30話
シンディウス皇子に頼まれて彼の剣、タイガー・フォレストこと、タイガと戦うことになった。
タイガは《身体強化》を使っているみたいで、序盤から激しい打ち合いとなった。
長く続くと思われた打ち合いはタイガの《身体強化》が切れて、アッサリと決着がついた。
どうやら、タイガは《身体強化》が使えるといっても無意識で使っている状態らしく、蛇口を思いっきり解放したような勢いで魔力を使いきったみたいだ。
周囲の反応をみるに《身体強化》を使うことが出来るのは数人みたいで、《身体強化》を使えるタイガの実力はかなりのものらしいことがわかった。
「まったく相手にならなかったな」
「いい動きだったよ」
落ち込むタイガに声をかけて手をさしのべて起こした。
我流の剣にはない洗練された動きが勉強になったから、この模擬戦はお互い得るものがあったと思う。
「いいものを見せてもらったよ」
「どうも」
「あっそうだ、サウザーには気をつけなよ」
「それって」
シンディウス皇子はすれ違う時に、第二皇子に気をつけるよう言って引き上げてしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ユリィは今後、リリアンヌ皇女を支えることに決めたようだった。
なので、リリアンヌ皇女のもとへといこうとしたところで教会の人に捕まってしまった。
立派な建物、ユミル教帝都支部とでも言うのかな?幻獣の被害にあった人に炊き出しをしたり、親のいない子供を保護したり積極的に活動してるらしい。
ゼノが預けられるのではないかと不安そうにしてるので手をつなぎながらついていく最中だ。
「どうぞ、こちらへ」
案内されて教会内へと入る、そのまま中央を進んで奥にある控室のような部屋に入る。
部屋の中にはさらに扉があったが、本棚を操作したあとに少しして浮遊感がした。
浮遊感がおさまると入ってきた入り口を開いて、部屋から出るよう告げられる。
「なんか、すごいね」
「仕掛けが大げさ過ぎない」
感想をいいながら部屋から出ると、女性が待っていた。
白を貴重とした修道女特有の貫頭衣を着用し、左右の腕と腰あたりに斜めになった十字架がある。
「ようこそ、おいでいただき感謝します」
「それで用件とは?」
「話が早くて助かります……あなた方にはユミル教の洗礼を受けてもらいたいのです」
ユリィがユミル教の信者としておくことで、ユリィを取り込もうとする輩に対する牽制になるのだと言う。
ユリィがこれからリリアンヌ皇女のもとで活動する助けにもなるそうだ。
第一皇子、第二皇子派につくことになっても必要な措置らしくやっておいて損はないようだ。
「あなたも受けておいてくださいね勇者様」
「なんのことかな?」
ユミル教がどこまで情報を持っているかわからないので、勇者の部分にはとぼけておく。
「おやっ警戒させてしまいましたかな?、幻獣を倒すことが出来る人なんて、勇者くらいなものですよ、それに……」
「それに?」
ゼノが気になったのか聞き返してしまった。
その反応に気をよくしたのか、周りをゆっくりと見渡して他のメンバーの反応を観察してるようだ。
「【神託】があるのですよ」
「【神託】?」
「えぇ、『樹月に幻獣により国が滅び、勇者が召喚される。勇者が幻獣を討つ時、帝国に新たな時代が訪れる』と……樹月に滅びた国はルメリアのみですからね」
帝国の新たな時代は、現皇帝アキレスの崩御が濃厚らしい。
次代の皇帝が誰になるかわからないが、遺言などもないので御家騒動になったりして隙を見せると、周辺国が仕掛けてくる可能性が高くなるそうだ。
「第一皇子様は初代様と同じように民を守って前線に赴く皇帝を目指してますね、第二皇子様は弱者を切り捨てる、自分についてこれる強者以外は不要と考えていると思われます」
ユリィがつく予定のリリアンヌ皇女は、初の女帝ということで賛否が別れるようだった。
どういう帝国にしたいかの考えもハッキリとわからないらしい。
「そこで、新たにユリアーナ様に白羽の矢がたつのです、勇者召喚で幻獣に対抗する手札もあり、皇帝レースに参加すればかなりの票は取れるはずです」
「私は皇帝になるつもりはないですよ」
「残念ですが、仕方ないですな。阿保な輩が動き出す前に洗礼を受けて皇帝にならないと証をたてる必要があるのです」
そこで最初の洗礼につながるようだ、ボクはユリィの剣ではないしユリィに皇帝レースに参加する意思もないけど、ちゃんとならないことを宣誓しておく必要があるようだ。




