師の発言そのものが力を持っているみたいで、まるで決定権は自分が持っているかのように振舞っておりましたの」
魔術でも使って結界でも張ってるのか?
幻惑をかけるような結界があれば可能か?
色々と考えを巡らせて可能性を模索していく、ぼけっとしていたように見えたのかノシュネが俺の手をぎゅっと握った感覚で思考は止まった。
「どうした?」
「あのね・・・お姉ちゃん・・」
「心配だわな・・」
「うん・・でも・・・」
「怖いよなぁ・・」
「怖い・・・」
「百年前に戦争があって竜殿が破壊された時に何されたんだ?」
「えっ!」
「お前が一番の被害者みたいなもんだからな?お前から見た目線でも話を聞きたいと思ったんだよ」
震えながらも俺を見て弱々しくも口を開く。
「急に引っ張られたと思ったらね、いつもお姉ちゃんとおしゃべりしてたところにいたの」
「引っ張られた・・・干渉されたってことか?」
「分からない、どこからか声が聞こえてきて、お前は生贄だって言われて・・・それでお姉ちゃんが逃げなさいって。沢山怖いことされて逃げて逃げて、血もいっぱい出て・・それで・・・っぐ」
「大丈夫だ、ゆっくりでいいからな?」
涙を流しながらそれでも言葉を紡ぎ全てを聞き終えると彼女は俺に抱きついて泣いた。
レミナも心配したようでずっと慰めるように頭を撫でている。力尽き死を垣間見た時、ソルナの導きでこの山まで逃がして貰ったそうだ。そもそもソルナが知ってて俺を寄越したと考えたら、俺に何かしろってそう言われてる気がしてくる。
「クレフィア・・・」
「何か分かったのですか?!」
「お前は魔術師に会ったことあるか?」
「城に行くことはあっても数回見た程度ですわ」
「結界でも張ってるかもしれんな」
「結界ですの?」
「結界内の人物を操るとか、命令出来たりとかそんな何かが・・・」
「そのような魔法を大勢に行使するのは難しいと思いますわ」
「無理なのか?」
「膨大な魔力があっても行使する者の身が持ちませんわ・・・」
身が持たない?でも~どっかで?振り返りエルジュを見るとタイミングよく目が合った。じぃーと見てたら変態はモジモジし始めて終いには息が荒くなってきてる。
「かっ飼い主様、私めはいつでも準備出来てるのですよ!でも流石に今はダメなのですよ!!」
「何がだよお前は何を聞いてたんだよ変態が」
「はぁ・・でも・・飼い主様が私めを・・」
「勘違いすんなや!町の人間遠ざけるために惑わしたとか言ってただろ?」
「あ~」
「それ結界とは違うのか?」
「あれは~私めだけの力じゃないのですよ?山の木々の力も借りて魔法で結界を展開したのですよ~」
「でも大勢相手に展開して効果があったんだろ?」
「それでも外から木々をなぎ倒されたら効果ないのですよ~!」
「凄く簡単に言うなんだな。あの山とか泉とか憑いてた木とかに思い入れ無いのかよ・・・」
「過去は振り向かないのですよ!大事なのは今なのですよ!!!」
「あ・・うん、大切だなそう言うの・・・」
場があれば展開は可能か・・でも大勢が対象になるとそれなりに穴も出来る訳か。そもそも本当に結界が展開されてるかも分からん、本当に信用されてるって可能性もまだ捨てきれない。ノシュネの姉ちゃんなら何か知ってるとは思うし・・俺もレミナのことあるからなぁ・・・。
「クレフィア」
「なんですの?」
「俺達さお前の国に行っても良いか?」
「え?それはっ!」
「シン殿!それは本当か!!」
「シンさんが来てくれるならどうにかなるかもしれません!」
「ですがっ!危険ですわ!」
「姫様!確かに危険はありますけど、シン殿の力をお借りする事が出来れば!」
「仮にうまく行ってもシン様に何一つ返せるものがありませんわよ!」
「別にそういうのいらないから・・・俺も目的あって行く訳だし。その代わりノシュネは置いていく」
「シン殿・・」
こんなに怖がってる子を連れて行ってもどうにもならんだろう。無理矢理連れて行こうとした馬鹿もいるんだし危険はあると考えて動くべきだ。
それならノシュネは置いて行く方がいい。
「行く・・・」
そう聞こえてノシュネを見ると彼女は俺を見て「付いて行く・・」そう言った。
「怖いんだろ?俺が姉ちゃん連れてきてやるから」
「わたしも行く・・」
「主様がいるから大丈夫!」
「なのですよ!」
「何?何基準なの?俺は保険なの?」
「飼い主様が何言ってるか分からないのですよ?」
「分かったよ、で?クレフィアいいか?」
「シン様が来て下さるなら心強いですわ」
俺達は再びクレフィア達と行動を共にする事になった。準備をして行く途中、ノシュネに裾を引っ張られた。
「あのね・・」
「どうした?」
「わたしと契約して・・」
「契約って・・」
「これから大変かもしれないから少しでも」
ノシュネは俺の眼帯を外して抱きつき目にキスをした。目が暖かく力が流れているのがハッキリ分かると彼女は離れた。レミナとエルジュが俺の目を覗き込むと笑顔で「主様また綺麗になった!」「飼い主様の目綺麗なのですよ!」って褒めてくれる。
試しに体に龍力を流してみる、ルビネラの時と違って何かが変化したような感じはしない。ノシュネに話を聞いてみても「はっ初めてだから・・分からないよ」顔を赤く染めてそう言われた。悪い事してるみたいだからそんな反応は止めて貰いたい・・・。
テュルの魔法で拘束されたヴィスを連れラガノが準備が出来たから行くぞの合図で出発する事になる。眼帯をエルジュが付けてくれ歩き出す、ノシュネが俺を手を握り笑顔で言った。
「宜しくね?お兄ちゃん」
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次話から新章に入りますので宜しくお願い致します。




