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竜怜のハーフ  作者: ナウ
三章・前半
53/84

【魔王の帰還】

「うん、よく調べてあるね」


パラパラと本を捲るルセル。

見ているのはハーフエルフのアダージュが所有している『エルフ界旅行記』である。


ライオネル城下の冒険者店に戻ってきたタウナ達は店長からオーガ戦の参加報酬を受け取り、店内でゆったりしていた。



オーガ軍との勝敗は引き分け。

明確にオーガ軍に勝った訳ではないが、負けた訳でもないという戦いだった。


タガノロン村に到着したタウナは、骸骨動物型スケルトンビーストタイプと戦った冒険者達の満身創痍ぶりにこれ以上の戦闘は不可だと判断した。

戦闘の際に戦死した冒険者達の他に、戦闘によって負った傷で戦闘終了後に死んだ冒険者達も多数いたからだ。

戦闘時・終了後併せてタガノロン村に来た半数の冒険者が死んだ事になる。


指揮官であるシダンダードは援軍を入れてもオーガ軍に勝つ事は難しいと考え退きながらの戦いを想定していたが、タウナは敵の隊長の首さえ取れば敵は撤退すると説きシダンダード達を納得させた。


納得させたと言っても、口だけの説明ではなく暗闇魔法ダークネスを実際に披露しシダンダードの首筋にナイフを突きつける実演を行ってであるが。


正直、敵の隊長を暗殺すればオーガ軍が撤退するという保証はない。

しかしシダンダード達がタウナ案を取り入れたのは、やはりこれ以上の戦いは不可能だとタウナに言われるまでもなく分かっていたからだ。


退きながらの戦いも、力ずくの正面突破でもどの道オーガ軍は倒せない。

ならばまだ可能性のある策で挑んだ方が良い・・・というシダンダード達の判断によって作戦は決定した。


かくして隊長暗殺作戦は実行され、他の冒険者達がオーガ軍や正規兵達の目を引きつけさせている隙を突いてタウナが隊長に近づきその暗殺を成功させた。


「大したもんだ」


作戦終了後、ウキャンを魔王部隊に引き渡し撤退させた時にシダンダードはタウナにそう言った。


「ありがとう」


そう言うタウナ。

しかし喜んではいられない。

本当の戦いはこれからなのだから・・・



取りあえずの戦いは終わり、タガノロン村からライオネル王国へ戻る際にタウナ達は一組の冒険者達と行動を共にした

同じオーガ戦を戦ったパーク、ドートナー、アダージュ、ナトリーのチームだ。


タウナ達と一緒に行動する必要はなかったパーク達だが、ルセルとマーギランがエルフである事を知ったアダージュが2人に興味津々で色々話を聞きたがったからだ。


ライオネル到着後、アダージュの持っていた『エルフ界旅行記』の話で盛り上がった。


タウナは昔、著者のロスイプに会った事がある事。

会った場所はダークエルフの都だった事。

ロスイプは競馬が大好きな事。

自分がロスイプの賭けた馬を買うと外れる事等々。


マーギランは初出版の時に手にし、細部に渡る詳しい記述に感心した。

その中の現代の歴史欄には実際に会った事がある名前が幾つかあり、マーギランは自分の年齢を否が応でも感じざるを得なかった。


ルセルは旅行記自体は見たことがあったが、詳しくは見ていない。

ただ、今回「三部・エルフ及びハーフエルフの神話~歴史」の現代歴史人物名の中に父方の祖母モニカと曾祖母コーラの名前が記されている事をマーギランに教えられ目玉が飛び出すほど驚いた。


【コーラ】

ハーフエルフ保護の活動家であった父カルントンに影響を受けエルフ界のシティ建設に奔走。

先先代女王~先代女王の時代に活躍。

父が病で倒れた後、夫マナントンや娘モニカと共に各ハーフエルフ達のシティ移動に尽力。


【モニカ】

ハーフエルフ保護活動家であった父マナントンとコーラの間に生まれる。

先代女王~現女王の時代に活躍。

主にシーエルフや水精霊アクアティックエルフのシティ建設及びシティ移動に尽力。

最も困難であった人間ヒューマンエルフの移動にもアローガン等らの救援要請を受け、スタッフを連れて人間界に赴く。

後に奴隷解放の英雄の1人としてルーヒューマンシティから顕彰されている。



「・・・え~と」


祖母モニカの記述にルセルは戸惑う。


「何じゃ?、知らんかったのか?」


ルセルの困惑にマーギランは面白そうに言った。


「ええ・・・ですね、まさかお祖母ちゃんがこんな凄かったなんて知りませんでした・・・」


「ふむ?、ルーアクアシティ建設に関わっておった事は知っておろう?」


「それはそうですけど・・・驚きました、お祖母ちゃんはその辺り詳しくは教えてくれませんので」


「・・まぁ、そうしたモノかも知れんな」


そう言うと懐からパイプを取り出し草を入れ火を付ける。


「あの・・・マーギランさん」


「ん?」


「奴隷解放と言うのは何ですか?」


そのルセルの言葉にマーギランはずっこけそうになる。


「いや・・あのな・・」


「そんな事も知らんのか」と言いかけて止めておいた。

確かに自分達世代は知っていても、今の若い子にはピンと来ないであろう事だからだ。


「・・昔はの、人間界にいたハーフエルフ達は人間達に迫害されておったのだ」


「そうなんですか?」


「ん・・うむ、中には奴隷として働かされていた者達もいてな」


「酷いですね」


「ん・・まあな」


やや苦い顔で語るマーギランは当時の事を少しばかり思い出した。

今言った話はあくまでもかなり控えめに言っている話だ。


何千年に渡る人間界でのヒューマンエルフの歴史は度重なる迫害の歴史でもあった。

特に40年ほど前に吹き荒れた「エルフ狩り」の惨状は今まだ生きている当時を知るハーフエルフ達の記憶にも生々しく残っている。

その狂気の時代にヒューマンエルフ達をエルフ界に逃がす活動を行ったのが今語られた活動家達の話である。


特にアローガンは剣と弓矢を持って人間達と戦い、多くの奴隷達を解放した英雄としてヒューマンエルフ達からは称えられている。

だが人間達からは奴隷を勝手に連れ去り人間を大量に殺害した「悪鬼のエルフ」と呼ばれ、高額の賞金首扱いだった。


「・・とまぁ、そんな話じゃな」


「なるほど」


そんなルセルとマーギランのやり取りにアダージュはキョトンとした表情をして問いかける。


「えと・・お祖母ちゃんって・・何ですか?」


そのアダージュの問いにマーギランが「ああ・・」とした声で答えた。


「ん~、何というか・・、このルセルの祖母はそこに書かれておるモニカじゃ」


「・・・え?」


アダージュのその表情にマーギランは苦笑する。


「信じられんかも知れんが、ルセルはモニカの孫でな」


「えっ・・と・・、ウソ・・、本当に?」


アダージュの言葉にルセルは頷く。

その瞬間アダージュはみるみる顔を綻ばせ、目を輝かせた。


「スッゴ------い!!!!、まさか本に描かれている英雄のお孫さんに会えるなんて!!」


そのアダージュの喜びにルセルは微妙な面持ちで答える。


「いや・・・ただの孫なんだけどね・・・」


「凄い、凄い、凄い----!!!!」


「うん、いや・・・だからただの孫なんだけどね・・・」


はしゃくアダージュにルセルはポリポリと頭を掻いた。






ゴツリッ ゴツリッ ゴツリッ


石畳をブーツの音が響く。


ピタリ


魔王城の中央城門前で足を止めた男は目を細めそのまま敷地内に入ろうとした。

城門の門番役である門兵数人が慌てて呼び止める。


「待て!!、どこに行く?」


呼び止めるられた男は門兵に振り向いた。


「何者だ?、ここをどこだか知らない訳ではあるまい?」


まだ若い門兵は男に詰問する。

左右の横に立つ槍を持った門兵もまだ若い。

男は少しにやけながら言う。


「魔王の城であろう?、それが何だ?」


「ん?、何だとは何だ!

お前は何者だ?、通りたければ通行証を見せよ!」


若い門兵の威圧的な態度に更に男はニヤケる。


「通行証?、持っておらんな

必要なかろう?、通るぞ」


そう言いながら中央門を潜ろうとする男に若い門兵は叫ぶ。


「待て!!不審者だ!!、ひっ捕らえろ!!」


左右に立っていた門兵が槍を構えて男に近寄る。


それを見た男は抵抗する事もなく、そのまま大人しく捕まった。



ガシャン!!


牢に入れられた男は何ら動じる事なく、今だに薄ら笑いを浮かべる。


ガチャン!!


「出ろ!」


やがて、牢から出された男は取り調べ室に引っ張ってこられ取り調べが始まる・・筈だった。

部屋に連れて来られた男の顔を見て、取り調べ官の何人かは

眉をひそめ何事が互いに小声で囁き始めた。


「陛・・下?」


その中の年長者の1人である取り調べ官のオイニはそう言い、微妙な表情を浮かべる。


「くくく、久しぶりだなオイニ」


そんなオイニに軽々しく声を掛け、腕を組む男。


「・・・陛下!!!!」


オイニは腰を抜かしそうになりながら叫んだ。

オイニのその言葉に他の取り調べ官達も顔色を失う。

それはそうだ、この男の名はゼルギネス。

この国の王である。



カツリッ カツリッ カツリッ

ゴツリッ ゴツリッ ゴツリッ


城の廊下に響き渡る靴音。


「御連絡頂ければお迎えに上がりましたものを・・」


ソフィーはゼルギネスに言う。


「いや、突然で驚かそうと思ってな

しかし、余の顔を知らん若い連中も増えたな」


「申し訳ございません、あの兵達は即刻首を言い渡します」


それを聞いてゼルギネスは手を振る。


「いやいや、今回は余が悪い

あの者達には咎はない、寧ろ良くやっておる、不問に伏せ」


「は!」


「それにしてもソフィー」


「はい?、何でしょう?」


「女っぽくなったな、出る所も出て

余もムラムラしてくるわ」


「・・・魔王様」


「ん?」


「セクハラ発言はお止め下さいませ」


「ん・・んん・・ゴホン」


ゼルギネスは咳払いをして誤魔化す。


「ジーナは・・お母さんは元気か」


「お陰様で元気にしております」


「そうか、それは何より」



2人は魔王の間の扉に到着し、足を止める。

扉の左右にいる兵士達がゼルギネスに一礼した。


「魔王様ご帰還であらせられます」


ソフィーは声を張る。


ドゴオォォォォォォンンッッ


魔王の間の重厚な扉が開かれた。


ゴツリッ ゴツリッ ゴツリッ


ソフィーに連れられ部屋に入ったゼルギネスは玉座の左右に跪くエミリアとラーダンを見ながらその前を通り過ぎ、玉座にドカリと腰を落とす。


「勤めご苦労だ、ラーダン」


名前を呼ばれたラーダンはピクリと体を動かし言う。


「は・・はい!!、ち・・父上に代わり・・代行を・・つと・・勤めて参り・・いえ・・あの・・はい、勤めさせて頂いております!!」


裏返る声と小刻みに震える体を必死に立て直そうとするラーダン。


「ふむ・・まぁ、以後も頼んだぞ」


「は・・はひ・・あ・・有り難き幸せに存じ奉りましゅ!!」


そんなラーダンから目を外しエミリアを見るゼルギネス。


「中々に楽しめておる様だな、エミリア」


それを聞き、エミリアは微笑する。


「はい、楽しめております

そしてお帰りなさいませ、魔王様」


「うむ・・」


そう言うと手でソフィーに合図を送る。


「・・・・・!」


その合図を受け取ったソフィーは警備兵を連れて部屋から出て行った。


「お前も出ろ、ラーダン」


「は・・はい!!」


ゼルギネスに言われて慌てて立ち上がったラーダンは、バタバタと退出していく。


ドゴオォォォォォン!!


魔王の間の扉が閉まった。


「・・・人間界の方はどうなっておる?」


ゼルギネスに言われたエミリアは答える。


「はい、ターリィナ様の指揮の下西方地域の支配を着々と行っております

もうじきライオネル王国との戦いに入るかと」


「うむ、そうか・・しかし・・」


「?、しかし・・・と申されますと?」


「いや、ターリィナの事だ

あいつが総指揮官とはな、かつてはあんなに小さかったあいつが・・余も年を取ったな」


「ああ・・・、子供の成長は早いという事でしょうか」


「うむ・・・まぁ、順調ならばそれで良い」


「あの・・魔王様」


「ん?、何だ」


「・・・御復帰はなされないのでしょうか?」


「ん・・・今はあ奴が王だ」


「私は魔王様に御復帰して頂きたいです」


「復帰か・・もうそんな元気はないわ」


「そんな事をおっしゃらずに」


「クドいわ

それはそうと、何か面白いモノはあるか?」


それを聞き、エミリアは答えた。


「はい、新しいハーレム管理者をご紹介致します」


エミリアの言葉に奥から一人の若い魔族の女がスッと出てきた。


「お初にお目にかかります魔王様、私は現在ハーレムの管理をやらせて頂いておりますフェリェと申します」


「・・・うむ

時にフェリェ、お前は何歳だ?」


「はい、魔王様

私は22歳でございます」


「若いな、ターリィナと同い年か」


「はい、ターリィナ様と同い年でございます」


そう言うとフェリェはにっと笑みを浮かべた。

三章前半・END

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