いつだって
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シヴァ達が部屋に入ると同時、水晶は輝き一つの映像を投影しだす。
ジジ……と焼けるような音を鳴らしながら投影された映像には黒い軍服をその身に纏い悠然と玉座に座る男の姿があった。
こちらを見つめる彼の名を、この世界で知らぬ者は一人としていない。
「まさかダンジョンマスター直々のお出迎えとはな……」
そこにいたのは混沌迷宮のダンジョンマスターであるミツル……王国を飲み込み、今では帝国すらも飲み込もうとするほどに強大な存在である魔物軍団の長だ。
「ガイザル帝国が皇帝シヴァ……一応歓迎するよ。さすがにあのやり方は、なんとかしてほしかったがな」
「すまんな、育ちが悪いもので」
かたや最強国家皇帝の王、かたや最強の魔物軍団の長。
おそらくこの世界で最も高い戦闘能力を持つ軍を従える彼ら二人の視線が交差する。
「シヴァ、一つ提案がある」
「なんだ?」
「これ以上ダンジョンを壊されるのは手間だ……どうせなら全ての決着を、一戦で決めないか? 混沌迷宮の軍団長と帝国最強の男、一体どちらが最強なのかを決めるのだ」
「い……」
「――提案に乗ってはいけません陛下!」
ミツルの言葉にそのまま頷きそうになったシヴァを、割り込む隙を窺っていたカランが即座に止める。
いいぞと言おうとしていたところだったので、思わず言葉を遮られたような形だ。
自分が求めていた戦いを、向こうから提供してくれるのならそれに越したことはないと思ったのだが……どこか悲鳴のように聞こえた彼女の声に、シヴァは思わず言葉を止めざるをえなかった。
少しだけ冷静になり、シヴァはミツルがその提案をした意味について考えることにした。
「……いや、そんなことをする必要はない。たとえお前がいる階層が何階層だろうが、そこまで突き破って進み続ければいいだけだからな」
ミツルがそのような提案をしてくるのは、間違いなく今自分達がしている強引な階層突破があちらに損害を与えているからだろう。
であればわざわざあちらの提案に乗ってしまう必要はない。
「それをされるなら、こちらも少しばかり意地悪な手を打たざるを得なくなる。こちらが提案しているうちに飲んでおくのが花だと思うぞ」
「できるものならやってみればいいが」
「アルフレッドを始めとして、魔物達を無限にけしかけるぞ」
「……うーん、それは面倒だな……」
シヴァが戦いが好きではないことの理由は、それがつまらないからだ。
こちらに向かってくる者達をいちいち倒さなければならないといのは、彼からすればもはや作業に他ならない。
作業感が強い戦闘が延々と続く光景を想像し、シヴァはげんなりとした表情を浮かべる。
「それに……」
そんなシヴァの様子をジッと見てから、ミツルはなんでもないように呟く。
だが彼が口にした言葉に、シヴァはかつてないほどの衝撃を受けていた。
「そうするのが俺も、そしてお前も一番面白いはずだぞ、勇者シヴァよ」
「――面白い、か」
ミツルを見てシヴァは、彼もまた自分と同じ穴の狢であることを理解する。
自分が強いのか、その配下が強いのかの違いはあるにせよ、彼らの境遇は驚くほどに似ていた。
おそらく彼もまた、軍を統べる立場でありながら、全力を振るう機会についぞ恵まれなかった。
そういえば戦っている時、何度もやられているにもかかわらずアルフレッドは終始楽しそうに笑っていた。
ひょっとすると自分は人というより、彼ら魔物と近しい考え方をしているのかもしれない。
シヴァは常に、疎外感を感じていた。
まるで自分がこの世界のものではない異物であるかのような感覚は、戦う度に強くなっていき、彼を退屈に染めていく。
勝つことがわかっている戦い、何をしてもこちらにダメージを与えられない敵。
そんなものが面白いはずがない。
だが今こうして、彼と本気で向き合おうとしている者達がいる。
本気で自分と戦い、そしてこちらを殺そうとしてくる者達がいる。
彼らであれば自分も……本気を出せるかもしれない。
考えた結果……シヴァは己の思うがままにすることにした。
「……いいぞ、やろう」
「陛下!」
「お前は手を出すな、カラン。これは王と王……帝国皇帝と魔王の間の戦いだ。それに……」
シヴァはくるりと後ろを振り返る。
カランはその表情を見て驚いた。
いつもつまらなそうな表情を顔に貼り付けているシヴァは、笑っていた。
それはカランがかつて見たことがないほどに上機嫌なものであり……。
「魔王は勇者が討伐する……物語はいつだって、そうやって終わるものだろう?」
カランは楽しそうにしているシヴァを見て……何も言わず、頭を垂れるのであった……。
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