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第7話① 俺の仲間を侮辱するな

 ひしめき合うように建物が立ち並んでいる。その一角にある鍛冶屋から、カツたちは姿を現した。


「強化しても、装備の見た目は変わらないんですね」


 ミィナが目を細めて杖を撫でる。


「けど、数字はちゃんと上がってるみたいだ」


 バッシュは、冒険者の証である懐中時計を開いてステータスを確認した。そこに表示された数字は、鍛冶屋に入る前よりも確かに高くなっていた。


「ああ。それにレベルも、もう20を超えてる……思ったより上がってたんだな」


 カツも自身のステータスを見ながら、しみじみと呟いた。神に会う条件のひとつであるレベル99にはまだまだ遠い。だが、着実に歩みは進んでいる。


「カツ、船のチケット買う分はあるのか?」

「……いや、さっきの装備強化ですっからかんだ。しばらくは、クエストで資金調達だな」


 町人NPCの情報によれば、『神の祭壇』はこことは別の大陸にあるらしい。そこへ行くには、町から北西に位置する港で船に乗り、海を渡る必要がある。本音を言えばすぐにでも乗船チケットを購入したいところだが、安全面を重視して先に装備を整えたのだ。


(急がば回れ、だ。死んでリセットになる方がタイムロスだからな……)


 カツは頭の中で、自分にそう言い聞かせた。




 冒険者ギルドの中は、多くの転生者やその仲間NPCで賑わっていた。人々の隙間を縫って、カツはやっとの思いで掲示板をのぞき込む。

 手っ取り早く資金を稼ぐなら高報酬の魔物討伐がうってつけだが、考えることはみな同じらしい。掲示されている魔物討伐のクエストは、どれも誰かが遂行中で、今からカツたちが受注できるものは何もなかった。


「前は俺たちだけだったから知らなかったけど、人が多いとこうなるんだな」


 カツはがくりと肩を落とした。


「他の人のクエストが終わるのを、ここで待つしかないんでしょうか……」

「アイテム採取なんかのおつかい系なら、被りは関係なさそうだし……まずはそっちから行ってみるのもアリじゃねえか?」


 少し心配そうなミィナに対し、バッシュが明るく提案する。


「そうだな、受注者がいつ戻ってくるかもわからないし。簡単なクエストをこなしながら、タイミングが合えば魔物討伐って感じでいくか」


 カツがそう結論づける。三人はギルドを後にし、採取クエストのアイテムを集めに向かった。



◇ ◇ ◇



 町から少し離れた海岸沿いの林の中。カツたちは木の実や薬草、きのこなどを手分けして探していた。いずれも、クエストで指定されているアイテムだ。


「そういや、バッシュが初めて声かけてきたときさ……俺たちを見ても驚かなかったよな」


 カツは頭上の木の実をもぎ取りながら、ふと思い出したように訊ねた。


「他にも転生者がいるって知ってたのか?」


 薬草を探すバッシュの手が一瞬、止まる。


「え、ああ……何人か、見かけたことがあったんだよ。カツたちに会う前にな」


 ほんのわずか、間を空けてバッシュが答えた。


「やっぱそうなんだな。ミィナさんも?」


 カツは特に気に留めず、ミィナの方を振り返る。


「はい。でも、人に声をかける勇気がなくて……カツさんに会うまでは、ずっとひとりでした」


 ミィナは少し恥ずかしそうに俯いて、足元のきのこを引き抜いた。


「いや。俺だって、あの状況じゃなかったらミィナさんに声かけられなかっただろうし」


 そういうもんだよ、とばつが悪そうにカツは笑った。その背後で、バッシュが黙々と薬草を採っていた。


 時おり現れる小型の魔物を倒しながら、カツたちはアイテムを集め続けた。

 麻袋が採取物でいっぱいになる頃には、もう日が傾き始めていた。


「これだけあれば、それなりの収入にはなるだろ」


 カツが満足そうに袋を抱える。

 林から出たところで、バッシュがふと口を開いた。


「確か、こっちの灯台だったよな。討伐クエストの魔物が出るのって」


 バッシュの指さす方を、カツとミィナが同時に見上げる。

 林の向こう、崖近くにそびえ立つ、古びた灯台。

 数年前、港のそばに新しい灯台が建てられたため、林側の灯台は使われなくなった。放置された旧灯台には、いつしか魔物が棲み着くようになってしまった――というのが、件の討伐クエストの内容だ。


「そうそう。魔物討伐でも一番、報酬高いヤツだ。……ついでだし、ちょっと見てくのもいいかもな」


 軽い思いつきでカツが提案した。

 後でクエスト受注ができるようになった時のために、下見だけでもしておきたいという意図もある。


「いいと思う。前みたいに、ぶっつけ本番じゃ危ねえし」


 バッシュが冗談混じりに笑う。ミィナもこくりと頷いた。


「よし。日も暮れかけてるし、サッと行ってサッと帰ろう」


 カツたちは旧灯台を目指して足早に歩き出した。

 夕暮れ時の灯台は長い影を落とし、妙に陰鬱な気配を纏っていた。

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