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とある従魔師の交遊記録  作者: 安芸紅葉
四人目「幼き風の白狼」
15/42

第13ページ  卵

本日6本目です。

僕がこの世界に来て二年が経った。


この二年間僕は、ロアさんに教えてもらって弓術と短剣術を学んだ。

なんとかスキルは取得できたし、弓術の方は狙ったところに飛ぶようなはなった。


けれど、僕には武術の才能はなかったようだ。

異世界人だからなのか、僕の身体は普通の人の倍以上の力を発揮できるようだけど、体捌きがまったくうまくならなかった。

毎日練習してどうにか形になったのもつい最近。

これ以上の上達は見込めないと言われた。


でも、僕はそれほど気にしていない。

それなりには使えるようになったから、一人で狩りに行ったりもできるし、何より僕には心強い友だちがいる。


スライムのビギンは、僕の従魔になった影響なのか、それとも元からなのかわからないけど智能がすごく高かった。

新しいスキルも習得したりして、着実に強くなっている。


アイスヘロンのスーは、リタ村付近では敵なしの強さだった。

ランクBの魔物だから当然なのかもしれないけれど、スーと一緒に狩りに行ってしまうと僕の出番はまったくない。


だから、普段スーには村で待っててもらってる。

村を守ってもらっていると言ってもいい。


スーが役に立つことは他にもある。

それはスーが持つ冷気を操る能力。


スーはこの能力で、氷を作ることもできた。

そうなると、今まで長持ちしなかった食材を保存しておくことが可能になった。

氷室を作ったのだ!


これには村人全員から感謝され、うちにお礼の野菜やら、動物の肉が大量に届けられた。

結局僕らだけでは食べきれずに、みんなを招いて宴会のような状態になっていた。


「そろそろ行くぞ、ケイト」

「うん、ロア父さん」


二年前、獣都からヤム村へ戻ってきた僕らに、ミレイさんが笑顔で言ってくれた。

「おかえり」と。


僕はそれに笑顔で返そうとし、失敗して、そこでなぜだか自分が泣いていることに気付いた。

そういえば、「おかえり」と言ってもらったのは初めてだった。


そんな僕に、ミレイさんは困ったように笑って、優しく抱きしめてくれた。

そして僕は、もう我慢できなくて自分で驚くほど泣いてしまった。


その夜、ロアさんとミレイさんは何かを話し合ったようだ。

次の日から、僕を本当の子供として扱ってくれた。

そして、僕は、二人のことを本当の両親のように思い、慕った。


今日は、ロア父さんと森に狩りへ来ていた。

ここら辺の森に今魔物は生息していない。

僕が練習するためにロア父さんとスーと狩りまくった結果だ。


動物をあまり大量に狩ってはいけないが、魔物は別にいいらしい。

あいつらはどこからかいつの間にか増えるものだそうだ。


ただ、僕の場合魔物を狩るのにも抵抗がある。

友達になれることはわかっているからだ。

その点については、ロア父さんも気持ちがわからないから何とも言えないと言っていた。


けど、魔物は放っておけば他の人に被害が出る。

僕が全員と契約できるわけでもない。

狩らないといけないのだと思うことでなんとかやっている。


「お?」

「どうした?」


村へと戻る道中。

僕は、茂みの陰に何かがあるのを見つけた。


近づいていくとそれは一抱え程もある大きな黒い卵だった。


「卵?」

「ほぉ?だが見たことのない卵だな。それにこの大きさとなると、魔物の卵か?」

「どうしようか?」

「どうしたいんだ?」


そう聞かれて、僕の答えは決まっていた。

さすがに何の卵かわからないものを食べるわけにはいかない。


「孵せるなら、孵してみたい!」

「面倒はちゃんとみるんだぞ」

「うん!」


僕の能力なら、どんな魔物でも暴走の心配はない。

それがわかっているからか、ロア父さんは簡単に許可してくれた。


ただ、この後僕らはミレイ母さんにこっぴどく怒られることになる。

戻してこいと言われなかっただけいいと思いたい。

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