Case.1 行方不明者捜索
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──Case.1 行方不明者捜索
県外から観光に来ていた若者が行方不明になった。
その若者はとある有力な政治家の息子だとか。
俺はその捜索を依頼されている。
そして足取りを追うのはそう難しいことではなかった。
俺が軍隊で教えられたのは、銃の撃ち方だけではない。
暗殺対象の人間を追跡する方法も情報軍では教えられた。
これから殺す相手のプロファイリングを行い、足跡を追う技術だ。
俺はその技術で問題の若者が市内のバーで魅力的な女性に誘われ、そのまま消息を絶ったことを把握した。
これは最近よく聞く話で、その話に俺は心当たりがあった。
巷で言われているようなヤクザ絡みの話じゃない。
もっと悪質な存在の仕業だ。
見当をつけた俺は問題の若者がいるだろう場所に踏み込んだ。
それは──。
「……ここだな」
廃墟になった古い城──ではなく、ただの城を模したラブホテルだ。
廃墟になってかなりの時間が経っているだろうに、人が出入りした痕跡がある。
俺はタクティカルライトを左手で、右手でサプレッサーが装着されたHK45自動拳銃を交差するように構えて進む。
廃墟の扉を素早く潜り抜け、暗い室内をタクティカルライトで照らし、室内をクリアリングしていく。
ベッドに掛けられた埃っぽいリネンは乱れており、情事の痕跡がある。
間違いなくやつらがいる。俺は確信した。
ここはやつらの狩場だ。
慎重に、慎重に。
普通ならツーマンセルで挑むような仕事なのだが、あいにく相方は今日は休暇だ。
そこで女の喘ぎ声が聞こえてきた。
荒い吐息で興奮した様子の声だ。
「食事の最中ってところか……」
俺は足音を立てないようにその音源に向けて近づく。
女の喘ぎ声に加えて、ギシギシとベッドが激しく軋む音もする。
「ビンゴ」
そして、俺は音のする部屋を確かめると、半開きになっていた扉を蹴り破る。
「動くな!」
タクティカルライトで照らし出されたのは、問題の魅力的な女性とやらだ。
褐色の肌を惜しげもなく晒し──黄色く縦長な爬虫類の瞳と捻じ曲がったヤギの角を有する女。
それがミイラ寸前という風体になってしまっている、俺が探していた若い男の上に跨っていた。
干からびかけているが、顔だけは幸せそうである。
「女夢魔め」
俺はそれを見て吐き捨てるように言う。
女夢魔──。
魅力的な女の姿で現れて男を誘い、こういう人気のない場所に連れ込んで精気を搾り取り、そのまま搾り殺してしまう性質の悪い低位悪魔だ。
「何よ、あんた。食事の邪魔をしないでくれるかしら? それともあんたもあたしに食べられたいの?」
女夢魔は甘く囁くような声でそう言う。
「黙れ。その男から離れろ。すぐにだ」
「はんっ。あんたに従う義理はないわ!」
突如『シャーッ!』と蛇が威嚇するような声を上げると、女夢魔は俺の方に飛び掛かって来た。
人間にそっくりな外見に反し、獣じみた素早い動きだ。
俺はそんな女夢魔に向けて素早く自動拳銃の引き金を引く。
狙うのはまず脅威となる鋭い爪が並ぶ手、それから足だ。
サプレッサーで抑制された銃声が微かに響く。
「きゃあっ!」
女夢魔の右手と左の太腿を45口径拳銃弾が貫き、鮮血が舞った。
女夢魔は悲鳴を上げながら、後ずさりし、俺から距離を取る。
「人間め……!」
そして忌々しげに俺の方を睨む女夢魔。
「他にも犠牲者がいるはずだろう。そいつらはどこだ?」
「そこら辺の魔獣の餌にしたわ。あんたも食われてしまえばいい!」
「そうかい」
俺は女夢魔の頭に2発の銃弾を叩き込んだ。
女夢魔の頭が弾け飛び、その死体は硫黄の臭いを漂わせながらさらさらと灰になっていく。
女夢魔の死を確認してから、俺はベッドでまだ幸せそうな顔をして干からびている若者のそばに向かう。
「おい。大丈夫か?」
俺が男にそう呼びかけると、男はうっすらと目を開いた。
「ああ……。何かとてもいい夢を見ていた気がする……」
「それはただの悪夢だ。忘れろ。さあ、病院に行くぞ」
俺は男を担ぐとラブホテルの廃墟を出て病院に向かった。
病院にこいつを届けて保護者に連絡すれば、俺の仕事は終わりだ。
高額な報酬が約束されているので、それだけが楽しみだ。
これが終わったら贅沢な食事でもしよう。
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