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竜怜のハーフ  作者: ナウ
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【魔界】真なる魔王[アトニーノ]

「金を返しにきたよ!」


いきなり乗り込んできて大声で喚く老婆

その横には若い女が横に立ち、老婆を見守っている


アトニーノは目を細めその老婆を見た

リシープは見ていた本を閉じ、同じく目の前に現れた老婆を見る

周りにいる研究員達はあたふたとリシープと老婆を交互に見やる


「・・・・・」


一呼吸後、にこやかな笑みでリシープは手を広げ歓迎の意を表した


「これはこれは師匠マスター、お変わりなく」


リシープのその言葉にマスターと呼ばれた老婆は鼻を鳴らす


「お変わりなくだって?、変わらないのはお前たちさ、何時まででも小娘のような姿で気持ち悪いったらありゃしない」


老婆の辛辣な言葉がリシープとアトニーノに飛ぶ

若さを保つ薬のお陰で2人はもうじき40歳になる年齢にも関わらず今だに20歳前後の容姿を保っている


「あは、相変わらずですねマスター」


老婆の悪態にリシープは笑む


「まぁいいさ、今日は借りていた金を返しにきたよ」


「あら、お金持ちになったのですか~?」


「ちょっとしたアテでね、まったく・・・この年になるとまとまった金すらマトモに手に入りゃしない」


「まぁ、どんなお金でも返して貰えれば何でもいいですけどね~」


「そうさ、どんな金でも金は金さ!」



どんな金でも金は金

そう言い切るこの老婆の名前はマディ

かつては魔界一の美貌の持ち主だったと豪語して憚らない

そして魔界中を荒らし回ったという怪盗であり稀代の悪女である

もっとも、あくまで本人の口から聞いただけの話なので信憑性はどうだかであるが

マディが暴れ回っていたのは今から50年以上も昔の事であり、リシープやアトニーノが生まれるずっと前の話だ

だからリシープ達がマディのその全盛期とやらを知っている訳もない

しかしマディという名前は年配の者は知っていたりする

ただし伝説の怪盗としてではなく、ロンデニー侯爵と伝説の秘宝をめぐり闘りあった女としてだ

ロンデニー侯爵とは当時魔界の魔王支配領域外において相当な力を持っていた人物として記録されている

その侯爵と戦ったマディが目の前にいる老婆と同一人物という保証はないが、もしその伝説のマディが生きていればどちらにせよ年老いた老婆なのは間違いない


「レイン、金を」


マディの言葉に傍に控えていたレインと呼ばれた少女は黒いケースを重そうに引きずりながらアトニーノの元に持っていき、ドンっと目の前に置く


「まさか開けた途端爆発なんて事はないわよね?」


アトニーノが目を細めてレインに聞く


「そんな誰でも考えつくような洒落た事をマスターがする訳がありません」


「なるほど」


レインの答えにアトニーノは感情のない返事をし、そしてケースに手をかけ開けた


「・・・確かに」


中身を素早く確認し、アトニーノはケースを閉める


「貴女がレインね、噂は聞いているわ」


「どんな噂ですか?」


「優秀だと聞いているわ」


「貴女程ではありませんよ、アトニーノ」


レインの返しにアトニーノは少し笑んだ



レインは現在17歳

13歳の頃にゾンビを操る秘術を修得し、その才を称えられた

そして15歳の時にマディと出会い弟子入りする

その後はマスターと共にとある目的の為に魔界各地を探索する日々を送っている


「想像以上に可愛らしいわね」


アトニーノはレインの容姿を見て少し顔を綻ばす


「あんたにはやんないよ」


そんなアトニーノにマディの尖った声が飛んだ


「そんなつもりでは・・・」


目をレインからマディに移しアトニーノは声を出す


「私にはその子が必要さ、この老いぼれの目となり耳となる子がね」


「それは残念です」


レインを見ていた顔とは違って無表情で言うアトニーノ

レインを自分の弟子として迎えたいと思ったが、マディの反対にあっては仕方がない

老いたりとはいえマディはリシープやアトニーノの師匠でもあるため、その意は無視出来ないからだ


「あは、やっつけられちゃったわね、アトニーノ」


そのやり取りを見ていたリシープが言う


「そうね」


そっけなく言ったが、心情は複雑だ

アトニーノが気に入った子は弟子として研究員入りさせる

才能が高ければ高いほど是非とも自分の手元に置いておきたい

自分が欲しいと思ったものは何がなんでも手に入れたい性分だ

目の前にいるこのレインも


「金は確かに返したよ、ではね」


背を向けさっさと帰ろうとするマディにリシープが尋ねる


「それでマスター、探し物は見つかったの~?」


「・・・・・」


立ち止まり、少し考えてマディは振り返った


「怪しい場所は幾つかあるさ、その中でもそうじゃないかと思われる所は見つかった」


「それは?」


「リンゴッズドさ、あそこは昔から誰も足を踏み入れていない地と言われているからね」


「あー・・・リンゴッズドね、確かにあそこは誰も近づかないわねん」


「言っとくが、これはここだけの話だよ」


「分かっていますよ~」


「『真なる魔王』の遺跡は私が長年追い続けてきたモノだからね、誰にも渡す気はないよ」


「まぁ、私達は興味ありませんし~」


「ふん」


鼻を鳴らしてマディは遠い昔を思い出した



マディが言う真なる魔王とは、とある伝説に基づく話だ

遥か大昔に魔界全土を支配した魔王がいた・・・という

その魔王は魔王の中の魔王と呼ばれ、真魔王としと魔界に君臨した

しかし真魔王の死後直ぐに統一魔界は一気に崩壊した

各地で真魔王の後継者を名乗る者達による群雄割拠の時代が始まったからだ


だが、現代の魔界の歴史書に真魔王の記録も群雄割拠の時代も記録にはない

魔界の神話ですらそれに関する似たようなものなく、その伝説はマディが手に入れた太古の石版に記されたモノがあるだけだ


その石版は3つある

1つは今いった真魔王と死後の群雄割拠の話

2つ目は真魔王は後世に魔王神と呼ばれ王達から崇められた事

そして3つ目は真魔王の死についてである


全魔界を治め、あらゆるモノ手に入れた真魔王も年齢による死にはいかなる魔法を持ってしても生を長引かせる事は出来なかったようだ

王は自分の持てる力の全てを箱に封印し死の眠りについた

その封印された箱は城にあり資格のある者にしか開ける事は出来ない

しかしやがて箱を開け、王の力を手にする者が現れる事が記されている

一種の予言だ


マディは若い頃にこの石版を巡ってロンデニー侯爵と幾度にも渡り戦い、そして侯爵を倒して手に入れた

その石版に記されている伝説には不思議な魅力があった

内容からデタラメであっても不思議ではないが、マディはそれが遥か昔の過去の時代に実際にあった事と半信半疑ならがも一応は信じた

最初それは宿敵ロンデニー侯爵との戦いを経て、得たモノがデタラメであってたまるか!!・・・という意地から出た事でもあっただろう

しかし追っていく内にそれは確信に変わっていく


真魔王の存在と、その城の遺跡は必ずあると信じ50年間魔界中を探し回ってきたのである

当然金は浪費した

若い頃は金などその美貌と悪知恵で幾らでも手に入ったが、年を取るとそうもいかない

最近では資金が底をつき、やむなく元弟子のリシープに借りたのだ


しかし最近起きた人間の女達の処刑で返す算段がついた

人間界から連れてこられた奴隷の女共が王女の裏切りから処刑される事を聞いたマディは、死んだ人間の女達の死体を引き取り、高額で売るという方法を思いついた

普通なら死体など欲しがる者なぞいないが、丁度欲しがる奴がいたからだ

スケルトンウォリアーを作る為に死体の高額買い取りを行っていたザグーである


マディは知っている政界の魔族達にコンタクトを取り、死体を引き取る事の了承を得た

何のためにザグーが大量のスケルトンを作る必要があるのかは知らないが、女が処刑される度にマディとレインは死体をせっせと運びザグーに売り払ったのだ

その利益は借金返済に当ててもまだお釣りが来るほどだった



「話は終わりさ、ではね元弟子達」


「あら、泊まっていかれればいいのに、マスター」


「はん、こんな陰気な屋敷に泊まっていけだって?」


「美味しい食事と寝心地の良いベッドを用意しますわよ?」


「不味い食事とダニだらけの布団なんぞまっぴら御免だね」


「あらあら、それは残念」


マディの言葉に笑むリシープ


「行くよ、レイン」


「はいマスター」


マディの言葉にレインは答え、2人は部屋から出て行こうとする


「では玄関までお見送りに・・・」


「いらないよ」


ピシャリと言うマディ

そして2人は出て行った


「・・・・・」


立っていたリシープは椅子に座る


「相変わらずね~マスターは」


リシープの呆れ声にアトニーノは無言で自身の髪を撫でる


「気に入っちゃったの~?」


「ええ、もの凄く」


「美味しそう?」


「ええ、とても」


「あは、でもマスターの弟子だから手は出せないわ」


「なんだけど・・・手に入れたいわね」


「そんなに~?」


「ええ、今すぐ欲しいぐらいに」


「アトニーノにそこまで言わせるなんて余程ね~」


いつもの冷静沈着さを欠き、何か落ち着かないアトニーノを見てリシープは苦笑する


「今すぐは無理よ~、でも少し手は打ってみるわ」


「お願いね」


「はいはい~、期待せずに待っておいて~

それはそうとホイクールちゃんは例の子の所?」


「でしょうね、あちこち飛び回っているみたいだから」


「魔界の深部に言ったり人間界に言ったり忙しないわね」


「色々と首を突っ込みたいらしいわ」


「やっぱりレトルダと一緒~?」


「そうね、あの2人は仲が良いから」


「ん~、どんな仲なのかな~って想像するのものすごく楽しいわ~」


「ん、まぁ・・・」


「・・・・・」


リシープとアトニーノは互いに顔を見合わせ笑い出した

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