↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜怜のハーフ  作者: ナウ
NEXT
68/88

【魔界】大量殺処分[デルロイ]

デルロイに取ってはこの2年間は非常に慌ただしかった

何が忙しかったか?

振り返ってみるとまず2年前の魔王の娘の生存である

7年前に精霊界で起きた【炎の祭典】において、命を落としたとされたアリスが何故か生きていた


2年前は丁度デルロイも奴隷として使える人間の男の子確保の為に人間界に赴いていた時の話である

同じく人間界に来ていたアトニーノの魔王軍敗退の可能性を聞いてデルロイ魔界に急遽帰国したが、その直後古代種のスライムが突然復活し魔王軍と激突した

この戦いで総督ターリィナ及びターリィナに付き従った魔王軍は全滅した


古代のスライムの復活だけでもいきなりの事で訳が分からないが、死んだと思われていた王女アリスの生存とそのアリスが古代スライムと手を組んで魔王軍に戦いを挑んだという話で最早何が何だか判らない状況である

しかしそれだけならば政治の話であり、デルロイには直接関係はない…筈であったが思わぬ所からその問題は飛び火してきた


問題はやはりそのアリスに起因する


魔界を裏切ったアリスへの制裁が王宮内で考えられたが、しかし人間界にいる事と古代種スライム達と手を組んでいる事でまったく手出しが出来ない

王代行のラーダンはそのままこのややこしい問題を有耶無耶に終わらせようとしたが、納得できない民衆は騒ぎ出した

その騒動は各都市に伝播し、瞬く間に大騒動に発展する

はっきりとした事を言わず逃げ回るラーダンに業を煮やした民衆により退位さえ城下で叫ばれるようになり、弱ったラーダンはエミリアの策で各情報機関や識者を使って「悪いのは人間である」という旨を民衆に伝達させた

これにより様々な人々が様々な解釈を展開し、それは次第に「悪いのはアリスの中に流れる人間の血だ」という論が強まった

それと同時に「人間は穢らしい存在であり、魔界にいる人間は全て殺してしまえ」という論調になっていく

民衆の怒りを静めたいラーダンはその流れに乗り支配領域内にいる人間を全て殺す事を命じた

しかしこれにはある問題が浮上した

魔族と人間のハーフはそれに含まれるのか?・・・という点


当初の予定では何ら権利のないハーフもまた殺処分対象に考えていたラーダンだったが、ここでは貴族や富裕層の反対を受けた

上層の人々の中にはS2と呼ばれる奴隷の二世を所有する者達も多くいるからだ

せっかく高額で買った奴隷を上層は手放す気はない


これには困ったラーダンだったが、上層の人々と衝突する事を避けたいエミリアはS2は処分の対象外として扱う方が良いとラーダンに耳元で囁いた

そのエミリアの案を採用したラーダンは民衆にこう伝えた


「魔族の血を引く者には罪はない、アリスの狂気は人間の血によって引き起こされたモノだ

よって我々が憎むべきは人間の血であって魔族の血も引くハーフではない、真の敵は人間なのである

よって今回の件では魔族の血を引くハーフは対象外とする」


これには当然の如く賛否両論あった

結構無理矢理な話だが、敵は人間であるといういかにも簡単で分かりやすい話と、魔王支配領域内にいる人間を根こそぎ殺す事の確約により一応民衆は落ち着きを取り戻し騒ぎは下火になった


しかしデルロイや会社に取っては一大事である

人間界から連れてきた第一世代であるS1の処分…それはまだ良い

既に一番若い者でも30代中頃以上であり、奴隷としての需要は少なくなっている

問題はそこではなく、人間牧場で養殖させている人間達だ

喰屍鬼グールの食料として飼っている人間達もまとめて処分しなければならない

これではグールの主食がまた無くなってしまう

これが最大の問題であった


社長のドルチェはラーダンやエミリア、有力貴族の間を駆け回り何とか免除して欲しいと掛け合ったが民衆の怒りを恐れるラーダン達はドルチェの願いを一蹴した

それでも何とか手はないかと駆けずり回り、頭を捻って考えてみても良い答えは見つからない

いっその事魔王支配領域外に牧場を移したらどうかという案も出たが、そうこうしている内に王の命による人間狩りが始まってしまった

勿論処分対象が全ての人間である以上、エウンジークから連れてきたS1の人間達だけでなく人間牧場も例外なく対象となり、従わなくては処罰される

そして飼っていた多くの人間が全て殺処分されてしまったのだ

ここに至ってドルチェの父チェルバンから始まった人間を増やす牧場事業は消滅してしまった


そのショックと駆けずり回った過労によりドルチェは倒れ、そのまま意識が戻る事なく死んだ

新たなる社長には片腕であったデルロイが就任

これにより会社は大きく変わる事になる


まず始めに着手したのはグールの一斉解雇だ

元々グール族の頭の悪さに嫌気が差していたデルロイは同族を会社から一人残らず締め出した

その不当解雇に抗議したグール達だったが、デルロイはならず者達を雇って抗議しに来たグール達を袋叩きにした

そして解雇した無能なグール達に代わって魔族を雇用する

その多くは女だが、優秀な者は男も入れる

これによりデルロイが夢に見た自分がトップに立ち魔族が働く会社が実現したのだ


「全てのS1の処分が終わったようです」


レリーナが机の椅子に座って書類にペンを走らせているデルロイにそう告げる


「意外と時間が掛かったな」


ペンを置き、デルロイはレリーナを見た

レリーナももう29歳ではあるが、アトニーノから貰った薬品によりその顔や肌は若々しい


「探し出すのに苦労したようです」


「そうか、まぁ魔王領内も広いからな」


「はい」


そう言うとレリーナは持っていたカバンから書類を取り出した


「こちらも探すのに手間取りました」


「見つかったか?」


「はい、取りあえず使い物になりそうな者をざっと10名」


それを聞いてデルロイは苦笑した


「たった10名か、厳しいな」


「正直この10名でもかなり妥協した数です」


「どれ・・・」


デルロイは手を伸ばす

レリーナは近寄りデルロイに書類の束を手渡した

書類には名前や年齢、経歴、親の名前、本人写真が貼られている

これはS1から生まれた男の情報だ

大抵奴隷として肉体労働系に送りこまれるが、今回はそういった男の奴隷の捜索であった

肉体労働として売られた男はかなり厳しい労働下に置かれ酷使されていた

それ故に事故で死ぬ者、過労で倒れ死ぬ者が多い

それに一カ所で働く場合は殆ど無く、各地の現場を転々とする事が多い為追跡には骨が折れる

そういう意味では誰がどこにいるのかという記録がある女達とは異なるのだ


「せっかく探しても使い物にならなければ意味がない」


「はい、正直時間が掛かっても最初から教育した方が良いかと」


「S3だな」


「はい」


S3はS2から生まれた子供達だ

基本的にはS2から生まれた女を指すが、男も商品化するのを念頭に置けば名称は分けた方が良いと感じる

このS3は今だ赤子や幼少の者達ばかりで奴隷としては使えない

そうした幼児達を教育し、魔族の要求に応える質の高い商品として仕上げて提供するのがデルロイ達の仕事だ


「男児の部門はどうだ?」


「はい、まだ結果は出せていませんがあと数年でお見せ出来るかと」


「良質な感じか?」


「魔族の中でも比較的優秀なモノを使っていますので、容姿は悪くない男の子が多いです」


「知能は?」


「それはまだ・・・」


「そうか、頼んだぞ」


「はい、スタッフ一同、全力で取り組んでおります」


この部署においてはレリーナも大々的に関わりを持っていて、男の子の選別に決定権がある


「それはそうとデルロイ様」


「何だ?」


「グール族がまた騒いでいます」


「チェスナンか・・・」


ドルチェの息子チェスナン

まだ若いがグール族の代表としてデルロイに抗議している

無視はしているが、余りにしつこい為対処を考えている最中ではある


「ドルチェの恩を訴えてモノを言うガキが調子に乗りおって」


最近のグール族は仕事もなく食料もなく困窮していくばかりだ

デルロイ的には「さっさと死ね」と言いたいが、中々にしぶとい…まぁ、直に野垂れ死ぬだろうが


「グール族の繁栄か・・・」


今は亡きチェルバン、ドルチェ親子を思い出しデルロイは目を細めた

チェルバンもドルチェも衰退しつつあったグール族の復活の為に努力した

デルロイも若い時はそうだ

若くて無知な時はだ

本来ならばデルロイはかつてのアンデッド戦争の時に死んでいた筈だ

しかしアトニーノさんに助けられた

その時に感じた魔族の女の匂いと服を通して感じた肌の感触は生涯忘れる事はないだろう

そして魔族の女への執着はそこから始まった

魔族の女を手に入れたい…それがデルロイの生きている原動力だ

そこには最早グール族のグの字もなく、デルロイに取ってはグール族復活などどうでも良くなったのだ

そして今、大体手に入れた

レリーナ以外にも何人か魔族の女の愛人はいる

そう、今やグール族復活など価値もなく何の意味もない事なのだ


「チェスナンの事は追々考えておく」


「畏まりました」


恭しく頭を下げ、レリーナは退出した

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。