7話 自重しない、異世界人
閑話については次々回にて。
内容が未来の時間のものになってしまったため、本編を進行します。
空間をひたすらに、走る。
商店街の天蓋、そのぎりぎり下を走る。
正確には、そのぎりぎり下の空間を空間固定を行い、その上を走っているのだ。
分かりやすく言うと見えないブロックの上をBダッシュする配管工だな。
下をサーチしながらなので、走るといっても、軽くランニングして下を見る、みたいな。
あ、オレは高所恐怖症なので、下を確認するのはAIの仕事。
調べないといけないのは、3点。
・ヒロシの居場所と動向
・アヤの居場所と動向
・暴れているらしい異世界人の居場所と動向
うち1点は簡単だった。
アヤはまだ、着いてない。
AIの調べでは、まだ家にいるとのこと。
騒ぎにも巻き込まれない距離のため、安全だろう。
とりあえず、こちらに向かう動きがあれば警告をしてほしいとAIに伝えてある。
次に、異世界人の居場所。
これも簡単だった。人の波と逆方向だった。
だが、おかしいのは動きが全くないのだ。
あくまでAI情報なので、具体的な情報がない。
まあ、調べる必要はないだろう。下手に巻き込まれても困る。
戦う? いやいや、元事務員で現喫茶店の料理人がやることじゃないでしょ?
たとえ、スーツが強くても中の人が強くなるわけじゃないんだよ?
とまあ、誰に言い訳してるんだろうか。
一番わからないのはヒロシだ。
AI情報では、波をうまく回避し、待合場所の方向へ向かっている、とのこと。
ん? 待合場所は、異世界人の場所からかなり近いのだが、ってまさか。
まさかと思うが、アイツ、戦うつもりか?
そうでなくとも、待ち合わせ場所に律儀に向かうか普通?
あ、普通じゃない。変態科学者だった。つまり、向かう可能性はもちろんあり。
「ヒロシが人ごみから完璧に逃れてから、合流して撤収は可能?」
『可能』
最近のAIは実にすばらしい。昨日の朝にアップデート。
機械音声で返答が来た。昨日までウインドウ枠でのメッセージだったのに。
今も、難しい言葉や注意事項などは音声併用でウインドウ開くけどね。
「じゃあ、ナビゲートお願い!」
『了解』
そうしてオレは、何もない空間をゆるやかな坂を下りるようにランニング、はかっこ悪いので、見た目は滑空しているように動く。
ほら、一応変身してるからそれくらいは。
着いた先にはヒロシ、と異世界人と思われる戦闘員2名。
「ジャストタイミング! お前なら来ると確信していた」
ヒロシ、お前は何をオレに望んでいるのか。面倒は困る。
「これが私の研究成果。正義のヒーローだ! さあ、異世界人よひれ伏せ! そして二度と来るな!」
「いや、まだ対峙してないから。ってああ、大声出したから見つかった!」
ヒロシ! お前なんてことを! ここで逃げれば何事も起こらずに、明日から喫茶店の仕事が!
変身した後、格納空間に入れた服で、何とかこの世界でも仕事頑張ろうと思ってたのに!
……仕方ない。とりあえず、やることは決まっているのだからそれだけはやろう。
「あ! お前は佐々山じゃないか! 組織から逃げたと聞いたがなんでこんなところに!」
「ふん! 異世界人に話す必要はないな!」
ヒロシ! お前はなんでそう挑発するかな! 相手はパワードスーツだぞ!
「おい、三笠! 変態に関わるなって! 確かに佐々山は逃げたけど優先度はなかったろ?」
戦闘員Bが戦闘員A、ではなく三笠くんをなだめている。
両方とも日本語が堪能です。ということは日本人で、男性。声色は若いので高校から、二十歳くらいと想定。
『正解』
ほら、AIも音声で正解って。じゃない。関係ないから。付き合いがいいのはうれしいけど。
「あ、そうだったな。いや、なんかむかつくからさ」
「オレもそうだけど……、今は仕事。任務優先だろ?」
「ちっ、しゃーねー! さっさと終わらせるぞ!」
と、二人は散開して商店街の歩道にある自転車を5台くらい一気に持ち上げ、それを大通りの一番広い十字路に投げて集めていく。
「ぐぬぬぬぬ! 私の優先度がない、だと」
「いいことじゃないか? 逃げられるし」
「何を言うか! この天才を何だと!」
少なくとも変態とか変人とは思われているのはどこも変わらない。
以前、深夜に一着の白衣を掲げ「すばらしい……。これぞわが白衣!」とか訳の分からないことを、地下の研究室という名の自室で狂乱しながら叫んでいたらしいことをAIが教えてくれたぞ。
と、しゃべっていたら、自転車タワーが出来上がっていた。
新しいオブジェ? にしてはなんだか雑だな。
「三笠ー、終わった?」
「宮川は? ってお前のほうが早いよなそりゃ」
「風力コントロールがあるからな」
「オレはこれで終わりっと。後は、火で燃やすだけだから、離れてろよっ!」
ほう、自転車をどうやら燃やすようだ。
やっぱりライターとかじゃない、よね。
『推測。戦闘員:宮川、能力:風力による物体への移動誘導。戦闘員:三笠、発火および火のコントロール』
何、それ。パワードスーツの能力かそれとも異世界人特有の能力?
うらやましい、じゃなくて、危ないんですけど!
ヒロシが特に危ない! 生身は危険だ!
『生身では耐えられない熱量がハカセに被害を及ぼす可能性は100%』
ありがとう、AI。この場合は逃げる策を教えて欲しいのです!
『判断。ハカセの行動パタ6ーンから回避不可。理由:ハカセが逃げない』
「なっ! ヒロシ、逃げろ! 早く逃げろ! ほらすぐに!」
「馬鹿にされて逃げるわけにはいかん!」
「馬鹿か! 死ぬぞ! 馬鹿は後から返上できる死ぬのは無理だ!」
早口で捲くし立てたが、ダメだこれ。天才と何とかは紙一重だが、いのちをだいじに、とかは覚えて欲しい!
AIの言うとおり、無理なものは無理なので、他の選択肢! お願いします!
『最適行動:戦闘』
いやなのが、きたー!
次回が戦闘回。
この回の表現が、杜撰になっているような気がしますが(汗
意見お願いします。