【ハーフエルフの援軍】
バカランッ、バカランッ
カカカカッ、バカカカッ
ドドドドドドドド・・・
蹄の音と地を駆ける音、そして立ち上がる土煙。
エルフ守備隊を蹴散らしながらデュラハン部隊は城に向かって駆け抜ける。
だがルーアクシウムの中は迷路のような構造になっていて、中々目的地の城まで到達できない。
「流石は要塞として作られた街だな、一筋縄ではいかないか」
行っては引き返しを繰り返していたデュラハン部隊の部隊長シャールナは途中から部隊を5つに分け、正しい城への道を探していた。
城は見えているのに辿り着けないこのもどかしさ・・・。
しかしそれは当然の事だ。
侵入者に容易に目的地まで侵入されては要塞の意味がない。
そういう意味ではこのルーアクシウムはマトモに機能していると言える。
しかし敵であるシャールナ達デュラハン部隊に置いては厄介な代物だ。
「違うな、こっちじゃない!!」
引き返せのサインを手で示し部隊に合図する。
ボガン!!
苛立ちに袋小路に置いてあった蓋の閉まったゴミ捨て箱を蹴飛ばす馬。
カカッカカッカカッ・・・
ブルルン・・・ヒヒン・・・
「多分あっちで分かれた分岐点のもう一つの道だ!!、行くぞ!!」
「了解!!」
シャールナの言葉に部下の女達が声を揃えて返事をする。
ドドドドドドドド・・
ドドドドド・・・・
ドドド・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
「行った?」
「多分・・」
ゴミ捨て箱の中から喋り声が聞こえた。
ゴミ捨て箱には小さな穴が元々開いていて、中にいた者はその穴から外の様子を伺う。
「ポイタン、もう出てもいいよね?」
「多分ね、トルン」
バカン!!
勢いよくゴミ捨て箱の蓋が開き、二人の少年エルフが顔を出す。
「見た!?、首が無かった!!首なしの騎士だ!!」
トルンが興奮気味に喋る。
「首が無かったって言うか・・首は持ってたような・・」
ポイタンがトルンの言葉に一部修正を加えた。
「でも首が所定の位置になかったのは事実じゃない?」
「・・まぁ、そうだけどさ~、何でワザワザ首持っているのかなぁ~って思ったりした」
「所定の位置に付けておいた方が楽だって事?」
「そう思うんだけどね・・・
まぁ、それはそれとして、あのおっかな~いお姉さん達は城に向かったよな?」
「あ、そうだ!!
大変だ!!、城にいる女の人達が危ない!!」
トルンは慌ててゴミ捨て箱から出ようとしてつま先を引っ掛け転げながら箱から出る。
「そそっかしいなトルン
大丈夫だよ、城近辺にはピナーズ達がいる」
「あ!!、そうか!
なら歩いて追いかけても平気だ!!」
「・・・・いや、そこは急ごうぜ・・・」
パンパンッと転げた時に服や体に付いた土や誇りを払うトルンはポイタンの言葉に走る構えをみせる。
ポイタンも走る構えをみせトルンに言う。
「んじゃ、ちょっと馬を追いかけますかね」
「分かった、んじゃ~行くよ!!」
「よし、では・・・行くぞ!!」
二人の少年はデュラハンを追って駆け出した。
訂正があるとすれば彼等は実は少年ではない。
容姿は少年のように見えるが成人した青年である。
彼らの事をこの地にいる森林エルフはこう呼ぶ。
小人エルフと。
カラスを何羽倒したか覚えていない。
五羽ぐらいまでは覚えているが、それ以上は記憶にないのである。
胸壁で大ガラスと戦っていたアルンは疲れ果てて肩で息をしながら片膝を付いていた。
既に剣に切れ味はなく、斬るというか・・・叩く武器に変わっていた。
それでも腕力のある者なら敵を叩き殺す事も可能だろうが、エルフの腕力では如何ともし難い。
一時は剣を置き、弓矢で大ガラスや梯子で登ってくる魔王軍の兵を射たが矢も尽きて再び剣を取り戦うが、限界にきていた。
エルフ製の武器はデザイン性を追求した作りになっており、実用的な性能は二の次とされている。
そういう意味で実用性を重んじるドワーフ製の武器とは切れ味も持続性もまったく違う。
過去から色々指摘はされていたが、改善されていなかったのは『実戦』から遠く離れすぎている事もまた原因であった。
エルフ最大の敵はダークエルフ達だが、大きな戦いはここ100年程起こっておらず、あったとしても小競り合い程度である。
小さな戦いも数で勝るエルフ達の勝利に終わる事で、武器に対する改良は考えられてはいなかった。
むしろますます儀礼的な剣のあり方が模索され、実戦的な剣は無駄として廃れていったのだ。
「ぜぃ・・ぜぃ・・」
アルンは返り血を全身に浴びて衣服から顔からぐしゃぐしゃになっていた。
返り血だけではなくて、右足も敵兵の剣を受けて負傷しロクに動く事も出来ない。
仲間の弓兵隊も半数以上が倒されている。
「はぁ・・はぁ・・」
腕も剣の叩き疲れで痺れて握力がなくなっている。
正直片手では柄を握れず、何とか地面に切っ先をつけた状態の剣の柄を両手で抑えて持っている状態だ。
だが敵の攻撃は緩まない。
一人の敵兵がカラスやエルフや敵兵達の死体を踏みながらアルンに近寄ってくる。
「ワザワザ死体を踏んでまで近寄ってくるなよ・・」
もうアルンに戦う力は残っていない。
剣を叩き込むどころか持ち上げる事もできない。
「・・もう駄目だ・・死ぬ・・
ごめんミモネ・・無事に帰る約束は守れなかった・・・」
アルンとミモネはついこの間結婚したばかりの新婚である。
ずっと好きだったミモネに敗れる事覚悟で勇気を出して告白したのは一年前。
約11ヶ月の交際の後、正式にプロポーズし結婚したのは1か月前。
幸せ一杯の生活が続く筈だった・・・。
子供は二人は欲しいと言うミモネにアルンは赤面し照れ笑いをしたのはつい二週間前の事だ。
それも、もう終わり・・・。
敵兵は動けないアルンに向かって剣で狙いを定め、そのまま振り下ろ・・・。
ドブュシュ!!
アルンは倒れる・・・が、剣はアルンを斬り裂かなかった。
敵兵が剣を振り下ろす時、矢によって敵兵の頭は射抜かれ敵兵士は即死して倒れたのだ。
力尽き倒れ意識が朦朧とするアルン。
そのアルンが気を失う前に見た光景。
それは透明で綺麗な色の羽が生えた人達が空からこの胸壁に降りてくるシーンであった。
ドグォォォォォォォ!!
ブーーーーン・・・・
中央門で睨み合っていたガルボとダグバルドの周囲で異様な大音響が響く。
ガルボもダグバルドもエルフ達もマリージュも突然の音に驚き何事かと周囲を見渡した。
「ぬ?、まさか!」
いち早くダグバルドが気づき門の入り口を向く。
先ほどまで闇に覆われていた門の外は闇が晴れ、いつもの見たことのある向こう側の風景に戻り、遠くで緑の木々が広がっている。
その入り口から青いローブを着たエルフがゆっくりとした足取りで入って来た。
「アナタの術は解かせて頂いた」
そのエルフはダグバルドに言う。
「エルフ風情が私の魔術を解いたと?、馬鹿な!!」
「馬鹿なも何も事実でございます」
そのエルフの言葉にダグバルドは動揺し叫んだ。
「何者だ、貴様!!」
「これは失礼、私は水精霊エルフのキィー・ン・ルと申します
エルフの女王様の御要請により我ら水精霊エルフ、遅ればせながら参上致しました」
キィー・ン・ルは恭しく一礼した。
ダグバルドの術が破られた事は外にいる魔王軍にも何らかの異変が起きたとして察知された。
だが時を同じくして東の丘から突如現れた騎兵の軍にゴドウィンは眉に皺を寄せる。
「何者だ、奴らは!?
見たこともない旗を掲げてやがるが・・
1000? 2000? いや、もっとか・・
どうなっている!! 奴らは何だ!!」
ゴドウィンが吠えた同じ時にワグーは西の森から現れた青いローブを着たエルフ達を見て驚いていた。
「1000人ぐらい? まだ増えるか?
何なんだ!?、あの青い集団は!?」
次々と森から現れる青い衣の集団に言い知れぬ異様なモノを感じ、ワグーは恐怖した。
ゴドウィンやワグーが新たに現れた敵と対峙している頃、アトニーノはルーアクシウムの胸壁上空で大ガラスと『空飛ぶ何か』の戦いを目撃していた。
『空飛ぶ何か』の数は分からないが結構な数が飛び交いカラスを次々と落としている。
「あれは一体・・・」
アトニーノは正体を見ようと目を細めたが流石に良く見えない。
ただ何か予期せぬ事態が発生している事だけは確かだ。
「何かまずいわね・・・」
そう呟く。
敵の援軍なのは確かだがそれが何かは判らない。
分かっているのは状況がマズい事になっていっているという事だけ。
その感覚にアトニーノの中の危険信号が赤に変わった。
旗を掲げ丘の下の少し離れた場所に陣を張っている魔王軍を眼下に見下ろす騎兵の軍とそれを指揮する指揮官の男
その指揮官の男に同じく軍馬に乗った男が話しかける
「ゼナンドル!
スケルトンにヴァンパイア、レイスにデュラハン
人間タイプは多分傭兵だ
巨人・・・あれはフレッシュゴーレムって奴だな
錚々たる面子だ」
「流石は元冒険者だな」
ゼナンドルと呼ばれた指揮官は男の言葉に苦笑する
「幾多の敵を倒してきたクテイシ殿、勝算はどの位かな?」
クテイシと呼ばれた男はゼナンドルに答える
「他のハーフエルフ族も戦いに加わっているんだ
これで負けたら永遠に後世の笑いモノだぞ」
「はは、まあな
さて、水精霊エルフも動いたか
ならは我ら人間エルフも動くぞ!!」
ゼナンドルの掛け声にヒューマンエルフ軍から鬨の声が上がった




