この世界に転送装置なんてなかったはず。
窓の外を見てみると、急に身体が光だしたことに驚愕する。
「え、あ⁉」
脳の理解が追い付くまでもなく身体が光に包まれる。
次に感じたのは宙に浮いていること。
それに対して対処できなかった俺は盛大に転ぶ。
その勢いでどこかの壁に頭をぶつけたようだ。
「イッタ…」
頭で一番痛いところに右手を持って行き頭をさする。
それから目の前に持ってきて、出血してないことが分かった。
その次に試みたのは状況把握。
「ここはどこだ…?」
明るい店内、茶色ベースの壁、多くの人。
人の中には椅子に座っているもの、倒れているもの、立ち上がっているものがいる。
俺は倒れているものだ。
頭の痛みが引いてくるとともにだんだんと状況がわかってきた。
まず、周りにいる人のなかで座っているものはクラスメイトであることだ。
よくよく見ると倒れているものもクラスメイトだ。
「だ、大丈夫か?」
隣に座っていた人物は林 夕だったようだ。
「あ、ああ」
林の手を借りて俺は身を起こすことに成功する。
「これは一体何が起きてるんだ?」
「俺もわからない。山口が乾杯の音頭を取ったときに急遽真っ暗に…次に明るくなったらこの様だ。」
林の言葉に誘われて俺も周りを見てみる。
するとクラスメイトがたくさんいることがわかる。
その数...全員?
「ちなみに、ここはどこなんだ?」
林に問いかける。
「ん、ああ。ここは居酒屋だよ。山口が予約していた。」
居酒屋ってことはここは同窓会の会場ということだ。
頭が混乱する。さっきまで俺は自分の車に乗っていたはずだ。
それで窓の外を見ていて、光が自分の中から出てきて…
収まったらワープしていた?というか自分の車どこいったんだ。
あれ、中古の割には高かったんだけど。
そんな中、クラスリーダーの茶兎、問題児だった渡部、筋肉マッチョの五百旗頭が言い争っているのが聞こえる。
その3人全員が何が起きているのかわかっていない様子だ。
「とりあえず、ここ座れよ。」
林が自分が動くことでスペースを作ってくれる。
素直に感謝してそこに座ることにした。
その途端、また意識が遠のいていった。
◇
次に目が覚めたのは拍手と驚愕の声でだ。
ぼんやりする視界でピントが合うと、サッカーで足を骨折していたはずの幸司郎が松葉づえ無しで歩いていた。
次にその骨折した右脚で片足飛びをして見せる。
普段からSNSを頻繁にチェックする方ではないが、幸司郎が直近でやらかしたことくらいは知ってる。
ん?幸司郎?
隣にいる林に状況を聞いてみる。
「幸司郎って確かリモート参加だったよな。」
「え?お。ああ。そうだ。お前、もしかして今の全部聞いてなかった?」
今の?今の間何かあったのだろうか。
「悪い。多分俺頭を打った衝撃で気絶してたっぽくて」
「…」
急に沈黙する林に違和感を覚える。
「なあ、どうした?」
「…今の話が全部本当なら、全部終わるまで気絶してた方が楽だったかもな」
?
どういうことだ。
林に聞いても何も言わないので、誰かほかに話を聞けそうなやつに聞くしかない。
ふと通路上にまだ座っている人物が目に入る。
「宇都宮…!」
話しかけたのは、確か今回「リモート参加」を選んでいたはずの宇都宮。
流石にクラス全員とまではいかなくても出席番号が隣の宇都宮が「リモート参加」だということはわかっていた。
「お前も今日、この場にはいないはずの人間だよな?」
「そう…だけど、さっきの見せられちゃあこれが現実だってことを信じざるを得ないよね。」
「そのことなんだが──」
俺はその「何か」が起きた瞬間に気絶していたことを宇都宮に説明した。
俺もパニくってはいたがなんとか宇都宮には通じたらしい。
「急に飛ばされたってのは私も同じ。しかも私の場合は海外からね。」
そういえば、宇都宮は海外留学中だったはずだ。
「だから、今回世界でまだ発見されていないはずのワープ装置が使われたのはまず間違いないと思う。」
ワープ装置、、、確かに開発まで言ったら世界中そのニュースでもちきりになるだろう。
「だけど、私たちが置かれた状況はもっと世界のニュースになるかもね。」
そう意味を含んだ言い回しを宇都宮はした。




