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竜怜のハーフ  作者: ナウ
二章・炎の祭典
24/88

【エルフ界旅行記と不死鳥と火竜】

【エルフ界旅行記】著者・ロスイプ


ウッドエルフ地域(エリア)から離れ、ノームの青年ロスイプは(アクア)エルフが住まうルーアクアシティに来ていた。


(アクア)エルフ』とは

一般にアクアエルフと一括りで呼ばれているが実は二つの種族に分かれていて、それぞれの祖は異なる。

一つは(シー)エルフ。

エルフの青年と人魚(マーメイド)の恋愛から始まったとされる海辺に住まうエルフ。

もう一つは水精霊(アクアティック)エルフ。

エルフの青年と水精霊(ウンディーネ)の恋愛から始まったとされる水辺に住まうエルフ。


ルーアクアシティは二つある。

シーが住まう海上・海中にある第一都市。

アクアティックが住まう湖畔にある第二都市。

ルーアクアシティ建設は最初アクアティックが住むための海上都市とシーエルフが住むための海中都市の同時建設から始まった。


しかし海上都市は多くのアクアティックエルフの不評を買う事になる。

潮風や海水が肌に合わないのだ。

何より親交のあるウンディーネ達からの批判もあった。

そこで海上ではなく湖の側が良いという意見から、面積600k㎡もある巨大な湖であるヤチュル湖の湖畔に都市を建設する事になった。

こうしてルーアクアシティは第一と第二が完成し今に至る。


それぞれ別々に存在しているため、最近は呼び方を変え新しい名称にしようという動きが双方から出てきている。


シーエルフとアクアティックエルフ。

海水を好むか淡水を好むか・・・という違い以前に性格面で色々と違いはある。

アクアティックエルフは理知的で論理的だ。

一方シーエルフは比較的人なつっこく、のんびりして論戦を好まない性格だ。


ロスイプ的に男女共に嫌な感じはしない。

シーもアクアティックも話せば理解力はあり、打ち解けるとかなり友好的である。


ウッドエルフの女達が正直アレなため、身構えていたロスイプだったが女性達も至って普通だった。


なるほど。

ウッドの男達がハーフとの恋愛解禁を望む気持ちは良く分かる。

正直ロスイプもウッドエルフの女たちには辟易したからだ。


それはともかく彼らの衣服についてだが・・・。

アクアティックは青いローブを好んで着るのに対して、シーは白いローブを着る事を好む。

食べ物に関しては、アクアティックはウッドとさして変わらないが、シーは魚貝類を好む。


能力的には多少なりとも魔法を使える者が多い。

弓を使うのはウッドエルフと変わらないが、上手いかというと微妙な線である。

多分ウッド程の高い命中率はなさそうだ。


そして当然泳ぐのも得意だ。

もっとも、アクアエルフと呼ばれていてカナヅチでは何の冗談だと言ってしまいそうになるが。

しかしながらウンディーネや人魚のように滑らかに水中移動出来るかと問われれば微妙と言える。

うまく双方の良い所を受け継いでいるのだが、本家には敵わないと言ったところか。


政治体制的にはアクアティックもシーも二人の君主を戴く。

アクアティックは水精霊(ウンディーネ)の女王とエルフの女王。

シーエルフは人魚(マーメイド)の女王とエルフの女王である。


二つの君主に忠誠を誓うというよく分からない状況だが、基本的にどちらも支配的な君主ではない事と相互が争う関係にないためにそれは成り立つのだろう。

しかしながら、ノームであるロスイプ的にはイマイチよく分からない在り方ではある。


ちなみに先の戦争でアクアティックは要請に応じて戦争に参加したがシーは参加しなかった。

アクアティックは水のある場所ならば自由に動けるが、シーは海から遠く離れると色々と不都合が生じてしまうらしい。

しかし、逆に海戦ならば最大限の力を発揮しただろう。


まぁ・・・争いは起こらない方が良くはある事は付け加えておかなければならないが。



チャポッ


ロスイプは黒インクに付けペンの先を浸け旅行記の空白の欄にアクアシティとアクアエルフの事について書いてゆく。


「・・・・さて」


ハーフエルフのシティは4つ。

このルーアクアシティの他にもリトル・フェアリー・ヒューマンのシティが存在するらしい。

現在は第二ルーアクアシティに滞在している。

第一ルーアクアシティは三日程前までいた。


この後の予定だが、今度はどのシティを訪ねようか・・・

リトルかフェアリーかヒューマンか。


リトルエルフは小さなエルフと呼ばれ、かつて居たリトルという精霊とエルフの混血だ。

その身長は成人でもエルフの子供並みに小さい。

それ故、通常のエルフに比べて家は小さくコンパクトであり

ユニークでありその生活も容姿も可愛らしいモノだと聞く。

果たして土精霊ノームの子供並みに可愛いのかどうか、その比較は楽しみだ。


ヒューマンエルフは別名迫害されしエルフと呼ばれる。

人間との混血の彼等は人間界に拠点を置いていたが、人間からの迫害が酷かったと聞く。

過去にヒューマンエルフ保護活動が展開され、人間との争いに発展した事件はまだ記憶にある者達も多くいる。

その話は是非とも聞いてみたいものだ。


フェアリーエルフについては謎の部分が多い。

そもそもの文献が殆どなく、羽の生えた彼等はエルフと何との混血なのかがそもそも分かっていない。

どのようなモノを着て何を食べているのか、どのような生活を送っているのかなどサッパリ分からない。

だからこそ、今回の訪問は非常に貴重な話が聞ける訪問になるだろう。


「・・・・・どうしたものか」


ロスイプは次の行き先に頭を巡らした。






アリスと別れてから三日目の夜明け。

一昨日も昨日もアリスはカフェには現れなかった。


「う~ん、帰っちゃったのかな~」


今日の水汲み当番であるルセルは、まだ家族が寝ている時間のまだ星が輝いている時間の・・・

しかしもうじき夜明けなこの時間に起きていた。

もう一度アリスに会いたかった気持ちのまま、井戸から水を汲むルセル。


アリスの容姿と存在はルセルには刺激が強かった。

その艶やかな肢体、石鹸の匂い。

声もまたルセルの耳に心地よく聞こえ、アリスの胸の柔らかい感触はルセルの腕に残っている。


しかしアリスは再びルセルの前には現れなかった。


「病気とかじゃなければいいけど・・・」


そうした心配が先に立つ。


「もう一度会えば不安も収まるんだろうけど・・・」


そう思いながら水を汲み終わったルセルは、まだ暗い闇空が少し赤い事に気づいた。


「・・・・?」


何だろうと思い空を見上げる。


・・・と


ブアァァァァァァァッッーーーー!!


炎の塊が頭上を通り過ぎていった。


「!?・・・????」


一瞬何か分からなかったルセルだが、通り過ぎていった炎の塊を目で捉え凝視する。


炎には左右に突き出した翼のようなモノがあり、それは羽ばたいていた。

そして幾つかに分かれた尾はゆらゆらと揺れている。

炎の塊・・・いや、それは炎に包まれている。

その姿は・・・。


「・・・鳥?」


そう、それは鳥の姿をしていた。


「火の鳥・・・不死鳥?」


本や絵画で見た記憶がある。


「そうだ、あれは・・・不死鳥(フェニックス)!!」


ルセルは驚き声を上げた。

そのまま見逃すまいと不死鳥の動きを目で追うルセル。


通り過ぎてから不死鳥は暫く飛行を続けた。

そして少し上昇し彼方の山の頂に不時着した・・・ように見えた。


「あれはロービス山だな」


登った事はないが、すぐ近くまで刈りの練習の為に父と一緒に行った事はある。

その不死鳥が降りたロービス山の頂は赤く灯っていたが、暫くすると消えた。

山火事にはなっていないようだ。


目を凝らし、更に山の頂上を見ていたがそれ以上は何も起こらなかった。


「不死鳥はあの山に降りた・・・みたいだ

理由は分からないけれど」


初めて見た不死鳥への興奮と、普段とは全く違う出来事に胸を踊らせる。

何かが起きそうな・・・そんな予感。


ルセルは汲んだ水の入った桶を急いで両手に持ち、持ち上げた。


「うぁ・・・」


その重さによろけそうになる。

折角入れた水をこぼしてしまっては、また入れ直しになる。

この緊急事態にそんな事はしていられない。


ルセルは水をこぼさないように、ゆっくり急いで家に戻る道を進んだ。






ルセルが不死鳥を目撃していたその時間。

精霊界にある風精霊(シルフ)が住まう世界において、空中に浮かぶシルフの街の一つ「カチッティナ」はあちこちから火の手が上がっていた。


今だに夜明け前の皆が寝静まっている時間帯。

炎は家から家へ、建物から建物へ燃え広がり惨事を引き起こす。


室内で煙や炎に巻かれて力尽きるシルフ達が多数。


何とか室外へ逃れた者達はその火事が偶然に起こったモノではない事を知る。


ゴガァァァァァーーーーー!!


赤黒い空に咆哮が走る。


街の上空を旋回しながら飛び回る巨大な物体。

それを見たシルフ達は口々に叫んだ。


火竜(ファイアードレイク)!!!!」


赤い巨体に口から吐き出される炎。

それは紛れもなく炎の竜であった。

なぜ竜が!?・・・という考えよりも、まず逃げる方が先である。


街に放たれた火もそうだが竜は炎の(ブレス)を吐き、翼を使って空に逃れたシルフ達を焼いていく。

焼かれたシルフ達は火達磨になり次々と落下していった。


比較的安全な場所にいるシルフ達はその暴れる竜をただ見ているしかない。

一般のシルフでは太刀打ちできないからだ。


火竜と戦えるとすれば、シルフ飛空軍しかない。

しかし、突然の急襲であり軍もすぐに来れる訳ではない。


助け合いならが安全な場所に着いた多数のシルフ民達はただ茫然と街が焼かれていくのを見ていた。


そして街は大部分が火の海と化し夜空を焦がす。


一面燃え上がる街々の赤い光を火竜は見渡し、一声鳴くとそのまま何処ともなく飛び去った。

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