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とある従魔師の交遊記録  作者: 安芸紅葉
四人目「幼き風の白狼」
16/42

第14ページ 仔狼

昨日思ってたより更新できなかったので、木曜更新というのをやめます。

書き上げ次第どんどん更新していきます。

「帰ったぞ」

「ただいまぁ」

「おかえりなさい、あなた、ケイト」

「ダッ!」


もうひとつ。

この二年で大きく変化したことがあった。


それは、出迎えてくれたミレイ母さんの腕の中。

こちらに向かって笑って手を伸ばしている存在。


僕も笑いながらそちらに近付き、手を差し出すと、嬉しそうに指を掴み、キャッキャと笑う。


「ただいま、ラヴィ」


数か月前に生まれたロア父さんと、ミレイ母さんの子どもラヴィ・トゥーリ。

僕は子どもが生まれるところを初めて見た。


助産師サーネ婆さんに言われてお手伝いをしながら、僕の弟ができることを純粋に喜んだ。

ラヴィが無事に生まれてくれて、ミレイ母さんも無事で、僕とロア父さんは抱きあってワンワン泣いた。


手伝いに来てくれていた近所の主婦さん方を含む女性陣に呆れられたものだ。


これで僕らの家族は、精霊のセーラを入れて五人になった。


---


今日も僕と父さんは狩りに出かける。

最近は、父さんが趣味で始めた畑を午前中に世話し、午後からは狩りに出るということが増えている。


ただ、父さんは母さんばかりにラヴィの面倒を見させるわけにもいかないし、ほぼほぼ自由業と同じだし、更には父さんが冒険者時代にしこたま稼いでいたのでお金に余裕がある。

そんな状況を加味した結果、一週間のうち何日か気分によっては行ったり行かなかったりだ。


僕は一人で狩りに行っても問題はなくなったし、スーもいるから、父さんが休みの日も狩りに出たりしている。

この世界には娯楽が少なく、狩りにでも行かないと暇なんだ。


でも今日は、なんだか森の気配がいつもと違った。


「なんだ?」

「なんか空気がおかしい?」

『精霊たちも落ち着きがありません。なんでしょうか?』


セーラは普段自由にしている。

父さんは何か用事があるとき以外は、セーラ自身の感情に任せているからだ。


僕たちと一緒に狩りに行くこともあれば、家でラヴィと遊んでることもある。

ラヴィは、狸耳と狸の尻尾を持っているのに、精霊が見えるようなのだ。


瞳の色は父さんと同じ翠。

父さんはこれをすごく喜んでいた。


閑話休題。


ガサガサと音がし、こちらに何かちかづいてくるのがわかる。


父さんとセーラはそれより前に気づいていたようで、既に何が来ても対応できるようにしていた。


この世界に来て、体力膂力も上がっていれば、聴力や視力といった感覚も上がっている。

それでも、元々ただの中学生だった僕に気配を感じたりはできなくて、父さんからもっと感覚を研ぎ澄ませと言われる。

抽象的すぎて意味がわからない。


ガサリと音を立て、目の前の茂みが揺れた。


弓に矢を番え、茂みを注視する。


「狼?」


そこから現れたのは、一匹の白い狼。


その狼は、フラフラとした足取りで現れるも、こちらに気づくと威嚇の唸り声を発し、睨んできた。


だが、そこで気力が尽きたのか、バタンと音を立てて倒れこむ。


僕は慌ててそちらに近づくが、父さんはまだ警戒しているらしく、静止の声をあげていた。


でも、近寄ってみるとその狼は身体中を怪我しており、それを見た僕は止まることなんてできなかった。


「大丈夫!?」


すぐそばに膝をつき、声をかけると、ゆっくりと瞼をあげる。

しかし、またすぐに閉じてしまい、もうこの狼の体力が尽きかけているのだとわかる。


かろうじて息だけしている状態だ。


「父さん!」


様子に気づき、警戒を解いて近づいてきていた父さんに声をかける。


父さんは呆れながらも、狼に回復魔法をかけてくれた。


父さんは、精霊魔法の他に普通の魔法もいくつか使える。

属性は風と火。


エルフの中で火の適性を持っている人は少なく、これが理由で父さんは半ば追い出されるように故郷を出たそうだ。


そこで母さんと出会ったからよかったのだと惚気られた。


「風よ、安らぎを<エアヒール>」


エアヒールは、風属性の回復魔法。

軽傷を治すことができるが、この狼のように重傷だと治せない。


ただし、エアヒールの効果はもう一つあり、痛みを和らげることができる。


エアヒールを受けた狼は、呼吸が少し安定し、顔の緊張も解けた。

しかし、少しは治ったし、痛みが緩和されていても油断できる状態ではない。


僕はセーラに頼み、狼を宙に浮かせる。

人の手で運ぶよりも、セーラの風で運んだ方が揺れも少なく怪我に響かない。


「風の精霊よ、我らに力を貸し給え〈風精霊の祝福(シルフブレッシング)〉」


同時に、父さんの詠唱が響く。


これは、風の精霊魔法で、速度上昇の効果がある。

僕らの身体が軽くなり、いつもより速く動けるのだ。


僕らは急いで村へと駆ける。

村に行けば、薬師のネール爺さんがいる。

動物は専門ではないだろうけど、なんとかしてくれると信じよう。

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