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竜怜のハーフ  作者: ナウ
三章・後半
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【リリザルの街で】

ゲートを潜り、リリザルの街にルセルとタウナが到着した時には既にリリザルの街は大混乱の中にあった。

都で起きたらしい異変について様々な噂が町人の間で飛び交っている。

そんな騒ぎに街の長は駐留兵を集め現在音信不通の都に乗り込む算段を立てているらしい。。


「無駄な行為ね」


タウナはピェスラナ達が宿泊している宿屋の一室でルセル、ピェスラナ、ライトリーに言った。


「無駄ってーのは?」


ライトリーの問いにタウナはベットに腰掛ける。


「話を総合しましょう、まずは敵がスライムである事」


「ん・・ああ・・」


「人間達の所有している武器ではスライムは倒せないわ」


「ん?、まぁ・・剣じゃ倒せないが炎の魔法にゃ弱いだろ、あいつら」


「そう、炎の魔法

私もそう思って武器を持ってきたわ

だけど、色々いるみたいよ?」


タウナ不在時にパークやピェスラナ達がライオネルから逃げてきた人々の話を聞き回った。

そこで得た情報とタウナがリリザルに帰ってきた時にもう一度詳しく聞き出した情報を元に、スライムは一種類だけではなく色々な色のスライムがいる事が判った。

しかしそれは非常に厄介な事柄である、何故なら全てのスライムに炎の攻撃が効くとは限らないからだ。

色が違う、それは単純に考えただけでもそれぞれに有する特性や能力が異なるだろう事が予想される。

当然炎や熱に耐性のあるスライムがいたとしても不思議ではない。

ただ、それだけでは厄介であるという範疇でしかなくタウナが頭を悩ませる状況にはない。

問題なのは知能を有しているらしい事だ。

しかも比較的高い知能を有しているかも知れない可能性。


命からがら逃げてきた人間達の中にはスライムが喋っているのを聞いた者もいる。

しかも意味不明な言葉ではなく、現在人間界で使われている言語だ。

つまり少なくとも言葉は通じると考えるべきだ。

しかし言語はともかく明確な意思疎通を行えるとは限らず、意思疎通が困難または不可もしくは意思疎通は行えても突然攻撃をしてくる好戦的なスライム達ならば有無を言わさず戦わなければならない。

知能を有する、それがどの程度の知能かによっても大きく異なる。

単に言葉を喋り思考も行動も幼稚なレベルならば排除という簡単な作業で済む。

しかし高度な思考が出来るなら一筋縄ではいかない。

排除する筈が排除されていた・・というのは冗談でなくあり得るからだ。

それらを考えてみた場合、ライオネルの都に足を踏み込むには相当危険なリスクが伴う。

しかし場合によっては拡大するダークエクセナルの牽制に使えるかも知れないというある種の思惑はある。


「色々な色の、しかも知能を持ったスライムがいるのよ?

どの道人間には倒せないわ、ピェスラナクラスの炎の使い手がいるなら別だけど」


タウナの言葉にライトリーは腕を組む。


「ん~、大人数でかかれば何とかなんじゃない?」


「確かに大人数で一斉にかかればね

でも王都の人間達が何の抵抗もせずにやられたとは思えない」


「抵抗はしたけどやられたって?」


「やられた、もしくは捕まったという事ね

大人数を殺す、もしくは捕まえる力を持った相手だと思っていた方がいいわ」


「うぉ~おっかね~」


「で、ルセルはどう思う?」


「え?」


タウナとライトリーの会話を聞いていたルセルは突然急に振られて戸惑った。


「どうって?」


「ああ、え~とね

まず、王都に調査に行くべきか行かないべきか・・てとこ」


「え?、行くんだよね?」


「それをルセルに聞いているんだけど?」


「え?、ああ・・と・・うん、行くべきだと思うけど・・」


「スライムについてはどう思う?」


「ん~、黒い霧が都を覆う直前に感じたあの嫌なオーラなんだけど・・

あれがスライムのモノなのか、それともスライムを操っている奴がいてその人物のモノなのかは判らないけど・・

戦えば相当手強いと思う」


「ホイクールと比べてみてどう?」


「ん~、ちょっと性質が違うかな?

ホイクールさんは強いっていう感じだったけど、今回のは恐いっていう感じだった」


「なんだそりゃ、お化けか?」


ライトリーが横から口を挟んだ。


「そう、何だかそんな感じ

暗闇の中に何かがいる不気味さって感じだよ」


「それは私も感じました」


皆の話を聞いていたピェスラナが口を開く。


「何か心理的に不安になる、そんな感覚をあの中で感じて息苦しかったです」


「え?、ピェスラナちゃん、そうだったの~?」


「はい」


「ははは、大丈夫だよ

そんな奴俺が叩きのめしてやるさ!!」


ドン!!、と胸を叩くライトリーにタウナは目を細める。


最近ライトリーは随分とピェスラナにご執心だ。。

ピェスラナもそれに関して特に嫌な顔を見せていない。


「ん~、まったく・・いつの間に・・」


とはいえ今はそんな事をからかっている場合ではない。


「それで?、王都に行く・・のは決定だけど何時行くの?」


「え?」


タウナに振られてまたもルセルは動揺した。

それはアリスが指示をしてくれると思っていたからだ。


「え・・と、タウナはどう思う?」


「私はルセルに聞いてるのよ?」


「ん~、ここからなら馬でどのぐらいで着きそうかな?」


ルセルの質問にピェスラナは少し考えて言う。


「ここからは20キロぐらいと聞いています、馬なら慎重に行っても一時間ぐらいですね」


「そう思うと凄く近いね」


「そうよ?、下手をしたらここも今すぐにでもスライムに襲撃される可能性は高いわよ?」


「恐いな」


タウナの言葉にルセルは顔を引きつらせる。


「で?、どう?」


「ん~、なら今日の昼一番で出よう

暗くなれば不利になるから暗くなるまでに調査する感じ?」


「それでいいわ、暗くなるまでに・・ここに帰ってくるのね?」


「そう・・かな?」


「かな・・て何よ?」


「うん、そうそう」


「もしスライムと接触した場合はどうするの?」


「戦うしかないよねぇ」


「戦うね、でも戦うだけ?」


「え?」


「意思疎通が困難、もしくは不可の場合は戦う

でももし意思疎通が可能な場合は?」


「あ、そうか!

もし話し合いが出来れば和平案を出す」


「そうね、戦うのは最後の手よ?

まずは話が通じるかどうか試してみる・・よ?」


「古代に封印されていたバケモノなんだろ?

そもそも言葉が通じるのか?」


「ここに逃げてきた人々の話だと言葉を喋れないスライムと言葉を喋れるスライムがいるらしいです

喋れるスライムは人型で現代の人間の言葉を使い話すとか聞きました」


「うぉ~!!、ピェスラナちゃん!!すんご~いぃ

そんな事まで聞いてたんだ~、ボクちゃん尊敬しちゃう!!」


「え、聞き取りでライトリーさんも一緒に居ましたよね?」


「え~ボクちゃん覚えてない~、記憶力ないしぃ~」


「・・・・・」


ライトリーの白々しさに冷ややかな視線を送るタウナ。

まったくこの男は・・と思うが今は敢えては言わないでおこうと決めた。


「喋れるスライムは人型ね、なら人型のスライムと接触する所から始めましょう」


「ああ、だね」


「それで?」


「え?」


「和平案の具体的な内容よ」


「ええ・・と」


「双方共にメリットがないと意味がないわよ?」


「だよねぇ、え~と・・、う~んと・・」


・・・・・


・・・・・


・・・・・


「ごめん、思いつかない」


「うん、それで正解よ」


「え?」


「正直相手の正体も性格も目的も数も、何も判っていない状態じゃ私も有効な交渉は思いつかないもの

出たとこ勝負になるわね」


「ん、そうだね」


何か尋問されているみたいだったのでルセルは胸を撫で下ろす。

しかしタウナがなぜ自分に聞いてくるのかはイマイチ分からないが。


「馬の用意はしてあるの?」


「既に四頭分用意してありますよ」


「用意周到ね、流石だわ」


ピェスラナの答えにタウナは笑む。


四頭、それはパーク達を連れていく想定は最初から除外しているという事。

そしてライトリーが当然のようにメンバ―に加えられている事はピェスラナのライトリーに対する気持ちの表れだ。


「パークさん達には残ってもらいます」


「うん、それが良いわね

危険すぎるからね」


その事にパーク達がどう言うかは分からないが、少なくとも今回の調査に命を掛ける必要性は彼らにない。

あるとすれば世話になったライオネルの冒険者の店の親父さん救出云々の話だが、冒険者としては一銭の得にもならない仕事だ。

ただ残ってもらう口実はある。

王都から目と鼻の先のこのリリザルにそれこそスライムが侵攻してくる危険はある。

街には兵士達がいるとはいえ、戦える人間が一人でも多くいた方が良い。

とはいえ多くの兵士や騎士を抱える王都ですらあっさりと落とされたのだからこんな街など狙われればひとたまりもないだろうが。


「そういえばマーギランさんは・・・」


ルセルの言葉にタウナは額に手を当てた。


「ん~、多分無事かな?」


「多分?、どういう事?」


ゲートを使って帰ってきた形跡がないのよね

もっとも私達が使ったからゲートを使えないとかいう可能性もあるけど」


「ん~、かなぁ?」


「どちらにして私達は動かなきゃならないし、マー爺抜きで」


「だね」


「さ、それじぁお昼に出発よ

食事はさっさと済ませましょう

ああ、そうそうこれを渡しておくわ」


そう言うとタウナは持ってきた剣と短剣をライトリーに渡した。


「何だこれ?」


炎の付与魔法付きの剣と短剣よ。

スライムは数種類いるらしいから炎耐性のある種もいないとはいえないけど液体状の敵には役に立つと思うわ。


「俺、自分の剣持っているけど?」


「いらなければ置いていけばいいんじゃない?」


「いや、いる」


「どっちよ!!」・・と言いかけたが敢えて言わないようにした。


「ピェスラナも持っといて」


そう言うと短剣を渡した。


「短剣ですか・・炎を出す使い方はどうすれば?」


「後で教えるわ、はいルセル」


そう言うとルセルに短剣を手渡す。


「ええ~、炎の剣がいいんだけど~」


「ルセル、貴方は自分の剣があるでしょ?」


「うう・・」


「それにもう一つは私が使うから無理よ」


「あ~、だよね~」


「何だ?、ルセルの武器は炎の剣より凄いのか?」


ライトリーの言葉にタウナは頷く。


「剣と弓、自由自在に変形可能よ

竜界の技術がふんだんに使われているわ」


「でも炎は出ないんだろ?」


「竜力を矢に変えて飛ばす竜矢ドラゴンアローや刀身に竜力を纏わせる竜刃ドラゴンブレードは多分スライムにも有効みたいよ?

よね?、ルセル?」


「ん~・・そうだと思う、多分」


「多分かよ、効かなかったらどうすんだ?

その短剣だけで戦うのか?」


「え・・、う~ん・・」


腕を組み唸るルセルにタウナは自身の剣をスラッと抜いた。


「心配はいらないわ、その時は私がルセルを護る」


「ひゃ~、お熱ねぇ~お二人さん」


ライトリーのひやかしを他所にタウナはピェスラナをチラリと見る。


「貴女もよね?、ピェスラナ?」


口には出さなかったがそう目で合図を送った。


「いえ、違ったわ

貴女は護られる方が好きだったわね」


そのタウナの言わんとしている事を察してピェスラナは薄っすらと微笑んだ。

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