【ルーアクシウム内の戦い】
「この道が正解か!」
城への道を探していたデュラハン部隊を率いるシャールナはようやく正解らしい道を走っていた。
この道が正しければ各地に散っている部隊を集め城に乗り込む事になるが、多分門は閉まっているだろう。
カラスが上空から行った事前の偵察で、城は水堀に囲まれ跳ね橋が架かっている。
跳ね橋は上げられているだろうから、乗り込むのは無理だろうな。
しかし、城への道を情報として持ち帰る事は有益だ。
シャールナは自らが所属する軍団の長であるリシープから言われていた。
「決して無理はせず、引くときは引くように」と
騎士にその台詞はどうかという気持ちもあるが、まぁ有り難く受け取っておこう。
バシッ!! バシッ!! バシッ!! パンッ!!
突然の衝撃と音が走っていたデュラハン部隊を襲う。
ドサッ!! ドサッ!!
衝撃で馬から落ちる者が何人かいた。
バシッ!! バシッ!! ビシッ!!
衝撃は馬も襲い、驚きと痛さに前足を高く上げた馬や暴れる馬に馬上にいるデュラハン達は振り落とされる。
シャールナの乗っている馬もパシンッという音と共に暴れ出す。
「し・・静まれ!! どうどう!!」
振り落とされないように手綱を引いた。
「おのれ、敵の何らかの攻撃であろうが・・・ん?」
シャールナの目に入ったのは少し離れてエルフの少年が鞭を此方に向けて振り上げている所だった。
咄嗟に剣を抜き鞭の先端を弾く。
シュプシュプシュプ!!
鞭の先端は刀身に巻きつき少しそのまま固まった状態だったが、緩くなり刀身から外れしなやかな動きでシャールナから離れた。
「まるで生き物のようだな」
シャールナは鞭の動きに感嘆する。
「慌てるな者共!!、ただの鞭の攻撃だ!!」
シャールナは混乱する部隊を一喝し、自分を攻撃した少年を見た。
年の頃は13~15歳ぐらいか。
周りには同じように鞭を片手に攻撃したり構えたりしている同じぐらいの年齢の少年達が多数いた。
「少年兵か!!
鞭とは面白いモノを武器にするな
しかしエルフの女達は自分達の身を守る為に子供にも戦わせるのだな、大したモノだ」
それを聞いた少年達の中から一人の少年が口を開く。
「いや、俺たちは少年兵じゃない
れっきとした大人だ、そういう種族なんだ」
「子供が何を言・・・・」
シャールナは言いかけて言葉を飲み込み記憶を探る。
確かエルフの亜種の中に成人に達しても子供のような体型の種族が存在するという話を聞いた事がある。
「まさか・・リトルエルフという者達か?」
「そうだ、俺はリトルエルフのビナーズという者だ!!」
「なるほど、ならば大人と名乗っていても不思議はない」
ただ、シャールナが腑に落ちない点は「何でこんな所にそのリトルエルフがいるのか?」である。
「お前たちがリトルエルフなのは判った、しかしなぜこんな所にいる?
確かエルフ界ではない精霊界の片隅で暮らしている種族と聞いたが?」
シャールナの言葉にビナーズは笑い出した。
「なんだ、シティの存在を知らないのか」
「・・・・シティ?」
エルフ界でのシティという言葉が何を意味するのか分からないシャールナはその言葉に動揺する。
「何だ? シティとは?」
知らない事でもさも知っている事の様に言ったり振る舞ったり取り繕う事も出来たが、シャールナは素直に聞き返した。
「教えてあげないよ~だ」
舌を出して言うビナーズにシャールナは呆れる。
「くそ、中身もガキじゃないか」
しかし、シティの存在は気になる。
シャールナは少し痛めつけて吐かせやる事にした。
馬上から降り立ち剣の切っ先をビナーズに向ける。
周りを見ると他のデュラハンの部下達も馬上で鞭を相手に戦う不利を悟り興奮する馬をなだめつつ馬から降りている。
「言いたくないなら構わない、しかし大人と判った以上私たちは容赦しない
拷問してでも吐かせてやるぞ」
「あちゃ~、少年兵で通しとけば良かった」
シャールナの言葉にビナーズはしまったという顔をした。
「もう遅い」
「拷問・・・て、痛い事する?」
「当たり前だ」
「どんな事?」
「そうだな・・・」
シャールナは少し考える。
「一本一本爪を剥がしてやる、面白そうだろ?」
「!!!!!!!」
リトルエルフ達は引きつった顔でお互いを見た。
負ければ痛い拷問が待っているのだけは分かった。
だが引きつってばかりもいられない。
気を取り直してビナーズがシャールナに言う。
「そ・・そんな事してる時間はないんじゃないの?」
ビナーズの言葉にシャールナは笑った。
「安心しろ、1分でケリをつけてやる
後は10分以内ぐらいでお前たちの泣き叫ぶ姿を見ればいい」
剣を構えビナーズに少しずつ近づくシャールナと鞭を握りしめ攻撃のタイミングを計るビナーズ。
他のリトルエルフとデュラハンの女騎士達も同様にタイミングを計ってお互いの武器を構え睨み合っている。
・・・・と、その時。
シュルルルルル・・・・・ドーーーーーン!!!!!
という大きな音と共に空に赤い煙玉が爆発した。
「あれは・・・」
シャールナは空に拡散する赤い煙を見て剣を鞘に収めデュラハン部隊に号令する。
「引くぞ!!」
「了解!!」
デュラハン部隊の部下達も赤い煙を見て声を揃え剣を鞘に収めた。
馬に飛び乗りビナーズに向かって声を発する。
「運が良かったなビナーズ殿、退却の合図が出たので我らは退却する
さらばだ!!、いくぞ者共!!」
そう言うと鞭をくれて城とは反対方向に駆け出した。
デュラハン部隊も一斉に中央門に向かって駆け出す。
呆気に取られたビナーズ達だったが、馬の足音が遠ざかるとその場に足を着いて崩れ落ちた。
「た・・・助かった・・・」
リトルエルフ達から安堵の顔が浮かぶ。
進撃してきた相手がデュラハンだと分かった時、勝てるとは思わなかったが、逃げ出す訳にもいかず死を覚悟で対峙したからだ。
「あ~、ビナーズめっけ」
ひょっこりやって来たトルンがへたり込んでいるビナーズを見て面白そうに笑う。
「デュラハン部隊が引き返していったけど・・・
何かあったのか?」
後ろから付いてきていたポルタンがビナーズに聞く。
「・・・・・・」
ビナーズは何も言わず仰向けに倒れ込んだ。
ダグバルドの術を破ったキィー・ン・ルはルーアクシウム内部をガルボに任せ外の戦いに向かった。
クレイモアを手にダグバルドと剣を打ち合うガルボ。
その打ち合いはガルボの意思とは関係なく体が勝手に動いているような浮遊感を伴っている。
より正確には剣の導かれるままに手が、腕が動いている感じで、それに逆らわずに体を動かしている。
一つハッキリ言える事は負ける気がしない・・・という事。
パキイィィィィィン・・・
ダグバルドの持っていた剣を横一文字に叩き斬った。
「バ・・バカな、こんな事が!!」
自分の持つ斬られた剣を見て愕然とするダグバルド。
「な・・何だ! 何なのだ、その剣は・・
そんな強度と切れ味を持つ剣は何だ!!」
剣を斬った以上刃こぼれはしている筈・・・と、ガルボが刃の部分を見てみるもそれらしきモノはなかった。
「流石にエルフの女王様が絶賛された剣だな、刃こぼれ一つねぇ・・・・あ、ついでにドンバク製だったっけ?」
ガルボは美術館に展示されていた説明文に書かれていた文章を口にした。
「な・・・なに?
ドンバク?、あの剣匠ドンバクの作か!!」
ガルボの言葉にダグバルドが吠える。
剣匠ドンバクは魔界でも名が知られている名工であり、その作品を所望したがる魔族は数多くいる。
「な・・・なる程、ドンバクの剣ならばその威力は頷ける」
だが、腑に落ちぬのはレイスを倒した事だ。
見たところ魔法付与はされていないし、対アンデッド効果を持つ何かを持っている訳でもなさそうだ。
「なのに何故レイスを斬れる!!何故だぁーーーー!!」
ダグバルドは叫び火球をガルボ目掛けて打ち放った。
ボオォォォォォォォォ!!
「うわ!!」
火球はガルボが避ける間もなく直撃・・・する前に光の壁にぶち当たり消え去る。
キイィィィィィィィン・・・・・
ガルボの身体を包んだ水晶に似た光は炎を消し去り、光は一点に集中し一つの紋章を浮かび上がらせた。
「対攻撃魔法の防御だと!?、しかし・・ま・・まさか・・そんな・・あの現れた紋章は・・貴様・・竜戦士だったのか!!」
「竜・・・何だって?」
よく分からない名称にガルボが聞き返す。
「竜戦士だ!!、貴様どこかで竜と接触したな!!」
カラン!!
バーナードから奪った回復の杖を持っていたマリージュが竜と聞いて杖を床に落とす、その顔は蒼白だ。
「竜って・・・ルービアンカ攻防の時に助けられた事はあったけどな」
剣を構えガルボは答える。
「貴様は竜の加護を受けている、一時的に竜の魔法や力の一部を与えられた者は竜戦士と呼ばれるのだ!!」
「へ~、ドラゴンって気前がいいね」
「馬鹿を言うな!!
そうそうドラゴンが力を貸す訳がない!!、貴様は本当に一体何なんだ!!」
「ただのエルフだっての
ドラゴンも森と里の二回助けて貰っただけでそれ以外は・・
ん?・・・まてよ・・・」
ガルボは記憶を辿る
森でドラゴンを見た時、出会ったのはシルティアちゃんだ。
シルティアちゃんがエルフではないのは見て分かった。
特徴となる長く尖った耳をそもそも持っていない。
しかし、ノートンの昔の友達だと言う事でそれ以上は何も聞かなかった。
しかし、一人で夜の森を彷徨いているのは余りに不自然だ。
シルティアちゃん・・・・ドラゴン・・・・
ドラゴンは人の姿にも変われるという・・・
「はは・・・なんてこった
こんな事を今頃になって気づくとは・・・」
そしてガルボは無意識にフワッとした動きで剣を振る。
そのガルボの攻撃をダグバルドは交わそうとした・・
が、交わしきれず剣はダグバルドの体を捉え突き刺さる。
「ギイェェェェアアァァァ!!!!!!!」
絶叫と体から噴出する黒い煙がダグバルドの最後を告げる。
「ガ・・ア・・」
何かを言おうとしたダグバルドだったが、最早その力は残っていなかった。
そしてそのままダグバルドは黒い煙と共に、この世から完全に消滅した。




