投票前の動き
俺は女子の集団と他愛のない話をして正門をくぐった。
中ではすでに男女かかわらず多くのクラスメイトが戻ってきている。
多くのクラスメイトがエナジードリンクや疲労回復の栄養剤を手にしている。
まあ、<体力回復薬>があったら一番楽だったんだけどそんな贅沢は言ってられないしな。
俺も女子のグループと別れを告げ元居た席に戻る。
幸司郎がペットボトルのスポーツドリンクを1Lを持ってきてくれた。
ありがたく飲み干す。
本日何回目かわからない、全身に水分がいきわたる感覚にひと時の快感を覚える。
これからの流れとしては模擬投票はなく、本番の投票まで進んでいくはずだ。
ここで渡辺が何かしらのアクションを起こさなければ、模擬投票結果がそのまま踏襲される。つまり、あいつにまつのは「死」のみ。
人間であれば絶対に避けなければならない事態だ。
その臆病な渡辺のケツを蹴り上げるのは五百旗頭の役目だ。
今すぐにでも動き出してほしいが、すぐに投票が始まる気配はない。
急いで間違った方向へ導くよりも、ちゃんと考えてから行動したほうが効果は大きいだろう。
◇
「ちょっといい、茶兎くん」
しばらくすると、俺の向かいに座る山口のところにやまゆりが話しかけに来た。
「なんだい、百合。」
「これから私たちは人狼(AI)を見つけるための話し合いに入ることになるんだよね?」
「その通りだ。今、どうやって話し合ったらいいのか考えていたところだよ。」
さすがクラスリーダー…のAI。もう次の一手を考え始めていたか。
人間であれば本当にお疲れ様なことだ。俺は違うと思っているがな。
「正直、今回の鬼ごっこだけだったら情報が欠落してる。各々がこの人がAIなんじゃないか、っていう憶測の元なんとなくで誰かを処刑しようとしている。」
端的だが、ストレートな言い回しに場の空気が一気に凍り付く。
確かに、俺のようになんとなく山口などが怪しいと思っているケースもあるだろう。
ただ、ほとんどのクラスメイトにとっては「なんとなく渡辺をAIだと思っている」状況なのではないだろうか。ここで一考の余地を促すというのは、渡辺にとっては逃すべきでないアピール機会でもある。
「その通りだ。今までも模擬投票はそのように行われていた。
だから、みんなが持っている情報を出し合っていこうと思っていたのだが──」
「私たちにはまだ情報源がある。」
茶兎くんの話を遮り百合が語る。
「私から限られた時間を有効活用する方法を共有したい、いい?」
普段大人しめのやまゆりにしちゃあ自分から発信なんて珍しいな。
「その提案っていうのは?」
「これから何時に投票があるのかはわからない。どんな形式なのか──例えば、模擬投票と同じようなやつかもしれないし、もっと複雑なのかもしれない。
その時に情報が大事になってくる。そして、このゲームではもう一つの勢力が存在する。それが配信者」
「ただ、配信者側は3日目が終わるまで俺らに干渉できないって話じゃなかったか?」
そう言ったのは俺の隣に座る幸司郎。
「確かにそう。ただ、私たちと一緒で向こうでも誰がAIか模索する動きがあるみたい。例えば」
そう言ってやまゆちは自分のモバイルYOHを調整してProofのホログラム画面を調整して大画面に表示する。何かクラスのみんなに見せたいものがあるらしい。
画面に表示したのは、Proofに投稿されている唯一の動画
アップロード者:出席番号7番 川本 アリス
タイトル:【緊急】配信者のAI見つけました。By 林檎 わん
これは…川本の動画?




