無敗の剣闘士バルダの妻君が殺害~~~樹歴684年、9月26日
樹歴684年、9月26日となりました。
本日も、ワタクシが異世界ニュースをお届けいたします。
解説はみなさまもお馴染みの
「俺だ」
よろしくお願いします。
では、トップニュースです。
~~~無敗の剣闘士バルダの妻君が殺害~~~
アーダルシア帝国で10年間、実に1000戦して無敗の剣闘士バルダの細君が殺害されたとのことです。
「たしか……奴の妻はアーダルシア帝国貴族の女だったよな」
はい、その通りです。
「帝国はバルダを抑え込むために女を送ったつもりだったんだろうが…。バルダの様子はどうなんだ?」
現地からの報告では、怒り狂って、剣奴を募って蜂起しているようですよ。
「枷になるはずだったのに、逆に火をつける結果となったか」
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わたくしの国は帝国に滅ぼされました。
そうして、わたくしは散々に仇敵の慰み者になった後で、卑しい剣闘士なぞに下されました。
それも、わたくしを貪った貴族の養女として縁付けたうえで。
情けなかった。
悔しかった。
これでも元は侯爵令嬢なのです。
でも死ねませんでした。
家族の、死んだ人々の恨みを晴らすまでは。
どんなに辱められようとも死ねなかったのです。
わたくしを貰い受けた剣闘士は、それはそれは醜い大男でした。
全身の至る所が傷だらけで、正視に絶えないほどでした。
そんな剣闘士は。
とても心優しかったのです。
口汚く罵るわたくしの毒を黙って聞いて「苦しかったろう」と抱き締めてくださったのです。
そして美しいとおっしゃってくださいました。
穢れて…逃げられないよう足を切られて、抵抗できないよう両手を切られた、この体を、この身を。
美しいと。
言ってくださったのです。
それからは幸せでした。
まるで夢の中のように。
敵討ちのことすら忘れてしまっていました。
そして、あの日。
彼が現れたのです。
わたくしの元婚約者が。
奴婢に身をやつした彼は言いました。
「死んでくれ」
と。
「君が死ねば、怒りに燃えてバルダが起つ。我々、反帝国の戦士は、そこに糾合して帝国を打倒する、と」
わたくしは、その夜。
懇願して、初めてバルダさまのお情けをいただきました。
そうして。
「バルダさま。愛しい、わたくしの旦那様。どうか、わたくしをこの世の苦しみから解放してください。どうぞ、旦那様は自由になってください」
言ったのです。
バルダさまは涙をこぼして、わたくしの胸に剣先を突きつけます。
「幸せでした」
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〇樹歴684年10月
剣闘士バルダをリーダーとして剣闘士が帝国に反旗を翻す。
奴隷や農民を取り込んで、膨れ上がったバルダ軍は12月には帝都まで攻め上る。
〇樹歴685年1月
バルダ暗殺。
刺客は奴婢であった。後にこの奴婢は叙勲され、男爵になる。
〇樹歴685年同月
リーダーを失ったバルダ軍は瓦解し、帝国軍に完膚なきまでに敗れる。
たった1度の敗戦で、万を数えたバルダ軍は散り散りになり、2度と元には戻らなかったのである。
〇樹歴685年2月
塩漬けにされたバルダの首を検めた皇帝はこう述べたとされている。
『なんと醜く、卑しい顔だ。きっと愛の何たるかも知ることが無かったろう』
バルダの首は門前で数日間晒されると、その後は糞溜に捨てられたという。
前回でお話の構成?が決まった感じですね。
①ニュース
②モノローグ
③歴史
こんな感じでこれからも行きます。
9/26副題が見にくかったので、表記を訂正
ついでに1~7話を今の形式に手直しするかもです。