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竜怜のハーフ  作者: ナウ
二章・炎の祭典
31/84

【ダークエルフ】

ルーダークエピア。


エルフ界の片隅にあってエルフ界とは一線を引く国の名前である。

ダークエルフ達が住み、ダークエルフの女王によって支配される土地。


アリスは現在このルーダークエピアの客として滞在していた。


話としてはエルフの女王メリーカと取引し、色々と情報交換を交わした。

後は世間話とプライベートに関わる話をし、一晩城に泊まる。


翌朝、兵士達に連れられて馬で移動したアリスは数日掛けて境界までたどり着きエルフ界から出る事となった。


兵士達に別れを告げ、エルフ界を後にしたアリスはまず最初に魔界に連絡を入れる為に使い魔を飛ばす。

勇者刈り部隊の顛末報告と迎えを寄越してもらう為だ。


使い魔を飛ばした後は取りあえず行く当てもないのでブラブラと周囲を探索する。

幸い食料と水は女王の計らいで一週間分辺りは持たせてくれているので直ぐに餓死して死ぬ事はない。

中々に気前の良い女王だ。


後は魔界からの迎えを待って帰ればよい・・と考えた。

それがいつになるかは分からないが。


ちなみに同じく捕まった部下は留置場内で隙をみて自害したので連れてくる事はできなかった。


口を割るなら死ぬ。

そうした教育を施された兵士は進んで死ぬ。

それは天晴れな事だと思う。


今回連れて来たのはアリス直属の部下ではなく、魔王の部下達だ。

彼等はお目付役の役割も兼ねての集められた兵隊だ。

だから死んでも悲しみはないし、部下を失ったという喪失感も指揮官としての責任感も無い。

アリスに取っては単に自分を守る盾が破損して使えなくなった・・・程度の感覚でしかない。



チロチロ


辺りを探索して暇潰しをしていたアリスから少し離れた岩の上に小さな舌を出してクリクリの目で見つめるトカゲが一匹。


「あ・・・」


アリスはそのトカゲを見つけ声を出した。

見つかったトカゲは、しかし驚く事もなく岩の上にじっとしてアリスを見続ける。


体表に赤みがかかっている。

全長25cm程。

その瞳は燃えているかのように赤く揺らぎ、四肢はしっかりと岩に着け尻尾はユラユラと揺れている。


アリスは爬虫類は嫌いではない。

寧ろ好きだ。

逆に友達のカトリーナは爬虫類が大嫌いで、トカゲを見ようモノなら大騒ぎになる。

アリスからすれば何が怖いのかさっぱり分からないが、爬虫類が苦手な子はトコトン苦手なようだ。


火蜥蜴サラマンダー

炎の守護者にして炎を司る火の化身。

アリスは初めて見る。


「おいで」


近寄っても逃げ出す素振りは見せないサラマンダーにアリスは手を差し出す。


アリスの指をチロチロと舌で舐めたサラマンダーは暫く何事が考えていたが、アリスの手に乗ってきた。


くすくす


手に乗ってきたサラマンダーにアリスが笑む。


やがて手から腕に、腕を駆け上がりアリスの肩に乗っかかったサラマンダーは満足気な顔で辺りを見渡す。


暫くそうやってサラマンダーと遊んでいたアリスだが、こちらに近づいてくる足音に気づいた。

しかし警戒しつつそのままサラマンダーと戯れるアリス。


やがて足音は直ぐ近くまで接近し、ピタリと歩を止めた。


「・・・アリス様ですね?」


男の声・・・だが、その声に聞き覚えはない。

スゥーとアリスは今までの表情から違う別の表情に変わる。

声をかけてきた声の方に振り向くと二人の男のエルフが2メートル程離れた場所に立っていた

しかし通常のエルフの肌が白いのに比べて、この二人の肌の色は褐色に近い。


「だったら?」


アリスは名前を隠そうともせずに答える。


「おお・・・初めまして、私達はダークエルフ族の者です

女王陛下の使者としてアリス様をお迎えにあがりました」


「女王陛下?、ああ、ダークエルフの女王様ね」


「はい、ダークエルフの女王アローピア様が是非アリス様にルーダークエピアまでお越し頂きますようにと」


「・・・何故?」


冷ややかに聞くアリスにダークエルフの男は一瞬たじろいだが、気を取り直し答える。


「詳しくは我々では・・しかし女王様がアリス様と色々とお話ししたい事があると仰っておられました」


「ここから近いの?」


「馬を用意させております、早ければ5日程で着けます」


「遠いのか近いのかよく分からないわね」


「はい」


「行くのが嫌だと言えば?」


「それは・・帰れば我々が女王様に怒られてしまいます」


「ふ~ん、でも力づくって訳じゃないんだ?」


「はい、アリス様の意志決定に従えと言われておりますので」


「なるほど、でも手ぶらで帰ったら怒られる・・・と」


「左様でございます」


「・・・・・」


アリスは指を唇に当て少し考えた。

やがてスッと腰を落とし膝を地に付ける。


「お行き」


サラマンダーに向かって言う。


当のサラマンダーはキョトンとした顔で不思議そうにアリスを見てチロチロと舌を出す。


そんなサラマンダーを見て、アリスは仕方なく手で体を優しく掴み地に下ろした。

しかし手を離す瞬間にしっかりと手にしがみついてくるサラマンダー。


「一緒に来たいの?」


その言葉を聞いたサラマンダーはまた腕をよじ登ってアリスの肩にチョコンと座す。

まるでそれが自分の定位置だと言わんばかりだ。

そのサラマンダーの動きにアリスは笑み、男達に聞く。


「この子を連れていって良いなら行くけど?」


それを聞いた二人は互いに顔を見合わせ後ろを向いて何事が小声で喋る。

やがて意見が纏まったようで再びアリスの方に向き直った。


「構いません、女王様はアリス様をお連れするようにと言われておりました

しかし、同行者の有無については何も申し上げられていませんのでサラマンダーを連れていく事も有りだと思えます」


「分かったわ」


そう返事をしアリスは移動する旨を伝えるため、使い魔を再び飛ばす。

そして二人と一匹と共に馬でルーダークエピアに向かう事になった。



ルーダークエピアに辿り着いたアリスは様々な催しモノの怒濤の嵐の洗礼を受ける。

とにかくお祭り好きであり、派手好きであり、イベント好きな民族なのだ、ダークエルフは。

もっと暗くて腹黒いかと思っていたが、そんな事はまったくなかった。

そして魔族の血を引いている者同士だからかどうかは判らないが、ダークエルフは通常のエルフよりも身近に感じられた。,


「行け!! 行け!! 行け~~~!!」


アリスの絶叫が飛ぶ。

いや、アリスだけでなく周りの観客全体が叫ぶ。


競走馬によるレースは熱中させる。

最初、馬が走るのを見て何が面白いのかと思っていた。

しかし、やってみると意外と面白い。

賭け金に応じて勝てばそれなりの金額も入ってくる。

正直何やら燃える。


「あ~・・・」


アリスの賭けた馬は負けた。


「う~・・・」


初日こそ勝ったが二日目の今日は負け続けている。

今で5連続敗退だ。


「うむ、また勝ったぞ」


アリスの隣にいるノームの青年が呟く。


このノームの青年はロスイプといい、エルフ界の事を書いた旅行記を執筆中の旅行者だ。

ここに来た経緯としては、エルフ界の各地を見聞し本を書いているノームがいるらしいとの噂を聞いてダークエルフの女王アローピアがルーダークエピアに招待したのだ。

勿論、ダークエルフの事も書いてもらう為だろう。

ダークエルフの女王アローピアとはそういう女性である。


「あーーロスイプ!!、なに全勝してんのよ!!」


「ふふふ、競馬とは勘ではなくデータなのだよアリス君」


「うわ、ムカつく」


「確かなるデータに基づいてキチンと分析すれば確実に勝てるのだよ、アリス君」


「うう・・、なら今度はアナタが買う馬に賭けるわ

持ってきた所持金全額ね」


「うむ、ならば負けた分も取り戻せるだろう」


やがてレースのファンファーレが鳴り響く。

ゲートが開き各馬一斉にスタート。

各コーナーを回り、直線コース。

そして・・・


「あ・・・」


「あ・・・」


二人が賭けた馬は来なかった。


「・・・・・」


「あのさぁ・・・」


アリスがどよ~んとした顔でロスイプを見る。

同じく肩に乗っていたサラマンダーもどよ~とした目でロスイプを見る。

最近はよく似てきたアリスとサラマンダー。


「何で私が乗った時だけ外すのよ」


「た・・・たまたま・・・だな」


アリスに恨めしそうに睨まれロスイプもまたどよ~んとした顔になった。




「競馬は楽しかった?」


悪戯っ子のように競馬の話題ではしゃくダークエルフの女王アローピア。


アリスもロスイプも単なる遊びで滞在している訳ではなく、一応の目的はある。

アリスは情報交換。

ロスイプはダークエルフ界の見聞録を書く事。


「面白かったと言うか・・勝てば面白いかも知れません」


どよ~んとした顔で答えるアリス。


「私的には面白かったです」


ハツラツと答えるロスイプ。


「まぁ、一つの娯楽としての楽しさはありましょう」


アリスとロスイプの返答に答えたのはアリスよりはやや年上の女性。

その女性はダークエルフの王女ラピアだ。

脳天気な現ダークエルフの女王アローピアに変わって事実上ルーダークエピアの政治を取り仕切っている。


ダークエルフ内でも余りアローピアの評判は良くない。

即位して16年経つが今だに先代女王と比較され「先代が居られれば・・」と影で言われている。

15年前のアンデッド戦争時もルーダークエピア内では魔王軍と手を組みエルフを討ち、エルフ界をダークエルフの物に!!・・という考えが主流だった。


当時即位して1年目のアローピアは悩みに悩んだものだ。

そして出した結論が、魔王軍討伐である。

それには国内の民も重臣も呆れたものだ。

ただ結果としては奪還したルービアンカをエルフに高額で売却する事によってルーダークエピアは潤い、好景気をもたらした。

そして女王否定派は影を潜めた。



「さて、女王陛下

そろそろ支度をされませんと夕宴に間に合いません」


ラピアは女王に急ぐよう促した。


「え・・もうそんな時間?、あらいやだ

それじゃあね~アリスちゃん、ロスイプちゃん」


女王は慌てて退室していく。

二人は頭を下げ女王が居なくなるまで待った。


「ロスイプ殿も下がって頂いて結構です」


「そうですね、では」


そう言いロスイプもまた退室していく。



ロスイプの退室を見届けてからラピアはアリスに手を差し出した。


「アリス様、こちらへ」


当然ながらアリスとの情報交換相手は女王ではなく、この女王補佐であるラピアだ。

アリスは頷くと、ラピアと共に別室へと消えていった。

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