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竜怜のハーフ  作者: ナウ
総集編
88/88

総集編・二章序

二章序の総集編です。

「ねぇ、お母さん」


「ん?、どうしたの?」


二人の親子がそよ風に吹かれながら草原を歩いている。

今日は暖かい。

魔界と言ってもオドロオドロしい環境や気候ではなく、人間界とそう変わらない。

そういう意味では過ごしやすいと言える。


母親は被っていた帽子を取り、眩しそうに空を見上げた。

平和だ、そう思う。


「ねぇ、ねぇ、お母さん」


「ん?、なあに?」


「話をして、あれの話!」


少年は母親から何度も聞いた話の続きをねだった。


それはある人間界の王国の話。

その王国は数百年にわたって続いた。

歴史の中で幾たびか現れる、恐るべき敵を倒す王国の英雄達。

少年はその話が好きだった。

自分も英雄になりたい!!。

剣を持って魔物や悪の国と戦い国を救う。

そしてお姫様と結婚する!!。

それを意気揚々と語る少年に母親は


「そうね、ウィナーならなれるわ・・きっと・・」


いつも息子にはそう言う。


「だって英雄達の血を引いているのだもの・・・」



母親の名はヤタシアーナ。

8年以上前に魔王軍によって国を滅ぼされ、魔界に連れてこられた人間界の王女である。


この魔界でヤタシアーナは、それまでの人生の全てを破壊されるほど心身共に蹂躙された。

一時は自らの命を絶とうと思える程に病んだが、お腹の中にいる命がヤタシアーナに死を思い留まらせた。


「私が今死ねば・・・お腹の中にいるこの子は・・・

この子に罪はない、何よりも私の血を引いている子供

栄光のアウランズ王国の英雄達の血を・・・」


ヤタシアーナに王国再建の思いが生まれた。

そう、それは僅かな希望であり夢だ。

そして一縷の希望と共に息子を生んだ。


産後赤子と共に広大な土地が与えられ、そこに館を構え住み続けている。

比較的は自由に動ける生活。

幸い欲しいモノは執事を通じて大抵手に入った。

この待遇にヤタシアーナは戸惑った。

魔王がどう考えているのか。

魔界の事は殆ど知らないが、もしかしたら我が子は王位継承もしくはそれに近い権利を有するのかも知れない。


そうした環境下ですくすくと成長していくウィナー。


ヤタシアーナは教えられる限りの様々な文化的な話を聞かせ、読み書き、算数、人間の歴史等々勉強を教える事に力を注いだ。

賢い子に育てさせる。

それがヤタシアーナに取っての生き甲斐。


しかし、二人の生活は突然の終わりを迎える。




「久しぶりだな」


魔王が口を開く。


ヤタシアーナとウィナーの緩やかな生活は魔王の使者が館に来た事によって終わり告げた。

ウィナー共々魔王の居城に連れてこられたヤタシアーナは到着と同時にウィナーと引き離され魔王の間に通された。


「お久しぶりでございます、魔王様

本日はお招き頂きありがとうございます

何かのご用事とお聞きし登城いたしました」


淡々と喋るヤタシアーナだが内心では怯えていた。

過去魔王によって付けられたら心の深くにある大きなキズは決して癒える事はない。

そもそもこの8年間何の音沙汰もなかった。

何故今更・・・・という思いでいっぱいだ。


「うふふ、久しぶりね」


聞き覚えのある声・・・。

はっとして声がした方を向く。


「ジ・・・ジーナ!!」


ヤタシアーナは憎悪のこもった目で見る。


「あら、怖い目・・そんな怖い目で見るなんて見ない間にアナタ随分変わったわね

母は強しと言った所かしら?」


笑みは絶やさないがジーナは少し目を細める。


「お母様、この人が?」


ジーナの後ろに控えていた少女がヤタシアーナを見てジーナに問うた。


「そうよ、ソフィー

これが魔界に連れて来られた人間のお姫様よ、元だけれど」


ジーナの言葉はヤタシアーナの心に突き刺さる。


「ねぇ、ソフィー

昔々ある所に王妃様とお姫様がいたわ

お姫様はものすごく上品で可愛いお姫様だったわ

その母親である王妃様も気品溢れるお美しい方だったの

でもある日魔界に連れてこられた二人は魔王様の子供を授かり、生まれた子供達はすくすくと成長しましたとさ

うふふ、おしまい」


そう言いクスクスと笑い出すジーナにヤタシアーナの頭に血が上る。

しかし気持ちをグッと抑え平静を装い静かに喋った。


「ご用件はなんでしょうか?

そういった話をされるためではないのでしょう?」


今度はソフィーがクスリと笑った。

ジーナの実の娘ソフィー。

魔族の中でも名門の家の男との娘で性格はクールであり、魔族としてのプライドはかなり強い。


笑んだソフィーにヤタシアーナが彼女に目を向けると丁度視線が合った。


ぞく・・・

ヤタシアーナはソフィーと目と合った瞬間、背中に氷を入れられた気分になる。


「話はあるわよ、二つね

どちらも貴女にとっては少し酷な話だけど」


そのジーナの言葉にヤタシアーナは眉を寄せた。


その時。


「お母様!!お姉さま!!」


甲高い少女の声が響き奥の部屋から出てきた。


「あらあらアリス、我慢できないのね

うふふ、今日はアナタに会わせたい子がいるの

アリス、自己紹介をしなさい」


アリスと呼ばれた少女の年の頃は7~8歳ぐらいだろうか?。

可愛らしい顔立ちと衣服を着こなしていて可愛らしい動作で口を開いた。


「は・・・はい、初めまして

アリスはお腹が同じの妹です!!」


「・・・え?」


ヤタシアーナは少女が何を言っているのか分からなかった。


「お腹が同じ?、この子は一体何を?」


「分からない?

お腹が同じと言うのは母親が同じで父親が違うって事よ

つまり、貴女の母親が生んだ魔王様の娘がアリスなの」


「・・・あ」


ヤタシアーナは少し考えて理解した。


「・・・そうだ

お母様が無事出産したというのは聞いた

しかしその後私も出産し、以後はまったく会うこともなかったし、話もまったく聞かなかったために半ば忘れていた

この女の子が・・・」


「アリス、昨日言ったお母様の言い付けは守っていますか?」


「は・・はい、お母様!!」


答えるアリスにヤタシアーナは絶句した。

アリスはジーナをお母様と言った。

ジーナをお母様と・・・。


「な・・・なぜアナタがアリスのお母様なの?

なぜ・・・・?」


それを聞いてジーナの口元が笑む。


「うふふ、乳母である私はアリスの母親も同然よ?

私の娘であるという事はソフィーの妹でもあるのよ

だから私はお母様だしソフィーはお姉様なの」


「母は・・・お母様はどうしたの!!

お母様はどうなったの!!」


ヤタシアーナが気にしていた事。

8年間ずっと心配していた自分の母親の事を口にした。


「お母様?、魔王様に可愛がられて壊れた王妃様ね

壊れたのに子どもを育てられる訳ないでしょ?

だから怪物に引き渡して処分したわ」


ヤタシアーナの頭は真っ白になった。

信じられない言葉に絶句する。

無事だと思っていた。

無事だと思おうとしてきた。

けれども実際は・・・。


「ひ・・・・酷すぎる

お母様が・・な・・なぜ・・なぜ・・こんな・・」


ヤタシアーナは最早何も言えずに涙を流しながらその場にへたり込む。

そんなヤタシアーナを見下しながらジーナは言う。


「ああっと・・そうそう、もう一つは・・」


笑みながらジーナはもう一つの件を楽しそうに語った。





来客の間に通されたウィナーは中央にあるテーブルの椅子に座り退屈していた。


出された飲み物を飲みお菓子を食べたが、それ以後はただ椅子に座るか何もない広い殺風景な部屋をウロウロするぐらいである。


「お母さん、遅いな~」


お母さんの用事で来たこの城。

ウィナーは勿論、城を見るのは初めてである。

といっても知識としては持っている。

けれど実際に見ると想像以上に大きな建物だったため、驚き興奮した。


ガチャ


来客室の入り口の扉が開かれ、中に入ってきたのはお母さんと年齢が同じぐらいの女性であった。


「ご退屈でしょ、ウィナー様」


「あれ?、僕の名前を知ってるの?」


「もちろんですよ」


「あ、こんにちは、初めてまして」


「こちらこそ初めまして、私の名前はプリーカナです」


「あ、ウィナーです」


「はい、存じております

ご退屈のようですので、退屈しのぎにお城の中を少し見てみませんか?」


「見せてくれるの!!

あ、でも、う~ん」


「どうしました?」


「お母さんに相談しないと怒られちゃう」


「ああ、大丈夫ですよ

お母様には連絡を取ってありますの

まだご用事は暫くかかるそうですから

ウィナー様に城の中を見せてあげて下さいと言われております」


「そうなんだ!!

じゃあお願いします、おばさん!!」


「お・・・おば・・・

はい畏まりましたではご案内いたします

それと私の事はプリーカナ、もしくはお姉さんとお呼び下さい」


「うん、お姉さん

それと、一つお願いがあるんだ」


「何でしょう?」


「その・・丁寧な喋り方は・・すごく苦手なんだ・・」




城の部屋をいくつか案内されてウィナーの好奇心は膨れ上がった。

その中でも一際目を輝かせたのは邪竜絵画の部屋だ。

ずらりと並べられた絵画には戦士達と邪竜との戦いが描かれている。


「遥か昔のお話よ、邪竜は世界を滅亡させようと暴れまわった

魔界、竜界、精霊界、人間界といった各世界の勇者達は力を合わせ邪竜に戦いを挑みこれを滅ぼした

魔界の暗黒騎士リジャールは邪竜の右手を切り落とした英雄として称えられ、邪竜滅亡後は邪竜によって荒廃してしまった魔界を復興させ魔王として君臨した

・・・・というお話」


「凄い!!」


プリーカナの語る物語に驚き目を輝かせるウィナー。


「暗黒騎士に邪竜なんて初めて聞いた、暗黒騎士ってカッコいいなぁ~」


「そうよ、カッコいいのよ」


なぜか得意げなプリーカナ。

その時


「み~つけた、ふふふん」


赤いドレスを着た少女が此方に歩いてくる。

年の頃はウィナーより少し上ぐらいか。


「その子がウィナーちゃんね」


「ウィナー様よ、レイシア」


「分かってるわ!!

初めましてウィナー様、レイシアです」


「あ、初めましてウィナーです」


「知ってるわ」


「あ・・・うん」


突然現れた少女はプリーカナの娘、レイシアである。

ウィナーはレイシアのいきなりな登場にドキドキした。

今まで同年齢や近い年齢の子と殆ど接した事がないから緊張する。

その相手が女の子なら尚更である。


「と、いうかお母様!!」


「何です、レイシア?」


「思いっきり可愛いんだけど!!

人間の混血だと言うからブッサイクな子を想像してたんだけど!!

将来絶対いい男になるよ!!、こんな事ならもっとちゃんとした服装してくれば良かった!!

髪型変じゃない?

あーーーもぅ!!」


バタバタ慌ただしく喋りまくるレイシアにウィナーは呆気に取られ、プリーカナは目を伏せこめかみに指を置く。


「まぁ、あれよ!!」


「え?」


「何はともあれ宜しくね、ウィナーちゃん!!

お友達になりましょ!!」


ウインクしながらレイシアが手を差し出してきた。

ウィナーは困惑しながらもその手を取る。


そんな光景を見ながらプリーカナは、ウィナーを見て笑んだ。

娘の婚約者であり、これから母親として接する事になる魔界の王子に多大なる期待を持って。

この二章序はアリスとウィナーという魔族と人間のハーフの子供達が出てきます。

今回の二章序ではまだ小さな子供の頃の二人ですね。

次の二章ではアンデット戦争から15年近く経った時代が舞台であり、いよいよ主人公であるルセルが登場してきます。

一章はルセルの親の話だったのですが次は本当の主役の登場!…みたいな意気込みはありません。

アンデット戦争が結構スラスラと書けたのに対して次なる戦いは中々スラスラとは行きませんでした。

何せ私は無類の面倒くさがりであり無類の飽き性なもので。

アンデット戦争だけで力尽きちまったよ…みたいな。

いや、もうアンデット戦争だけでいいんじゃないかな?みたいな。

何回も書きますが元はエロのノクターンから始まった小説。

エロネタっぽいのも描けたし満足したからもうそろそろ…みたいな感じで。

つまり二章は蛇足じゃないかみたいな。

ただ、どうこう言っても最初から二章はあるテーマというか考えで書いていました。

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