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10 ネージュの才能

その後、事務所は、完全復活までには、まだしばらく時間がかかった。しかし、とりあえず、MMのおかげで、1億入ったので、あまり心配もいらないのであった。

そして、同じ姉妹でありながら、リカは、ユキであるネージュと、マミであるMMの2人のすごさを、モデルラボのスタッフと共に、これから目の当たりにすることになる。

倒産寸前から、復帰してきたモデルラボであったが、登録しているモデルの人数がまだまだ少ない。エリカル、ネージュ、MM、フェレナ、の主要なモデルを含めて、全部で8人が在籍している。

ここで、この8人で、クライアントを見つけて仕事を決めなければならない。そして、スタッフは、社長のコスメに、マネージャーの獅子童灯、受付の妻咲 瞳だけである。さて、どのようにして、一度倒産寸前まで行ったこの弱小事務所を建て直していこうか。

すると、勢いよく、手を挙げたのは、ネージュ、ユキであった。

「実は、悪いけど、事務所が再び勢いを取り戻せるまでは、モデルを休んで裏方に回りたいの。」

皆、思わぬ、ユキの発言に驚いた。

「そうね。驚くのも無理ないと思う。だけど、今、こんなに仕事を探して、どんどん決めていかないといけない状況で、のんびりしていられないでしょ。だから、私が、やるわ。」

えっ、モデルでやってたのは、知ってるけど、どうして今、そっちにいく?と誰もが、思った。しかし、この時、リカは、ユキが、事務所に入らずに、フリーランスで活動をして、一気にランキング3位にまで上り詰めたことを思い出した。

「それで、ユキ。これからの、あなたのやり方を説明してちょうだい。」

「まず、最初にすることは、20代から30代に対してのトレンドのマーケットリサーチよ。どんなものが流行っていて、どういうものがー好きなのかを、化粧品、衣料関係でとことん調べるの。とりあえず、女性のみに特化していいと思う。そして、いくつか、今トレンドのものと、これから流行りそうなトレンドを導き出すのよ。たぶん、これは私じゃないと導き出すのは難しいと思うけど。そして、化粧品関係、衣料関係の会社の特色を調べて、そのトレンドに近いパターンを会社の色として近いところを探して、それに1番近い、うちのモデル、あるいは、1番それに向いているモデルを探して、その会社へそのトレンドを持ち込んで、自分は、こういうものを今のトレンドとして、あるいは、これからのトレンドとして、1番アピールできると、売り込むのよ。トレンドは、他のものよりも売れ筋として反応が早いし、それに直接乗っかるイメージのモデルは、すぐに印象に残るわ。そして、その商品をどんどんアピールすれば、商品も売れるし、そうなれば、そのモデルも有名になって、一石二鳥ってわけね。これまで、私は、それを1人でやって、1人でつかんできたのよ。今回は、それをしばらく担当するわ。事務所が軌道に乗るまでね。」

一気にまくし立てて説明するユキは、ものすごい、皆んなの驚きも、すごかった。だが、それができたら、どうしても、そこは、そのまま、ユキにやってほしいと誰もが思った。

すると、

「これは、一つの会社としてのやり方であって、それはスタッフが皆んなで慣れて覚えていかなければ仕方ないのよ。だから、私がモデルに戻る時までに、やり方をしっかりと伝授するわ。それで、会社そのものとして、スタッフ全員でできるようになってほしい。」

そして、今回、ユキのやることを一気にスピードアップさせる方法があるという。

「まず、一つ目にやること、それは、MMの所属事務所移籍の発表記者会見です。近いうちにやります。これをやって、一気に、モデルラボの知名度が爆上がりよ。もちろん、これだけでも、仕事の依頼は舞い込むわ、信じられないくらいにね。たぶん、どれだけの効果があるかは、国内の人たちには、そこまでわかってないかもしれないわ。そして、一気に、売り込みも始めて、大きな仕事をどんどん増やすのよ。」

ユキのマーケティングリサーチの能力は、相当なものであった。そのトレンドがなぜ流行っているのかまで分析できる能力は、とても鮮やかで、その読みは的確であった。それにより、あとどのくらいたったら、どれがトレンドとなるのか、あるいは、このトレンドはどのくらいまで、トレンドなのかまで把握することも可能だった。それと、この、今、ピークとなっているトレンドを、彼女の視点から、どう変えたら、別のトレンドが生まれるかなども自由自在にあやつれるのであった。

そして、売り込んで採用されたモデルは、商品やその自分の立場に対して、どのように取り組んでいけばよいのかを、ユキは、常に把握することができたので、その仕事による企業への効果は絶大であった。それによって、次回への仕事の契約へと常に繋がっていった。つまり、一度受けた仕事によって、その企業との深いつながりができていくということなのだ。結局、ユキの、企業との戦略は、その場限りのものではない、継続することを常に考えて動いていた。

そして、こちらから提案したトレンドへの戦略によって、その宣伝におけるモデルの人気と商品への注目度を後押しして、宣伝の効果は、倍増していった。すると、ユキから、

「さて、次の一手の発表をします。このタイミングで、私がこれから、一つのトレンドを作っていきます。ファッション関連の業者各社に、世界的トップモデルMMの所属事務所移籍の発表記者会見を近日行ないます、と、本日、まずメールをします。そして、明日、記者会見は3日後に行ないます、ともう一度メールします。そこで、私は、モデルMMって誰、とか、スーパーモデルMMって知ってる、等、ネットで拡散します。すると、会見までに、様々な形で関連ニュースがあふれていき、このことによって、モデルラボに関する様々なことや、事務所そのものに関わらず、所属するモデルの個々のことに至るまで、検索件数が増えることで関連したことが、どんどん発信されるようになるのです。しかし、あまり予告から発表まで長くすると、余計なことまでさらされることとなるので、長くもなく短くもない、3日という微妙な期間を置いています。そして、ネットニュースで、だんだん話題になってきたところで、記者会見当日になります。お膳立てはできました。これで、みんなは、写真ではない、リアルな生のMMを見たくて、記者会見を見ることでしょう。MMといえば、海外、特にヨーロッパでは有名ですが、割とファッション関係に興味がある人たちとか、その道の専門家や同業者に知る人は多い一方で、特に国内では知らない人もかなり多いです。ということで、今回から、日本を拠点に置くわけですから、これまで通りヨーロッパにも仕事に行くにしても、もっと国内で名前が知れた方が色々都合がいいと思います。」


そして、いよいよ、会見の日がやってきた。会見会場に現れたのは、MM本人と、事務所社長。

会見会場には、なんと200人以上の取材陣が集まっていた。そのうち、50人以上は海外からのファッション業界の関係者である。まさに、ここにMMの海外での活躍ぶりが表れていた。芸能人のスキャンダルでもなく、これほどの取材陣が集まることは滅多にない。これだけでも、MMが海外でどれほど有名なのかがわかるのだった。時間がきて、関係者が、会見を始めることを伝える。

「それでは、お時間が参りましたので、世界的トップモデルMMの事務所移籍記者会見を行ないます。」

ものすごい数のフラッシュがたかれている。

2人は、椅子から立ち上がり、一礼をした。そして、静かに座ったあと、一拍おいて、モデルラボの社長、小染有希が、まず口火を切った。

「本日は、お忙しい中、このような席を設けて頂きまして、ありがとうございました。ここにおります、モデル MMは、本日、フランスのモデル事務所より、当事務所モデルラボに移籍致しましたことを、ここにご報告させて頂きます。それでは、本人からご挨拶がございます。」

そして、軽く会釈したMM、

「本日は、多方面より、多くの方々にお集まり頂きまして、ありがとうございます。」

ここまで言うと、MMは、続けて、英語、フランス語、イタリア語、スペイン語で、ここまでの挨拶を繰り返した。そして、また日本語で、

「これまでは、ヨーロッパで中心に活動をし、主にフランスを拠点としていましたが、しかし、同じ日本人として、今後は、日本の皆さんに、私のことをもっと知ってもらいたいと思い、帰国して国内の事務所に移籍することと致しました。しかし、ヨーロッパにおける活動は、今後も同じように続けてまいります。その上で、国内にも仕事の幅を広げて行かれればと思っておりますので、どうか宜しくお願い致します。」

同じく、4ヶ国語で、繰り返し報告をした。

そして、会見の進行者から、

「それでは、いくつか質問を受けますので、挙手でお願いいたします。それでは、手前の女性の方、どうぞお願いします。」

「フランスのファッション雑誌バーグの日本版の編集部、足立と申します。今まで、フランスを拠点にしてヨーロッパで大活躍されていましたが、今回なぜ急に日本を選んだのでしょうか。」

「いつか帰国して、日本を拠点にするつもりでしたが、いくつかのタイミングが重なったので、今回にしました。」

「次の方は、いらっしゃいますか。あっ、海外の方ですか。」


すると、MMが発言をした。

「この方は、私が質問と回答を通訳してお伝えしましょう。」

(ここから、MMが通訳して答えて、日本語にして、発表した)

「今、こちらの方から、me-tubeはどうなるのか、という質問がありましたが、定期的に配信している、MM in Japanは、どうなるのかということだと思いますが、変わりなく今後も続けていきますので、ご安心下さい、と答えました。これは、ヨーロッパの方々には、1番気になったことかと思います。いつも観て頂きまして、ありがとうございます。これからも宜しくお願い致します、とお答えしました。」

そう答えると、外国からの記者団から、拍手が起こった。MMは、me-tubeでも大人気だったのである。


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