Re:パーティ―結成
数日して隣町から戻ってきた俺はダンジョン内での出来事を昨日、学校及びクラスメイトのリーダーに話した。
その結果、俺の所属していたパーティーは解散。
仲間を攻撃したシルヴィは退学し、マルコスは休学、俺とマレアはしばらくの休暇を言い渡された。
俺はクラスメイトとのパーティーを組むことの信頼性に少なからず疑問を抱いてしまい、それを隠さずに話したところ、他のクラスメイトと無理に急いでパーティーを組まずに良い、と言われたのだ。
よって、俺はソロになった。
はずだったわけだが。
「和人、私を一人にするの?」
同じく、仲間に裏切られた心的外傷のせいか、一人になることを嫌ったマレアが俺の部屋へ、やってきた。
俺が学校の学生寮で今後の方針をどうしようかなと、床に寝転がってゴロゴロ考えていた時のことである。
「マレアは他のクラスメイト達と組めばいいだろ。転入してきた俺よりもクラスメイト達との仲は良いんだから」
「マルコスとシルヴィ以外のクラスメイトとはパーティーを組んだことがない。だから、私も他によく知っている人はいない。それに、和人は窮地になっても仲間を裏切らなかった。私はそんな信頼できる人と一緒にいたい」
いつもと違って、珍しく長々と言葉を紡ぐ姿にマレアなりの必死さが垣間見えた。
「まあ、マレアがそれが良いなら俺が断ることはしない。だが、後衛担当だった二人だけでは冒険に出られないだろう。いくら、マレアがダンジョン内では少し特殊なスキルを発揮できるとしてもな」
「……。そうかもね」
俺は戦闘不能になったマルコスの剣を使って、前回は何とか窮地を抜け出したわけだが、次も似たような状況に陥ったら、同様にうまく乗り越えられるとは限らない。
確かに、前回は脱出不可の部屋に閉じ込められ、敵が魔王軍の幹部、引き連れてきたミノタウロスの大群など、いくつもの普通では起きない想定外の出来事の連続だった。
だから運が悪かったせいにすれば、それが一番楽に済む方法なのだとは思う。
でも、冒険なんてものは本来、予想内のことのみで終わることは滅多にないものでもある。
いくつかの想定外にも対処できるように冒険者達が団結することが大切で、パーティーというものはそのためにあるのだ。
前回の冒険で俺らのパーティーは完全崩壊したわけだが。
あくまでジョブ的には後衛スキル担当の俺と、後方からの狙撃役のマレアだけでは、パーティーの柔軟性は低い。
他に良いメンバーを集めるべきだろうとマレアと二人で思案することになった。
そんななか、俺の部屋のドアが開いた。
鍵はかけていたはずなんだけどと思って、そちらを見ると、いつ以来だろうか、一か月ぶりくらいに女神ネメシスが俺の前に現れた。
「今月の家賃の支払いが滞りそうなんだ。なんなら、数か月分溜まっていたりもするのだが。私へのお布施だと思って、和人、今月分だけでも良い、私の支払いに協力してほしい」
んっ?
いきなり現れて、なにを言っているのだろうかこの女神は。
とりあえず俺は聞きたかったことを聞く。
「鍵はかかっていなかったか?」
「鍵?鍵など、私の力にかかれば、無いも同然だ。それより、この書類を見てくれ」
なにやら、紙を渡されたので見てみる。
「すまない、俺は文字があまり読めないんだ」
「文字?文字なら、この世界に来るときに元の世界の文字に勝手に置き換えて理解できるように魔法を掛けといたはずなのだが。ま、まさか、この私に限って、し、失敗だとっ?副作用が発動してしまって、頭がパーにでもなったというのか?そんなことが上にばれたら……。そんなの知らないぞ。私のせいではないぞーーー!!!」
そういって、俺から逃げていくように女神は部屋を飛び出していった。
何だったんだか。
「前も言ってたよね。確か、二回目のクラス合同の冒険に出た時。やっぱり和人は文字が読めないんだね」
「ああ、そうなんだが、そのせいで彼女が俺の部屋からドアを開きっぱなしで飛び出して行った……。鍵をかけてこないと」
そういって、俺は開かれた自宅のドアを閉めに向かった。
「おつかれ。それで、この紙なんだけど」
部屋の中に戻ってくると、俺が床に置いといた女神から受け取った紙をマレアが読んでいた。
マレアが読んで聞かせてくれた内容によると、クエスト受注に関してだった。
「このクエストを受けて、分け前の報酬を家賃にしたかったのかな?」
クエストの内容はワイバーン討伐らしい。
マレアによれば、ワイバーンはドラゴンの一種で、ブレスは吐かないことから、ドラゴンの種類的には低級の類らしいが、あいにく、俺はDランク相当の冒険者、それもその見習いの身分。
今まで、ゴブリンや、オーガレベル、一番強くてもCランク相当のミノタウロスとの戦闘しか経験したことがない。
低級でもドラゴン戦は最低でもBランク相当の冒険者、それも複数パーティーの結集が必要とされるレベルだ。
普通に考えて、Dランク相当の二人が背伸びして手を出して良い相手じゃないだろう。
そんな思案をしていると、また、家の玄関のドアが開いた。
鍵の意味ねえ。
「嘘だったじゃないか。琴葉もそう言っている。和人のやつ、クエストを受けたくないから嘘をつきやがったな」
そう言いながら部屋に入ってきたのは先ほどと同じ女神。
女神は、かしましく言葉を続ける。
「言語置換魔法は同時にかけた琴葉にはうまくかかっているんだ。お前だけが文字を読めないはずはない」
そう言ってやかましく騒ぎ立てる女神は天王院琴葉を傍らに引き連れていた。
「ひさしぶりね。和人。それにそちらの方もこんにちは」
天王院が女神ネメシスに腕を引っ張られて現れたが、彼女は強引に引っ張られての登場だったものの背筋が伸びた綺麗な姿勢だった。
「そうだな」
「こんにちは」
俺とマレアが順に挨拶を返した。
魔法学校のクラスが違う彼女とはしばらくぶりだった。
「それで、私はどうして連れてこられたのかしら?」
事情も知らされず、主の女神に引き連れられてきた天王院。
一人興奮している女神には構わずに彼女は俺に話を振った。
「ああ、ネメシスが家賃の支払いに滞納しているから、クエストに出て報酬が欲しいのだとさ」
「クエスト?一人で行けばいいじゃない」
なんで私が、という風に、そう対応するのが彼女にとっての自然であるかのように、発せられた天王院の言葉に女神は泣きついた。
「お願いだ。今月家賃を滞納したら、家を追い出されそうなんだ」
天王院の冷たい対応に縋りつく女神。
ああ、哀れなり。
「女神の力があるなら、クエストクリアなんて簡単そうに思えるのだけれど。女神がクエストを受けちゃいけない決まりでもあるのかしら。それとも下界に降りてきた神は力が弱まるとか?」
天王院は女神がどうしてクエストを自力で受けてこないのか、理由を思い浮かべている。
「女神?」
と、そこで、マレアが疑問を口にした。
ああ、全然そのようには見えないが、一応女神なんだ、ネメシスは。
こんなに騒々しい奴だけど。
天界にいた時には背中に生やしていた翼を服の下にでも折り畳んでしまっているのか、何らかの方法で隠しているのかは知らないが、今の姿は初対面では人間そのものだ。
なんなら、町田姫花の方が姫というか女神というか、そういった類の不思議なオーラを纏ってるまである。
「そう、私は『義憤』と『神罰』を司る女神だ。存分に敬い、称えるがいい。とはいっても、下界に降りてきた女神は天界にいた頃よりも極めて力は抑制されているせいで、わたし一人ではクエストも満足にクリアできないのだが」
それを聞いて、やっぱりそうなのね、と納得する天王院。
へえー、と言っただけであまり関心がなさそうに、それどころか退屈そうな顔をしているマレア。
聞いといたくせに、興味なさすぎじゃね?
「だから、お前たちにこのクエストを受けてもらいたい。もちろん、私も同行する」
そうしないと、ギルドから報酬を受け取れないしな、と小声でつぶやく女神ネメシス。
それって、ついてくけど、何もしないって言っているようなものだぞ。
「それで?私たちがその提案を受けるメリットってあるのかしら?」
「もちろんだ。私が安全を見守ってやろう。それに報酬も山分け。さらに、私の家に遊びに来てもいい。というか、住み着いてくれても構わない。もちろん、私が家賃を払えるようにたまに、私を冒険に連れ出してくれるというのならだが」
それって、報酬は実質、家に遊びに来ても良いということだけなのでは?
まあ、女神が安全面を担ってくれるというのなら、それはとても心強いのだろうが。
「……そう。まあ、いいわ。それで?誘ったメンバーはこの場にいる人だけかしら?」
天王院は初対面のはずのマレアも数に入れてネメシスに問いかけた。
「ああ、そうだが」
ネメシスはうなずく。
「aクラスの私が一人と、実力は分からないけれど、階級としてはDランクの二人、で良いのかしら?それと、ヒーラーで戦闘には役立たないであろう女神。先が思いやられるわね。まあ、いいわ、私強いから」
そう言った彼女は不思議と自身に満ち溢れていて、それでいて少し冒険が楽しみそうにも思える顔つきをしていた。
それから、マレアが天王院とネメシスに自己紹介して、二人がそれに返したところで今日の話し合いが終わった。
天王院はクラスの方は抜け出してきていいのだろうかと俺は思ったが、aクラスはあまり群れないで割と自由にやっているみたいらしく、多少クラスを離れたところで全然問題ないとのことだった。
主人公と天王院が八雪のような夫婦漫才することを熱望。




