二羽の小鳥は再び空を目指す
人生はドミノ倒しに似ている。
目標に向かってドミノを並べ、途中で倒してしまったら一から再び並べ直す。
そうして挫折を繰り返し、出来上がる模様は当初望んでいたものとは異なるかもしれないけれど、それまでの努力を振り返れば、それはそれで味があると思えてしまう。
たくさん枝分かれするドミノのように、人生にはたくさんの道がある。
それまで目指していた道に疑問を覚えたなら、その脇道を進めば新たな道は拓ける。
そうやって迷いながら進んだ道のりは、決して無駄にならないのだと僕は考える。
だから、未来の見えない人生は、ドミノ倒しに似ているのだ。
目に見えない道を、僕らはきっと心のどこかで探し続けているのではないだろうか?
それを見つけたとき、きっと人生は大きく変わるのだと僕は信じている。
僕が長いようで短く、短いようで長く感じる充実した二週間で築き上げた遠回りの道のりも、野々山秋葉という存在がいたから正しい道になり、何かの模様を作ることが出来たのだろう。
でも、その模様はまだ誰も見ることが出来ない。
だって、僕らの物語はまだ始まったばかりなのだから。
人生に最終回はない。
惨めに、愚かに這い蹲り、思い出という模様を完成させるまで、このドミノ倒しは続いていく。
きっと、一生。
今はそれでも良いと思える。
だって、僕にはかけがえのない大切な友達がいて、そいつらと同じ時間を過ごすのだから。
「……起きた」
目を覚ますと真っ青だった空は茜色に染まり、秋葉が僕の顔を覗き込んでいた。
美少女の膝枕。
以前の僕なら「野々山にそんなことをされても少しもときめかねぇ」と吐き捨てていただろうけど、今だけはじっくり堪能させてもらおう。
「秋葉、お前ってこんなに可愛かったのか」
「……ッ?!」
顔を真っ赤に紅潮させる仕草も今だけは愛おしく思える。
こいつはこんな顔で照れることもあるんだな。新しい発見をした気分だけど、それを指摘したらいつもの無表情に戻ってしまうのだろうな。勿体ないからこれは僕の心の中にしまっておこう。
ただのろくでなしだった僕が、誰も知らない野々山秋葉に誰よりも近づけた気がした。
でも、今の僕ではこいつの背中はまだ遠いんだ。
いつか、僕もこのカッコ良過ぎる英雄の隣に並び立てるような立派な男になりたい。
そのためには、もっと努力とかそれ以外の色々なのもが必要なんだと思う。
だから今は。
「なぁ、秋葉。みんなはもう帰ったかな?」
「……たぶん」
「それじゃ、久々にやろうか。第二回紅白学園主催空の旅!」
今なら飛べる気がする。
どこまでも高く、あの夕陽に手が届くくらい。
どちらからでもなく僕らは手を繋いだ。
あの日、一緒に飛び降りたときのような不安は微塵もない。
きっと、これが僕にとって最後のフライトになるだろう。
一年前のあの日、屋上に置き忘れてから誰にも気付かれないように汚れた両手で守り続けていた未練は、今ではどうでもいいものだったとさえ思える。
さぁ、新しい模様を僕らの人生に刻み付けてやろう。
互いに顔を向け、柔らかく微笑み合う。
ああ、やっと見られた。
僕は秋葉と出会ったあの日から、ずっとこの笑顔を見たかったのだと自覚する。
笑わない人形みたいな彼女の心を、僕は少しでも温められたのだろうか?
学園で一番嫌われていたみにくいアヒルの子は本当の気持ちをみんなに叫んだことで美しい白鳥へと成長した。
ろくでなしだった僕は、まだろくでなしのままだけど、それでもいいよな。
だって、この物語の主人公は僕じゃなくて野々山秋葉なのだから。
だから、この物語は『秋葉の空』と名付けよう。
秋葉が憧れた空に、いつか手が届くことを願って。
夕陽を見つめながら、二人の呼吸が合う。
正反対で交わることがなかったはずの二人の世界が交わったような気がした。
僕らは今、二人の世界の境界線上にいる。
これからは二人で手を繋いで、この境界線上をずっと歩いていこう。
次の瞬間、意図せず二人の声は重なった。
「「……せーのっ!」」
ご愛読ありがとうございました。
一気に投稿したので、正直かなり疲れましたが、元々この作品は私が三年ほど前に執筆したもので、どこにも載せていなかったのを知り合いから読みたいという声があったのでこちらに掲載させていただきました。
書けば書くほど自分の文章力のなさに恥を覚えましたが、少しでも感想をいただけると幸いです。
回収しきれなかった伏線もあるので、続編をそのうち執筆しようかなとも考えておりますので、こんな私のつまらない作品でよろしければ、またお付き合いください。




