29話
ルメリア国が幻獣にやられてから一月以上たったけど、ようやく帝城へとやってきた。
近くの平原では謎の集団との戦いが続いているが、さっさと報告を済まして自由の身となりたいものだ。
「そこにいるのは、ユリアーナかい?」
「お久しぶりです、殿下」
皇帝謁見の為の控室らしきところへ案内されて、呼び出しを待っていたら、いつの間にかに金髪碧眼のイケメンが立っていた。
帝国の第一皇子で本来ならここにいないはずの人だ。
「おやっ、警戒させてしまったかな……とりあえず移動しようか」
ボクの方をみながら、爽やかに言う第一皇子はユリィについて来るように言いさっさと行ってしまう。
第一皇子の後について向かった先はだいぶ奥の方にある部屋だった、城の構造的に皇帝陛下の私室とかではないだろうか。
「入るよ」
第一皇子が扉を叩くと、少しして扉が開いてメイドが中へ入れてくれる。
第一皇子に続いて中に入ると、部屋の中央に天蓋付きの豪華のベッドが置かれているのが目に入る。
「だいぶ前から具合が良くなくてね、医者によるともう長くはないそうだ」
「そんな」
ベッドに横たわる人物がユミル帝国現皇帝のアキレス・ユミルらしかった。
長い間動かしてないのか、ベッドからのぞく腕は細く、カーテン越しにうっすらと見える顔もやつれているように見えた。
「というわけで、公式の謁見は出来ない」
次の皇帝が誰になるかでもう揉めているそうだ、遺言を用意してないので次に目が覚めた時に何かしらあるのだとは思われる。
つまり、第一皇子が本来の北にいないのは相続関係でそばにいたいということなのだろう。
「大変だったね、ユリアーナ……無事で嬉しいよ……ヒカリだったかな?、ユリアーナを助けてくれてありがとう」
一月も前のことだし、一応コウメイも報告に来てはいるので抜けている部分を埋めるように、今までのことを話した。
ユリィがアポカリプスにさらわれたり、ボクが【異世界召喚】を使って喚んだ勇者という話で驚いたり、観察してるぶんには良い皇子なのだろう。
これで腹の中ではボクやユリィを利用出来ないか考えていたらたいしたものだと思う、そんなことを微塵も感じさせない立ち居振舞いだった。
「さて、ユリアーナはこれからどうしたい?」
提示されたユリィの身の振り方は大きく三つあった。
帝国を支える為の貴族社会復帰、政略結婚などで属国のどこかに派遣される、平民となり普通に暮らすの三つ。
ユリィの答えは帝国を支えるだ、事前に相談されていて知っていた。
ただ、どこの派閥につくかが難しいところで第一皇子シンディウス派、第二皇子サウザー派、第二皇女リリアンヌ派のどれかが濃厚
留学中の第一皇女フランセットや、皇帝の器じゃないと早々に帝位を放棄した第三皇子フィロリスを引っ張りだしたりすることはないだろう。
帝国の皇子、皇女には、それぞれ剣と杖が与えられる。
これは武官と文官を意味しており、第二皇子の武官は亡くなったばかりで不在だった。
第一皇子の文官も幻獣から身を盾にして民を守り亡くなっている、第二皇女は両方が不在だった。
ユリィとはそこそこ付き合いがあったらしいリリアンヌ皇女の派閥に入るのが良いのだが、リリアンヌ皇女はあまりやる気がないようなのだ。
帝国200年の歴史の中で女帝は存在しておらず、はじめての女帝の誕生と目されていたのだけど、ある時を境に積極的に動かなくなっていた。
「もうしばらく、考えさせてくださいシンディウス様」
「昔のようにシンと呼んでくれて良いんだよ」
「そういうわけには」
「そうかい……このあと、少しヒカリを借りてもいいかな?」
ユリィは答えを保留にすると、ひとまず報告は終わりとなった。
シンディウス皇子にとってボクという存在は手に入れたいものだろう、値踏みするような、微妙な眼を向けられた。
「なんでしょう?」
「うちのタイガが手合わせしてみたいらしいんだ、良かったら頼まれてくれないか」
タイガというのはシンディウス皇子の剣らしい、皇子の後ろにたっている人物で少し気にはなっていた。
さっきから、抜き身の剣のようなオーラを放っている。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
兵士達の訓練所へとやってきたボク達は、それぞれ準備を始める。
なぜかシンディウス皇子も一緒になってついて来て、審判役をするとはりきっている。
「ハァ、どうしてこうなった?」
「娯楽がないからでしょ」
「ヒカリ姉、頑張って」
渡された木剣の感触を確かめながら、軽く振って馴染ませていたら、いつの間にか周りが騒がしくなっていた。
さすがに賭けごとには発展していないが軽いお祭り状態になった訓練所をタイガのもとへと向かった。
「これより、模擬戦を始める……軽い怪我くらいならすぐに治療出来るように手配してあるから、二人とも存分に戦ってくれ」
大事になったなぁと思いながら、うなずいておく。
シンディウス皇子が少しさがった。
「タイガー・フォレスト」
「ヒカリ」
互いに礼をして名乗ると剣を構える。
「はじめっ!!」
シンディウス皇子の合図とともに、彼の剣との模擬戦が始まった。




