8話 戦いたくないやつが、戦うってこと
ようやく少しだけ戦闘です。主人公が戦闘嫌いなのでご了承を。
いやなものはいやだ。
だが、わがままばかり言っても仕方ない。
通るわがままなら、通してしまったほうが楽になれる。
だが、世の中には通せないわがままのほうが多い。
そして、わがままの前に、どうしてもそれを通してはいけない理由があるときもある。
死ぬことが分かっていても逃げない、というのは立派だ。
だが、立っている状況を理解していないのなら、それはただの蛮勇だ。
無謀とも言う。
そんな無謀に巻き込まれたオレ。
だが、そんな無茶苦茶野郎に、それとなく恩は感じてる。
正直言うと毎日感謝してる。言いたくないけど。
そいつが死ぬのは、ちょっと、どころじゃなくてかなりごめんだ。
そんな理由で戦うのは、なんだか可笑しいだろう?
でも、ヒーローをあきらめたことがあるオレなら、それくらいの理由でもいい。
誰かを救う。助ける。
感謝してる恩人を助けるくらいだ。オレにとっては、出来すぎるくらい、いい理由。
戦いたくはない。誰かが傷つくっていうのは、いやなんだよ。
相手も人間だから。オレも人間だから。
だからいやなんだよ。
二律背反。
だが、今回はオレのわがままよりも、理由のほうが強い。
……今回だけにして欲しいよ、本当。
「その花火の準備、ちょっと待った!」
自転車タワーと炎を手のひらに生む戦闘員--三笠の間に高速移動で割って入る。
「おい! どけよそこの仮面のパワードスーツ! って、佐々山の知り合いか?」
「できれば知り合いたくなかったけどな! あと、燃やすと空気汚染とかあんまりよくないからやめてほしい!」
恩人なんだが、できれば知り合いにはなりたくなかったな。
天才だが、変人だもの。
「こっちも仕事だからな! 死者は出したくねーが厳禁って訳でもねーからな!」
って火球がやってきましたよ! 野球のあの上から投法で、結構早いんですが!
やばーい。
……なんてな。
AI先生。お願いします。
『二酸化炭素の高密度膜、広範囲拡大。空間固定完了』
真空状態での空間作成からの固定でもよかったが、まあ、こっちのほうが綺麗な感じがした。
なぜって?
「おいおい……なんだよそりゃ」
「三笠の凝縮火球をあんな薄い氷のベールで消した?」
戦闘員二人の呟きも、このスーツは聞き漏らさない。
「ま、ま、まあ? それくらいは当然だな! さすが私! フハハハハ!」
聞き漏らしたい迷惑変態の声も。
氷に見せかけて実はその前に二酸化炭素で焼却。
二酸化炭素は高圧縮されているのでドライアイス。
見た目氷、実はドライアイス。そして、その前の二酸化炭素膜。
問題は、すぐ効果が切れること。イッツ・イリュージョンドライアイスフィールド。
「思いつきにしては上出来っと」
煙とともに消えるドライアイス。
キラキラと、煙とともに消える。予測じゃこれ、綺麗じゃないか? って思ったんだよ。
これが真空空間にしなかったわけ。
ちなみにこの技を思いついたのは、あいつの炎を見たとき。
瞬時にAIに確認し、可能かどうか確認。後はタイミングだが、これはAIまかせ。
「さて、話し合おうか。それとも、まだやるかい?」
まあ、こっちは話し合いたいけど。どうもそんな雰囲気にはならないよね。
「み、宮川! こいつ、異世界人か?」
「氷のスキル……、間違いないと思うが、だが、こいつは情報ではすぐ逃げたと」
風の能力を持つ宮川が、呆然と突っ立つ三笠の横に駆け寄る。
その身内の回線を利用した話も筒抜けです。ごめんなさい。
「お、おい! なんで異世界人がこの世界のやつの味方するんだよ!」
三笠さんや。二人で話し合った結果が常に正しいとか思ったら、アウト。
それに異世界人だろうがなかろうが、人を傷つける行為はよくない。
実によくない。ダメ、絶対。
「誰が異世界人だって? オレは、自転車を燃やすなって言ったんだ。関係ないだろ?」
「この世界の奴らは異世界から来たからって俺たちを」
「だから報復か? だから潰せば全部思い通りか? 互いに分かり合えばいいだけだろ」
宮川の言い分を一蹴。そんな言い分が通じるなら、戦争だけじゃなくて個人間の殺し合いも容認されるな。
「んなもんあっちも理解してねーよ」
「そりゃ互いに喧嘩腰なら、理解なんて銀河系の向こう側だ。まともに話せるやつを探せ」
三笠は論外。現時点で改善の余地なし、と。
「で? 自転車元通りにするか?」
変身スーツの頭を掻きつつ、オレの要求を再度伝える。
「お、おいどうする?」
「三笠、アイツの戦闘能力は不明だ。だが、自転車に火をつけたら俺たちの仕事は終了だ」
「……なーるほど。じゃあ、宮川、お前は囮か」
「任せたぞ」
やる気満々で、構える戦闘員2名。分かっていたけど。
本当、気が滅入る。
仕事だからやっていいことと悪いことはある。
今回は確実に悪いこと。
そんなに自転車燃やしたかったら、しっかり粗大ごみの日に出す。
もしくは地域のごみセンターに持ち込んで料金を払いましょう。
勝手に燃やさないこと。
あと、人のものを勝手に燃やさないこと。
2人の年齢はAIから16から18歳くらい、とのこと。
前途有望な若者だからこそ、少しは痛くする。
ちったあ自分で考えろ、と。
って、自分もそこまでの年寄りじゃないが。
「じゃあ、い」
「その動きする前に、悪いが」
宮川の合図の前に、超スピードで宮川に近寄り。
がら空きの腹に右ストレート。
そのまま、吹っ飛ばす。
「なー!!」
「……アール・インパクト」
起こったことと反比例するように、静かにつぶやくように、それでも相手に分かるように声を出す。
アール・インパクト。何のひねりもなく右手(right)でぶん殴る(impact)。
だからR・impact。何か、ひっかかりを感じる技名だが……。
まあ、特段のひねりはないが、分かりやすい。
ちなみに左でこれをやるつもりは今のところない。
フライパンとか握るの、左が多いから。
「大いに反省するように」
「どぉっ!?」
呆然とする三笠にも、最小動作でアールインパクト。
ちなみに飛んでいった先は、オレが一番最初にいた廃工場。
あそこなら人はないから安全だろう。
あの二人は死ぬことはない。これもAI様の計算さ。
まあ、相手のパワードスーツに感謝だな。
さて、ここからが本番だ。
「おーい! ヒロシー! 自転車元に戻すぞー!」
ボランティアの重労働のほうが、戦闘よりも辛いかもしれない--。
見上げた自転車タワーは、揺らぐことなく積みあがっているのだから。
閑話はもう少し伸ばします。
本編が続きます。
ちなみに主人公のスキルはあるにはあるのですが、判明するのは随分後です。




