変革の女王 VS 綺羅星の騎士(1)
>はい、どうも! 今週も始まりました「音声多重(中略)活劇」――あ、「│映画」。はい、映画ですね。……ん? 「映画なら毎週小出しで観ない?」……いや、動画配信が広まった現在、夕食の時に少しずつ観るなんて利用が広まっていますよね。だから、そういうものだと思ってください。そんなの納得がいかない、という方は……よく考えれば納得していただかなくとも良い内容でした。そのままテレビ番組感覚でご視聴ください。
さて、今回の舞台は、都内のある施設。実は│枚鴨市内ではありません。│枚鴨市より都心に近い場所ですが、都心とは呼べない距離にあります。方向としては北東になるかな。「え、それじゃあ足立か葛飾じゃん」となっちゃいますね。……じゃあ、もしかすると県境を越えているかもしれません。埼玉なのか千葉なのか。お、俄然、地元に近くなってきたと興奮してきた方もおられますね。
「勿体ぶらずにとっとと地名を言えばいいじゃん」というご意見もございますね。そうおっしゃる気持ちはわからなくもないですが――こんな作品ですから具体名を出すと迷惑がかかるんですよ! とお伝えしておきます。地元に近いと喜んでいる人は奇特な方なんですよ。前にも言いましたが自覚してくださいね。
その施設、地元では工場と考えられています。実際、トラックが出入りして手工業的な製品も産出されているので間違っていません。経営母体がどうなのか、という点は曖昧です。一応、一般人にも名の知られている企業へ商品を出している下請け企業として認識されていますが、詳しく知る人は地元におりません。そんなの気になるだろう、と思う視聴者もきっとおられるでしょうが、そこはゴツゴウ・ユニバース。区別が基本的に苦手な人々の世界なのです。
で、私は別世界から覗き見――じゃなくて観測をしている身なので、ある程度の真実を知っています。そこは実のところ公的機関なのです。ハッキリ言ってしまうと、刑務所であり更生施設です。
ここまでお伝えすると勘の良い視聴者の方はピンと来ているでしょう。そう、異能者を閉じ込めておくための施設なのです!
他の作品では異能者がたくさん出てきますが、それって捕まえた後どうするの? って心配になりませんか? もちろん、「専用の施設に収容する」という解を用意している作品はあり、結局ゴツゴウ・ユニバースでもそういう扱いなんですが、ゴツゴウ・ユニバースだと他より安心できる点が一つあります。それは、異能者が基本的に他と比べて地味でおとなしい能力の持ち主ばかり、という点です。
だから、捕まえた異能者の数だけ特別仕様の監獄を作る必要はありません。通常の収容レベルで対応できるのがほとんどなんですね。注意するべきは、運動能力の高さです。
ヒーロー連盟が実施しているヒーロー認定、あるいはヒーロー試験といわれるものは、基本的に運動能力が高くないと突破できません。ゴツゴウ・ユニバースの日本では認定ヒーローは非常に数が少ないですが、自身の異能を悪いことに使おうと考えている者はそもそもヒーロー認定を受けようとしません。なので、認定ヒーローとなる者が存在しているということは、潜在的にヒーロー認定しないだけで同等の能力を持つ者がいるという可能性を示します。そして実際、そうなのです。
そういう、専門的にはH案件として処理されて犯罪者と認められた者の一部は、通常の刑務所に放り込まれずに、特別な訓練を受けた職員のいる施設へ入れられます。それが、この施設なのです。
イメージしやすいように具体例を挙げましょうか。
シーズン1の神回の一つという声もある、桜ちゃんが活躍して「ぎょええぇぇー」するお話を思い出してください。そこで登場したヤモリ男がいましたね。……え? 「『クモ男』の間違いじゃないか?」 ですか? いや、それだと権利がどうだとかややこしくなるのでクモではありません。ヤモリです。間違いやすいですけれど、イモリでも違いますよ。イモリとヤモリの違いは――あ、話が逸れている!? では、気になっている方はしばしこの場を離れて「Webで検索!」してみてください。
えーと、ヤモリ男でしたね。はい、あの人はこの施設に入っています。一方で、桜ちゃんの片腕を折った半人前異能者は通常の施設に送られています。傷害事件で一発収容というのは珍しいと思う方もおられるでしょうが、あの男は余罪があり、「こりゃ、反省させないといけねえなあ」と判断されたのでした。
この扱いの差は特殊性に因るものです。ヤモリ男は目を離すと壁を伝って逃走しかねないから、特別な措置――具体的には両腕に特別製のブレスレットを装着させられています。位置情報も記録されており、ありえない位置、特に高さにいると判定された時は、ブレスレットが装着者に対して電撃を放ちます。結果、壁を這いあがろうとしたヤモリ男はコロリと落ちるわけです。場所によっては重傷を負いかねない措置ですが、「悪いのは逃げようとしたキミ」と言わんばかりに、この危険性は無視されています。だってね、このブレスレットの開発者はあの大門博士なんですよ。恐ろしいですね。
この施設の存在が世間一般に秘匿されている理由は、テロの対象となり一斉に反社会的な異能者が放出されるようなことになっては困る、という理由の他に、イモリ男への措置のように人権を軽視された扱いが横行しているからです。
人権保護団体はどうした! という声に対しては、ゴツゴウ・ユニバースの日本人は「むしろそれくらいしないと平和を守れないよね」と考えている人が大半なので、見て見ないふりをしています。もちろん、ちゃんと弱者保護の立場で活動されている方は居ます。でも異能者は弱者とみなされず、「弱者かどうかなど関係なく人間は平等に権利を」とまで唱える人は少数です。怖いですよね。そして、そういう傾向があるからこそ、異能者の対応にはさらなる――えーと、口に出すのもはばかれる内容なので、我々も無視しましょう。
ともかく、今回の舞台はここです。そして、カメラは施設内の一室、中央にテーブルが置かれ、向かい合うように椅子が二脚ある部屋、に向けられます。面会室という名前が付いていますが、いわゆる取調室ですね。部屋の隅には、記録用に使われる机があります。そこで持ち込まれるノートパソコンによる記録が行われるのですが、今、そこは何も置かれていません。
席に腰かけているのは一人の女性。……あれ? どこかで見たような。――あ、彼女、『穴穿き』さんですね。トレードマークになっていたつばの大きな帽子を被っておらず、長めの髪もばっさり切られてイメージが変わっていたのですぐに気づきませんでした。いつか後輩刑事が指摘してくれた泪ボクロのおかげで思い出せました。
そう、彼女もこの施設に収容されていたのです。しかし、ヤモリ男のように地下の収容施設には入れられず、地上階の宿泊施設で寝起きしています。模範囚だからという扱いですが、実績がほぼない状態でこの扱いは半ば決まっていました。尋問の結果、抵抗する気がなくおとなしく収容されることを望んだからです。でも、もし彼女に脱出する気があれば、地下の牢獄に放り込んだところでおそらく止められません。厳重にすればするだけゴールに届く時間は稼げますが、精神操作系の能力を持ち、システムの穴を見抜く才能も持ち合わせているので、止められないんですよね。だから、本人の気持ちというのが最大の重しとなるのです。
幸か不幸か、家族を失った彼女は自由気ままに生きたいという熱意はなく、劣悪な状況でなければ、日々暮らしていける場所さえあれば抜け出る理由がないのです。まあ、一応、「出たら殺す」と通告されてはいます。
はい、そうですね。この施設の後ろ暗い最大のポイントはこの抹殺という究極の手段を行使することだったのです。
興味深いことに、穴穿きさんにはこの脅しがほとんど響いていないようです。幸せな家庭を失った彼女は、生きている意味が明確にないからでしょう。さりとて、進んで死にたい、とまでは思っていないようです。施設に入ってから、自殺を試みたことは一度もないからです。
自殺をする気力すらない、というわけでもなさそうで、与えられた課題作業だけではなく、この施設の職員の勤務体制、いわゆるシフト制に非効率さを感じた彼女は、その再構成を手伝っています。
はい、かなりおかしいですね。一応収容している人なのに、監禁している側が一部とはいえ指示に従っている構図ですからね。こういう点も、穴穿きさんが本気を出せば押さえられないという予測を裏付けています。
修正されたシフトが効率的だと感じた現場は、次の課題として給食制度の改善を提案します。他の収容者が求められている通常の作業はほとんど全てキャンセルされ、課題に集中できる環境が整うと、穴穿きさんは給食システムに関わる人たちの面談を要求します。
適材適所ができているかという確認だったようですが、その過程で、盗癖があった職員が洗い出され排除されます。そして、生じた欠員を埋めるための求人で面接も担当する予定になっています。
――って、思わず穴穿きさんの「あれからいろいろあった」をちょっと披露しちゃいましたね。これ以上続けると、最勝寺先生から文字通り「消される」可能性があるので、話を進めていきますね。
しかし、こうしてお伝えしたおかげで、穴穿きさんが本人は大してやる気がないんじゃないかという状態なのに、仕事を与えられて忙しいという状況はすぐに理解していただけたと思います。かつ、数カ月でこの状態なのですから、このまま一年も経過したら裏番ならぬ裏所長として、施設を牛耳ってしまいそうな予感すらしますね。
……え、「裏番って何?」ですか? 裏番というのは、裏の番長という意味ですね。……え、「番長って何?」ですか? そうですね。言われてみれば、おそらく昭和で死滅して平成の時代では存在していなかったかもしれません。当時の漫画を読んでみると、今でも確認できますよ。……いや、具体的な作品名はご迷惑をおかけするのでお伝えできません。大雑把にいえば、いわゆる不良カテゴリーに入る人の事で、現在のそれらの人たちに比べるとより仁義に重きを置いた――
♪ パンパンパパン、パンパンパパンパン……
>げっ! また、やってしまった。本来、映画版では流れないはずだったエンディングテーマ曲。私をせかして中断させるための運営スタッフの苦肉の策です。
結局、ほとんどシーンの描写をできないままでしたね。ですから、番長については「Webで検索!」してください。もしくは、先ほど言ったように当時の漫画を読んでみてください。温故知新ですね。
エンディング曲が流れる中、ギリギリまで進めてまいりましょう。
既に不思議に感じていた方もいるかもしれません。そう、収容者である穴穿きさんが面会時に先に待っているという違和感です。ドラマや映画、……中には実際体験された方もおられるようですが、いずれの場合も、面会者が先に待っていてそこに収容者が連れてこられる手筈になっているはずです。それなのに、しかも忙しいはずの穴穿きさんを待たせる存在、それが面会者だということですね。
はい、嫌な予感がします。Dかもしれません。既にこの施設の運営にDこと大門博士が関わっていることは調べが付いています。ですから、もし入り口からDがチラリとでも見えたら、今回は強制終了です。エンディング曲、グッジョブですね。
# ガチャ
>はい、扉が開けられました。鬼が出るか蛇が出るか――って、これじゃあダメなやつしか来ないってことになるじゃないですか! ――っと、こ、これは、予想外! てか、ああ、これでタイトル回収ってことですか。そうですか。
あ、視聴者の皆さんには失礼しました。私がお伝えしないと何が何だかわかりませんからね。聞いて驚かないでくださいよ。部屋にスラリと入ってきたのは、あの日本の誇るヒーロー『花鳥風月』その人です!
と、ここで時間切れです。中途半端極まりないですが、引きとしては良かったかもしれません。
では、また来週~。




