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かんぱに経営責任者☆白岡あさ ~あさが来た、その前に~  作者: 山本醍田
第一章・尊王攘夷編(1864年/あさ15歳)
10/22

池田屋事件(中編)

 情報が散乱していた。


 まずは京都内に潜伏している長州(山口)浪士の推定数が、情報元によっててんでんばらばらだった。

 ある筋からは五百人であるが情報だったが、別のところからは二千人という数字もあがっている。

 それに彼らが集まっている場所も、京都郊外だという者もいれば、大半は市内に潜伏しているという話まで幅広かった。


 あさはそういった情報を集めながら、京都の地図に印を打っていく。

 新撰組も情報収集に飛び回っているらしい。


 ただ、そういった情報をかき集めていると、見えてくる物もある。


 放火の狙いはあくまで四条河原町である。

 繁華街を火を付け、こちら側を混乱に陥らせて、狙いピンポイントで仕留めに来る。


 暗殺されるのではないかと、あがっている候補も様々だった。

 一橋慶喜(後の徳川)も浮上しているが、現在の一番人気は倍率3・8倍の会津藩のトップである松平容保だった。

 現在、京都守護職の役目を担っている幕府側の要であり、新撰組の雇用主でもある。


 新撰組もそれが見えているのか、松平容保らといった主要幹部には、組長クラスを護衛につけているようだった。


 久々に小藤さんの本領発揮だった。

 不眠不休で京都市内に出ては、情報を集めてそれをあさに落とすというのを繰り返している。

 それに加えて、あさは今までのビジネスで築きあげた情報網をも駆使しているようだった。

 時には高喜のとこにも飛んでいって情報合わせをしていた。


 そんな中、小藤さんがとんでもない情報を持ち帰って来る。


「尊皇七皇の筆頭である、宮部鼎蔵が三条河原町にて最終会議を開く?」


「はい、まだ詳細は確認中ですが、複数筋からこの話があがっているようです」


 宮部鼎蔵というビッグネームに、あさは珍しく狼狽したようだった。

 宮部鼎蔵といえば、現存している中では最古の尊皇攘夷論者である。


 あさはその情報を片手に、新撰組のある壬生寺に飛び込んで行った。

 すると新撰組にも同様の情報を掴んだところだという。


 三条河原町は、今まであさや新撰組のマークにあまり入ったことはない地域だった。


「どうするねん」


 あさが尋ねると、近藤組長は京都市内の地図を眺めながら、ゆっくりと言葉を繋ぐ。


「三条河原町ですと、東西南北のどこからでも逃げることが出来ますので、逃げるのを防ぐためには包囲が必要になります。敵の数も不明です。もしも敵に主力が集まっていたなら、新撰組だけでは全く足りません。見廻り組(京都警察)の支援があって、何とかということでしょうか」


「そっちは既に動いてるんか?」


「その件に関しては残念な知らせがあります。先日、この情報を見廻り組に持ちこんだんですが、そんな情報は掴んでいないと丁重に断られてしまいました。それどころか、奉公所は鴨川西にある四国屋をマークしているようで、そちらに剣士を回すように言われてしまいました」


 それを聞いたあさは、聞こえるぐらいの下品な舌打ちをした。

 丹虎にある四国屋は、長州組が流したダミー情報だと、早々に切り捨てた場所だった。


「商人の娘でも、嘘って分かるようなことやで。一体どんな判断基準やねん」


「彼らは大半が会津(福島県)やら桑名(三重県)から来ている方々で、土地勘が薄いですから」


「京都暮らしを始めて、ちょうど二年になる新撰組も似たようなもんやろ」


「私は今井家のような、強力な地元の協力者がいましたから」


 近藤局長はそう言ってあさをヨイショするが、あさは気にも留めずに話を続けた。


「で、近藤さん、どうするんや? 見廻り組の言うことは無視するんか?」


「新撰組は仮にも会津藩預かりですので、彼らの言うことを完全に無視するのは難しいですね」


「会津の雇われ兵同士やのに、色々あるんやな」


「組織に属する以上は、政治は免れないですから。まあ適当に考えます」


 これ以上長居するのは迷惑になると判断したのだろう。

 話が止まると、あさは壬生寺を立ち去ろうとする。


 帰り道、あさは手を顎にやり鋭い眼差しで歩いている。

 そして、僕はいつもと同じようにその後ろを付いていく。

 あさの頭の中では、攘夷派に対する感情が渦巻いているという点を除いては、いつもと何の違いも無い光景である。


 京都に火を付けようという攘夷派の暴走を、あさは本気で止める気なんだろうか。

 いくら京都に住んでいるとはいえ、自分の家まで戦火が飛んでこないのであればまあいいか、という思考が普通の人間の思考である。

 それに、あさがどれだけ情報通だろうが情熱を持っていようが、所詮は商人の娘でしかない。

 真剣を持ったこともなければ、武装私兵を抱えているわけではないし、武器弾薬を持ち合わせているわけでもない。

 そういうのは本業のテロ特殊部隊(新撰組や見廻り組)の方々に任せるべきである。


 そんなことを考える僕を尻目に、あさはおぼつかない足取りで鴨川に向かっていった。


 三条出町柳にある茶屋だった。


 あさは椅子に腰掛けたので、僕も追うように横に座った。


 可愛らしい小柄の店員が寄ってきて、オーダーを確認しようとする。


「三食団子と抹茶、こいつも同じので」


「ありがとうございます」


 僕はぺこりと頭を下げたが、あさは上の空といった表情を浮かべている。


 太陽はさんさんと僕らを僕らを照らしている。

 ああ、やっぱり平和が一番だよなあとただ思うばかりだ。

 正直なところを言うと、今起こっている揉め事にはあんまり興味はない。

 京都には学業で出てきているだけで、同じ日本人が家に押し入って来て、剣を振り回すなんてことが起きるわけじゃないんだから。


 だから、あさも少し落ち着いたらいいと思う。

 若さ故の限界を受け入れるべきで、出来ないことを歯がゆく思う必要はないのだ。


 そんなことを思いながら、どうフォローを入れようかなと考えていると、あさの視線が店の中の別のところに向いているのに気付いた。

 何だろうと思って、それを追うとそこに座っているのはしわくちゃの白髪と白髭をかかえた老人だった。

 見ようによっては○乞いにも見えるその人物は、むしゃむしゃと団子を口にしている。


 これは目を合わしてはいけないですよ、そんなことを思っているときのことだった。


「この国はどこに向かってるんやろうか」


 突然あさが口にした言葉は、ただ変な発言だった。

 考え過ぎた果てに、中二病を拗らせてしまったのかと思い、僕はできる限り優しいフォローを入れようとする。


「今まで通り平和に商売が出来る時代がくるといいよね。それで清(中国)とかヨーロッパ、アメリカにも旅行してさ、蒸気機関車みたいな日本に無い技術をどんどん輸入してさ。文明開化の鐘が鳴る~、って」


 あさは僕のあな愛おしき言葉に対し、何の反応も起こさない。


「平和な徳川の世はこれからも続いて、関東の金貨と関西の銀豆の通過ビジネスはこれからも続いて、当然両替商は今まで通り続いてくし、僕らの家もずっと安泰ということで」


「シンジ、ちょっとうるさい」


「はい」


 一括された。

 いったい何なんだと思ったら、向かいにいたホーム○ス風の爺さんが口を開いた。


「ふうむ、ここの団子-●○●-は美味しいねえ」


 うわ、あさのやたらと通る声質のせいか、とんでもないのにロックオンされてしまった。

 これは団子を早々に喉奥に流し込んで、この場から立ち去らないとと思ったのですが、何を思ったのかその声に呼応したのはあさだった。


「肥後(熊本)ではこんなもんはあらへんのか」


「薩摩芋を生地で包んだものが郷土のおやつは、とても美味しいよう」


「今度機会があれば、食べてみたいもんやな」


「そうだねえ」


 たわいもない世間話だった。

 何なんだろう。

 何であさはわざわざこんな小汚い爺さんに声をかけたんだろうと思いながらも、どうせいつもの気まぐれだろうと思って、おやつの甘みを舌で味わうことに専念していた。


「こんな余裕な会話が出来るのは、平和な時代やからやろな。人々が英知を積み重ねてそれを継承し続けたお陰で、うちらはあくまでも自己責任で商売することが出来るわ」


「そうだね。そしてこの平和な時代はきっといつまでも続くだろうね」


「そうやろか。昨年は街中での天誅殺人はピークを迎えてたし、ちょっと落ち着いたと思いきや、今度は不法潜入する浪士が増加の一方を辿っとる」


「彼らは民間人は斬っていないし、これからも斬らないよ。彼らの争いは、誰が次世代のルールを作るかを決めるかでの、単なる武士の喧嘩だからねえ」


 交わされているのは奇妙な会話だった。

 どうやら向かいにいる髭もじゃは、ただの家無き子というわけではないようだ。

 あさはこの爺さんのことを熊本出身だと知ってるみたいな言い方だったので、前からあさの知り合いなのかもしれない。


「この京都が火の海になる、なんていう話も聞くけどもな」


「何だかおかしな噂が流れているみたいだねえ」


「噂なんか」


「どうも喧嘩の土俵に立っていない外野が、暗躍しているみたいだ」


「思い当たる節はあるんか?」


「ないことはないね」


「差支えがなければ、教えて貰うことはできるか?」


 髭もじゃは少しだけ視線を空に向ける。


「どこぞの京都の商人が裏でかんでいるのでは、というのを疑ってみているんだがね」


 それを聞いたあさは、険しい表情を浮かべる。


「京都の商人やと? 何の目的があって、京都の商人が京都に火をつけなあかんねん」


「この京都の土地も、今の幕府と同じなのかもしれないよ。何百年もの徳川の時代に、一部の地主が京都や大坂で地盤を築きあげてしまい、新参者が新しい仕事を始められない土になっているのかもしれない。積み重なった垢は、新しい水が流れ、風が吹かない限りは変わることはない。不幸中の中の不幸は、徳川の世は貧しくとも、餓死するようなことはうんと少なくなったということだね。格差はあれど、それが人々の奮起を促すほどのものではなくなってしまったんたね。しかも、商人は剣を持てない武士だから、武士のように武力に。豊かな人間は手持ちの莫大な資金を運用し、さらに豊かになり、貧しいものはずっと今の現状を受け入れる。まさにトマ・ピケティの資本論だねえ」


「うちらの商売が、殿様商売やって言うんか。それだけは強く否定させて貰うわ。うちらも次に進むべき道は何かを真剣に考えとる。金を貸すときはそれが紙屑にならんように相手を選んでる。大事にしてた顧客を失うこともある。信頼関係を維持するために、赤字の仕事もせなあかんときがある。リスクが背負わんビジネスなんかすれば、あっという間に家業は燃え上がるんや」


「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。ただ、どれだけの商人が、今の自分の状況を自己責任だと受け入れることが出来るんだろうね。何か理不尽なことに対して、納得出来なかったことが、他責思考に向かわないのかな。そういった物が何十年も積み重なった物が、爆発することはないのかな」


 それを聞いたあさは、一度目をつぶった。


「根拠が……あるんやな」


「そうだね。ここでは話せないような相談は、何回か受けたことはあるよ。全部断ってるけども、彼らがその後どうしたのかは分からないよね。それが攘夷運動に便乗して、何かしらの行動を仕掛けたとしてもおかしくないんじゃないかな。例えば、君達が噂に聞いたという京都の焼き討ちの話のようなものだ」


 目の前の鴨川では等間隔に並んだカップルが、肩を寄せ合っている。

 あさは顎を静かに揺らした。


「言いたいことは分かった。うちも少し考えることにする。とりあえずはそういった情報をくれたことに感謝するわ」


「礼を言われるようなことではないよ。武士と武士の戦いに、関係ない堅気の人間に影響が出たとなれば、とんでもないことだからね」


 あさは老人にまっすぐな視線を投げかける。


「ちょっとうちも考えなあかん話も聞けたところで、話を尊皇攘夷の方に戻すわ」


「武士と武士の話に、あまり商家のお嬢ちゃんが関与するべきじゃないと思うけどもね」


「勝塾に通ってる一人の学者としてならどうや。論じることはは自由やろ」


 そう言うと、髭もじゃはにこりと絵みを浮かべた。


「面白いねえ。ならばわしも自分の立場を捨てて、一人の論者として話をすることにしようか」


「何とか、話し合いで収めることは出来へんのか」


「喧嘩だからね。もちろん最後は話し合いで決めるけども、互いに無傷というわけにはいかなよね。何もしないと相手に舐められるし、やり過ぎると相手も強情になる。生かしすぎず、殺しすぎずだよね。そういう点では商人の交渉も同じようなものじゃないかな」


 僕はなるほどと合点を打ったが、あさの表情は厳しいままだった。


「そういう意味なら、安政の大獄、桜田門外の変を経て五年。そろそろ話し合いを進めるにはいい時期なんとちゃうか」


「そうだね。ただ徳川は中々テーブルにはつかないねえ。結局、いつも勝くんやら、小栗くんが前面に立たされて、僕も申し訳ない気持ちになるよ。元々、尊皇攘夷運動てのは、元々一橋と南紀の政局のところから出てきた、徳川と徳川の後継者争いの話なんだよね。だから、権力争いの揉め事になるのは、そんなにおかしな流れではないんだよね」


「後継者争いなんて、今までも似たような状況はあったやろ。それでも、今までは揉めながらもいつかは落ち着いてたはずや。今回の違いは何や? 外国が介入してるからか?」


「イギリスやフランス、オランダの介入もその理由の一つだろうね。井伊直弼が対立派を弾圧したのもあるだろうね。経済はインフレに進む中で、給料を米で貰っている武士の生活がままらなくなったのも理由だよね。幕府の財政はすっからかんで、商人から借金するしかない状況も大きな理由だよね」


「問題だらけやな」


「ま、結局のところ、そういったものの積み重なったから、この倒幕の流れになっているんじゃなかな」


 そんな時、尊皇攘夷のことをあくまでもテロリストと認定している、あさのスイッチがオンに入ったのが分かった。


「けども、倒すって言っても、相手は腐っても幕府やで。幕府が軍資金を集めようとしたら、この横におるボンボンの実家を初めとする、名のある為替屋はそれなりの大金を貸すわけや。本気になれば軍隊の一つや二つは揃えられるわけで、何の後押しもない長州藩(山口県)を潰すことは何てことはないんや」


 もじゃ爺はふうむと言って、髭をわしゃわしゃとさすった。


「そうだねえ。たんなる脱藩浪士が集まって、倒幕なんて口にしても、数にしても百人程度の集まりに過ぎない、現実をまるで見ていない迷い言でしかないからね。そんな連中が決起したとしても、百姓一揆とそれほど変わらないだろうね。しかも、生活出来なくなった農民が立ち上がるのと違って、名誉を傷つけられた武士が剣が持つという分だけ、タチが悪いとも言えるわけでね」


「だから、倒幕の動きなんか現実的なものやないんや。無駄なことはさっさとやめるべきやろ」


 そう言うと、もじゃ爺が目の周辺だけを抜き出したら二十代、というような謎の輝きを放ち始めた。


「けど、もしそこに、別の力が加わったとすればどうなるだろうね」


「別の力?」



「例えば、ほら、外国とかはどうだろうね」



 それを聞いたあさは、一瞬全身の動きを止めた。


「は?」


「ペリーがこの国に来てから、およそ十年の月日が経つけども、海外諸国に匹敵する軍艦を作る力はついていないよね。幕府側では小栗忠順がフランス人のレオン・ロッシュらと組んで横須賀に造船場を作ろうと目論んでいるみたいだけども、おそらく実際にそれが揃うにもうしばらくの月日がかかるだろうからね。そして、それまではこの国には西洋のミニエー銃やスナイドル銃、戦艦に匹敵する武器は一つもないわけだ」


「一体何の話をしとるんや」


「もしも、攘夷派がイギリスの最新武器を手にしたら、というたらればだよね」


「そんなもん、揃えられるわけないやろ。そもそも、まず前提として資金の問題がある」


「どうしてそう思うのかな。君達だって幕府にお金を貸してるじゃないか」


「それは、将来的に利子をつけて返して貰うか、もしくは借金を持ったまま潰れられたら困るからや」


「じゃあ同じじゃないか。外国がメリットがあると思ったら、お金を借金という形で肩代わりしてくれて、武器を貸してくれるはずだよ」


「そんなん、ありえんやろ。幕府に貸し付けるならまだしも、何で小さな藩(県)でしかない長州に、外国が武器を提供すんねん……」


 あさの表情はしかめっ面になっており、僕といえば会話の意味が全く理解出来ず、思考停止の域に入っていた。


「いやはや、少し話しこんじゃったなあ」


 老人は立ち上がろうとするが、足取りはどことなくおぼつかず、酔っ払ってるみたいだった。


「楽しかったよ。僕みたいな老人の戯言に付き合ってくれて、ありがたい日だね」


「どうして、そこまで手のうちを見せる気になったんや」


「遺言みたいなところもあるかもしれないよね。敵とか味方とか関係なく、次の時代を生きる人間に、伝えとくべきことは伝えておこうみたいな」


「死ぬんか」


「まだ分からないけど、たぶん死ぬだろうねえ」


「後悔はないんか?」


「僕も松蔭くんの影響を受けて、肉体や魂が無くなっても、その人間の考え方が後世に残れば、その人間は死んではいない、的なすっかりスピリチュアルな人間に染まってしまったよ。松陰くんも、死ぬ最後の直前まで情熱だけの本を書き上げてたからねえ」


「それで本懐なんか。次世代を見届ける責務もあるやろう」


「人には、様々な種類の人がいるよね。壊すのが得意な人もいれば、新しいことを作る人もいれば、出来たものがメンテするのが上手な人もいる。そういう意味では、僕や松蔭のような壊し屋は、この時代に対して十分に役目を果たしたんじゃないか。草莽は次々と土に還り、その上に次の新しい仕組みを作れる者達が立つ」


 老人は、団子の美味しさを思い出すかのような、少しだけ嬉しそうなトーンで喋っていた。

 そして、何かを思い出したかのような表情を浮かべた。


「あ、それと、興味があったからだよね」


「興味?」


「この前、見事に尾行されたもので、一体どこの藩の人間かと素性を洗ったら、雇い主は京都の三井家の娘と聞いてびっくりしたよ。任侠ヤクザの人間かなと思って調べてみたら、人材派遣のビジネスをやったり、神戸まで勝塾に通ってたりと全然関係なくて、実にオモシロイ子だなあと興味を持ったんだよね」


 素性が完璧に割れていることに、僕はげっと思ったが、あさは何でもないような表情で、その老人を見ていた。


「勉強の日々ですわ。次の時代、イギリスでも、フランスでも、どんな商人でも来はれちゅう感じです」


「いやあ、誠に頼もしいねえ」



 そこで、別れだった。


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