表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜怜のハーフ  作者: ナウ
NEXT2
78/88

アリスとエクシーヌ2

エクシーヌはベッドの上に座ってカトゥーラに抱きつき舌で片方の耳を舐めていた。

そんな中、若い女が部屋に入ってくる。

部下のルルシナだ、年齢は17歳。


「なに?、ルルシナ」


カトゥーラの耳を舐りながらエクシーヌはルルシナに視線を向けて聞く。


「はい、お忙しい中申し訳ございません、お客様がお越しです」


「誰?・・・と言ってもホイクールね」


「はい」


「通して」


「はい」


そう言ってルルシナは出ていく。


ホイクールが来たという事は姉アリスの答えを持ってきたという事だ。

答えはどちらか・・・流石にエクシーヌもそれが不安になりシートをキュッと掴む。

そしてホイクールが部屋に入ってきた。


「こんな場面で悪いわね」


「いえ・・・構いませんよ」


女同士のまぐわい現場を目にしてもまったく動じないホイクール。

それにエクシーヌは苦笑した。


「それで、今日は?」


「はい、例の答えを持って来ました」


「それで?」


「はい・・・」


その一瞬の溜めにエクシーヌは心臓の鼓動を速くする。

その一瞬、この一瞬はとてつもなく長い一瞬に感じた。


「アリスは・・・」


「お姉様は?」


「それは・・・」


「それは?」


勿体ぶった言い方だ。

駄目なら駄目ときっぱり言って欲しい所だ。


「契約するのに条件があるとの事です」


「え?」


「契約するのに条件があるとの事です」


「・・・それは何?」


「契約の前にアリスは貴女に会いたいと」


「私に?」


「はい、どうしますか?」


「・・・もしかして私の事を喋った?」


「その通りです」


「どこまで?」


「貴女の名前と出自です」


「その上で会いたいと?」


「はい、つまり契約はOKという事ですね」


「・・・・・」


エクシーヌの体から力が抜けた。

ホイクールが暗い顔をして話すものだからてっきり契約不成立、NOと思った。


「勿論貴女が会う気がないのなら契約は不成立になりますが」


「会わないと思う?」


「思いませんね」


「私からはOKよ、いつなら良い?」


「では三日後でどうでしょう?」


「それはお姉様が指定したの?」


「はい。そうです」


「ならばそれで良いわ」


「分かりました、では早速戻って伝えます」


「お願いするわ」


「それではこれで」


そう言うとホイクールは部屋から出ていった。


「お姉様と三日後・・・」


エクシーヌはカトゥーラの首筋を舐めながら何を着ていこうかと頭を巡らせた。






-人間界のアウランズ地方-


「もうすぐ来るのか?、アリス」


「そうよ、ピックミー」


アウランズ城内の客室においてアリスはピックミーと共にエクシーヌを待つ。

今日まもなく来る筈だ。

アリスにとっては妹にあたる子。

父親は違うが母は人間であるアリンネルだ。

生死不明だった母は黒竜に連れ去られその子を生んだ。

そして生んだ際に母は死んだ。

アリスとしては微妙な経緯だが本当に妹ならば妹の中にもアウランズの血が流れている事になる。


「来られました」


「通せ」


「はっ」


近衛隊長は敬礼し部屋を出る。

少ししてホイクールとレトルダ、そして全身をすっぽりと黒いローブに身を包んだ者が入ってきた。

顔はフードに隠れていて見えないが口元は少し笑んでいるように見える。

背丈はアリスと同じくらい。

ただ何か異様な気配だけは伝わってきた。


「はじめまして」


アリスはその者に挨拶をした。


「・・・・・」


フワッとした動作でその者はフードを左右の手で捲り上げる。

隠れていた素顔が露わになった。


「初めまして、アリスお姉様」


その可愛らしい顔で言い笑む。

それを見てアリスは「ほぅ・・・」と思った。

想像以上に可愛らしい顔だ。

事前にホイクールからは聞いていたが思った以上に・・・。

ただアリスに似ているかと言われればそれは微妙である。

どちらかというと似ていない。


「どうぞ」


手で席を薦める。


「それでは」


先に動いたのはホイクールでレトルダがそれに続く。

そしてエクシーヌが最後に座った。


「さて、何から話しましょうか・・・、まずは貴女がエクシーヌね」


「はい、そうですお姉様」


「お姉様ね・・・貴女は本当に人間界から連れて来られたアリンネルの?」


「はい、私のお母様は人間界から連れて来られたアウランズの王妃アリンネルです」


「・・・そう」


その話が本当かどうかは分からない。

別に血の連りがあるからといって特別に何かを感じたりはしない。

ただ何か不思議な感じはする。

それは単に血の繋がりがあると分かっているから感じる錯覚かも知れないが。


「エクシーヌ、会えて嬉しいわ」


「私もです、お姉様」


「母のお墓は?」


「あります」


「そう、一度お参りしたいわね」


「是非いらして下さい、歓迎いたします」


「そうね、お願いするわ」


「はい」


「・・・・・」


どうにも歯切れが悪い。

単刀直入に行きたいが何か邪魔するものがあって切り出せない・・・が今は感傷に浸っている時でもない。

アリスは皆が紅茶を飲んで一息ついたタイミングを見計らって言った。


「さて、本題に入りましょう」


「はい」


「西方にいる人間達をこちらに移動させたいの、力を貸してもらえる?」


「勿論です」


「具体的には?」


「西方のその場所に行ってゲートを作ります」


「大勢を五回程度で通せるぐらいの大きさと聞いたけど?」


「はい、そのぐらいを想定していただければ」


「大したものね」


「これだけの力に目覚めたのはごく最近です」


「そうなの?、小さな頃から天才だと思っていたけど」


「小さな頃はそれ程でもありませんでした」


「なるほどね」


確かに小さな頃から天才の子もいるがある時を境に急に力を付けて頭角を現す子もいる。

それが何によってそうなのかは分からないがエクシーヌの話が実際に話の通りであったとしても不思議ではない。

どちらにしてもそれはアリスには関係の無い事だ。

なぜならアリスは子供の事に天才でもなければある日突然力を覚醒させたなんて事も今まで一度としてないから。


「そんな力が持てて羨ましいわね」


「羨ましい・・・ですか?」


「そうじゃない?、魔界の中でも類稀な力を持っているなんて凄いわよ」


「私は・・・アリスお姉様の方が凄いと感じます」


「私が?」


「だってそうじゃないですか?、死んだ事にして魔界を出て人間界でアウランズ復興に動いて・・・古代種スライムを使って魔王軍を倒し・・・更に竜族を味方にしてスライム族と交渉して・・・なんて普通はできないと思います」


「ああ、それね・・・」


アリスは苦笑した。

確かに言葉にして並べてみるととんでもないように聞こえるが、一つ一つを紐解いてみると大した事はやっていない。

死んだ事に・・・も単に逃げただけだ。

アウランズ復興も昔からの悲願を成就するため・・・。

魔王軍にしてもギリギリの敗北必死の戦いを冒険者達と共にやっていただけ・・・。

竜族を味方につけた・・・とは聞こえがいいが昔偶然に出会ったルセルとの出会いが奇跡を生んだだけだ・・・。

古代種スライム達に至ってはそもそも事故みたいなもので・・・しかもその存在は魔王軍よりも厄介ときている。

そんなこんなでアリスの活動はまったく誉められたものではない。

まぁ、唯一の実績とするならば軍を率いてマクシトイとの戦いに勝利した事ぐらいか。


「実は大した事はやってないのよ、実際はボロボロの中何とかしのいでただけだし」


「だとしてもアウランズをここまで復興させた事は凄いと思います」


「ん・・・そう?」


「はい」


このエクシーヌという子はどういう子なのか・・・がイマイチ掴みかねているが少なくとも悪い子ではなさそうだ。

しかしその瞳の中にある黒い輝きをアリスは見逃さなかった。

エクシーヌは・・・この子は父親と容姿こそ違え自分にどこか似ている部分があると思える。

心の中にある冷酷さのようなもの。

アリスが若い頃に持っていたモノをエクシーヌも持っていると。

アリスはルセルとの出会いでそれらは随分と薄くなった・・・というかある程度封印できたがエクシーヌはどうなのか・・・が分からない。

あるいはそのまま成長している可能性もある。

だからあえて聞いてみた。


「エクシーヌ、貴女何か心の中に黒い光を持っているわよね?」


「・・・黒い光ですか?」


「私には分かるわよ、かつては私も持っていた黒い光」


「お姉様は・・・お姉様も持っていたのですか?」


「ええ」


「それは・・・今は持っておられないのですか?」


「あるわよ、でも今は少しだけ封印してる」


「それは・・・なぜですか?」


「嫌われたくない人がいてね、それで・・・」


「好きになった方がいる・・・という事ですね?」


「そう」


「そうですか、確かにそれなら少しは封じておこうという想いも・・・分かります」


「貴女はどう?」


「私は・・・多分封印は無理だと思います」


「好きな人は?」


「男の人・・・ではいません」


「それは・・・」


それでアリスはエクシーヌの事が一つ分かった。

エクシーヌから感じた不思議な感覚はそれに由来していると。


「分かったわ、エクシーヌ」


「はい、ありがとうございますお姉様」


にこやかに言うエクシーヌ。

エクシーヌはアリスを改めて凄いと感じた。

今の僅かなやり取りで自分の事を理解してくれた姉はやはり凄いのだと。


「んじゃ、ここからは気を楽にして頂戴」


「はい」


アリスの言葉とエクシーヌの返答にホイクールは手を少し上げて言う。


「それでは我々はこれで」


「あれ?、ホイクールもう退散?」


「エクシーヌと色々話があるでしょうからね」


「まぁ、確かに」


「では我々はこれにて」


そう言うとホイクールとレトルダは部屋から出ていく。


「私も出るぞアリス」


「ありがとうピックミー」


ピックミーも場の空気を読んで部屋から出た。

三人が部屋を出た後で自分とエクシーヌのカップに紅茶を注ぐアリス。


「ありがとうございますお姉様」


アリスの動作を見ながらエクシーヌは言う。


「でも本当に驚いたわ、私に妹がいたなんて」


「すみませんお姉様、本当はもっと早くにお会いしたかったのですが・・・」


「別に構わないわよ」


紅茶を飲みながらアリスは色々とした話をした。

その中に当然ながらウィナーの話も含まれる。


「ウィナーは知ってる?」


「はい、大体の事は」


「今はラミュロス国境地帯に左遷されているみたいね」


「知っています」


「エクシーヌは何でも知っているのね」


「色々調べましたから」


「そう、ならウィナーの家族も知っているわよね?」


「はい、色々と・・・」


「色々と・・・ね」


少し言いにくそうにしているエクシーヌにアリスはぶっちゃけて話そうと思った。

遠慮していてはエクシーヌと本音では話せない。

アリスに取っては本音で話せる妹こそ欲しいのだ。


「遠慮は無用よエクシーヌ、私も黒い心は持ってるわ、大抵の話は許容範囲よ」


「えーと・・・」


少し躊躇ってからエクシーヌは深呼吸した。

途端に少々雰囲気が変わり顔つきも先ほどまでとは違う感じに変化した。


「それなら・・・お姉様、お姉様には本当の私をお見せします」


「そう、それよ、本当の貴女を見せてエクシーヌ」


「何から話せば宜しいですか?、お姉様」


「そうね・・・まずは・・・」


アリスは笑みながら一つ一つ気になる質問をエクシーヌにしていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ