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第五話「お嬢様って呼びなさい」

――――クロside out――――

 

 クロが寝込んでさらに二日経過した。


「お嬢様。クロの少年がようやく回復したもようで。」


 十畳程あるリビングで、黒い蝶ネクタイと白シャツの上にタキシードを着たセバスがいる。

 セバスは迎えのソファで足を組み、右手で金色の前髪を触りながら居座るアシカリアに報告していた。


「そう。やっと回復したのね。」


 クロの心配をしていたためか少し安堵の色が窺える。


「さすがに心配しましたね。」

「全くよ。やっとの思いで召喚していきなり死なれたら、これまでの努力の意味がなくなるとこでしたわ。…それにしても、ここまで時間が掛かるなんてね。これは予想以上でしたわ。」

「えぇ。これはいい意味で予想以上なのかどうかわかりませんが、それを今から調べてきます。」

「わかったわ。また結果の報告お願いね。いい意味での予想以上である事を願うわ。そうすれば私の野望に一歩近づくわ。ふふふふふふ」


 今はもう心配していただろう顔を引っ込めて、不気味な笑顔が顔を満たしていた。

 その顔を見ても動じずに「では、失礼します。」と言って部屋から執事は去って行った。


――――クロside in――――


「とっ言うことで、今から魔力量を調べます」


 俺の部屋に入って一礼した後、手に野球ボール程の水晶玉を持ったままセバスは話し出した。


「え~と、いきなりよくわからないんですけど…。」


「これは、貴方の今の魔法量をどれぐらい蓄積しているが調べるものです。現在は透明ですが、これが、白、黄、緑、青、紫、赤、そして黒と変わります。白が一番低い魔法量を表し、最高が黒です。」

「はぁ…。」


 そう言ってセバスは水晶玉を渡し、それに対して、まだよくわかってない俺は気のない返事を返すしかなかった。

 

 とりあえず俺の力を見るのかな?

 やべぇ、テストの答案を返されるみたいでドキドキする。


「ちなみに一般人の方は、緑で、高魔法量は紫以上からですよ。それでは、行きます。『この者の力示さん(マジックスコープ)』」


 そう言うと、水晶の色は透明から徐々に変化を見せていった。

 そして、紫色に変化した。


「…え?これってどうなのでしょうか?一流ですか?」


 おぉ出たよこれ!きたんじゃない?流石俺様!


「ふむ…なるほど。いやいやこれほどとは、確かに色は紫色ですね。」


 あまり動揺した様子を見せずにセバスは変色した水晶を見下ろし、笑顔を浮かべてくれた。


「おめでとうございます。かなりの魔力量をお持ちのようです。これなら大丈夫でしょう。お嬢様も喜びになると思いますよ。」


「え?やっぱりすごいんですか?よかった…。それじゃー俺強くなります?」


 なるよね?強くなるよね?

 目を光らせながら、新しいおもちゃを買ってもらった子供のように訪ねた。


「えぇ。まぁ訓練などが必要ですけど、強くなりますよ。と言うより強くならないといけません。ちなみにお嬢様は黒でした。」


 さすが百年に一人の天才様ですねぇ。俺とどれぐらいの違いがあるかわからないど…。


「ちなみにアシカリアさんと俺はどれ程の差があります?」

「ん~まぁ目安としてですけど、大体クロの百人分の魔法量をお嬢様は持っていると思ってください。」


 どんだけや!くっやはり今のままじゃ勝てないなぁ。


「それにしても、大分落ち着きましたね。口調も柔らかくなりました。」


 当初の様子から大分変わった態度に少し不思議に思ったセバスが、紫色から徐々に透明に変化していく水晶玉を受取りながら答えた。


「いや~ここ一週間程寝込んでいる間にいろいろ考えることができましたので。それに今は帰れないって聞いては、それにしても黒ですか、やっぱすごいんですね。アシカリアさんは。」


 

 誰も知り合いが居なく頼れる人が居ない、そんなぼっち状態で仲間を増やさなければいけないのだ。そのため姉ちゃんズにより培われた作戦。その名も[いい子にすれば飴がもらえる作戦]を実行だ。

 説明しよう!

 上から二番目次女トモエ姉ちゃんがいた。年は俺の五つ上。活発でショートカットの女の子です。あれはまだ小学校二年生の頃、やはりこの年になると俺は異性を理解できた。

 それなのにトモエ姉ちゃんは俺が家に帰ったら強制的に女装させようとするんだよ。いやいやいや着ませんよって言ったら一発、ごめんなさい嫌ですで一発、僕は男です、で蹴りが来る始末。最終的には着ますよ。無理やりですよ。

 だってもう痛いのは嫌です。

 だけど、そのやり取りを一ヶ月も行なった。頑張って反抗はしました。

 しかし、言うこと聞いて女装したら、あら不思議一発も飛んできませんでしたとさ。まぁお陰様で女性用の服を手に取るとガクブル状態です。

 しかも、あのトモエ姉ちゃんが服を着ただけで、飴を渡してくれます。止められまんよ。言うこと聞けば飴が来る。そんな幸せの関係が発生ですよ。はっはっは。

 まぁ俺が小学校を卒業した段階でトモエ姉ちゃんは「あんたも年とったら可愛くなくなったからもう着なくていいわよ」だってさ。まぁこの後また違う方法で躾(いじめ?)があったけど、その話はまた今度。

 長々と話したけど結局言う事聞けば皆にいじめられないってコトだよ!

 とりあえず、言うこと聞きますよ。最初はね。はっはっは。

 この二日間でとりあえず表面では優等生を演じる事に決めたのだ。それがこの世界で生き残るために最初にする事だと考えた。


「えぇそうですよ。まぁそれはまた追追とわかるでしょ。あと[アシカリアさん]ではなくお嬢様って呼びなさいもしくはアシカリア様で。」

「はい、わかりました。」

「それでは、私はこれで、この結果をお嬢様にお伝えしなければいけませんので。それでは。」


 そう言って最後まで礼儀正しく部屋から去っていく。

 静かになり一人になった部屋でガッツポーズをする俺がいた。

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