業務効率化しても残業はある
そんなパラレルワールド、そっちからしたら近未来でも残業という概念はある。
それはある意味そうで、業務効率化した分、一人当たりに振られる業務量が増えるからだ。
確かに、労働に関する法律が厳しくなった分残業時間は規制になった。
それでも繁忙期に対する扱いというのはまだ甘い点が多い。
そして、3連休で入国者が多くなる今日。俺は残業確定だった。
というのも、入国審査は大体がAIが行う。
例えば、入国者が感染症に感染していないかも体温チェックのサーモグラフィー。
パスポートのチェック。
怪しいものを持っていないかの持ち込みチェック
人間が犯罪を犯す前に起こす特有の行動のカメラ探知。
仮に犯罪を防げなかった時の対応
などなど
本来であれば、すべてAIで全自動で出来る時代だが、その責任者は人間。
そして、その責任者というものは育成をしなければならない。
現在、他の公務員はわからないが入国審査官は、AIを操るには2年間の現場経験が必要。とされている。
だから、俺は今その「現場経験」の真っ最中。あと半年ほどすれば、AIを操れる役職への昇格試験がある。
去年からわかっていたことだが、やっぱり3連休は人が多い。
これはAIの普及による需要予測の精密さが上がったことで航空会社が連休に合わせた国際線の増便を行いやすくなったことに所以する。
通常のインバウンドに加えてたくさんの陽国民をここ梅山国際空港を利用する。
もちろん、運営会社側は年に数回の連休などに大きな予算を割くことなく、そのしわ寄せが現場に来る。
よって、俺は残業確定、と言ったわけだ。
(本当は、俺も20歳の集いに行きたかったんだけど)
そんなこと思っても仕方ないが、悔やまれることは悔やまれる。
ここがシフト制もいたいところだよな。
今日は天候が荒れ気味で飛行機の到着時間に遅れが出ている。
そして、今日は昼間に海外から薬物を持ってきた疑いで2グループが強制送還措置を取られている。
それもこれもあって今日は業務がどうしても長引く。
念のために入れておいた「遅刻するかもしれない」という連絡は結構現実味を帯びている。
やれやれ、今日のシフトは何時間延長かな。
◇
上司からの帰っていいぞ連絡を貰ったのは18:00の10分前。シフトは1時間延長だった。
もうすぐ同窓会で乾杯が執り行われる頃だろう。
いくらたち作業とはいえ疲れた肩をぐるんぐるんと回しながら空港を出て右側に向かう。
自分の出勤用自家用車に乗るためだった。
本来であれば、走ってでも行きたいところだが、今日はすごく疲れた。
それに同窓会への遅刻も確定だ。
目の前の快楽に向けて我慢できないで走り出すような子供でもない。
ゆっくりと従業員専用駐車場に入り、個人の自動運転車に乗り込む。
行き先を会場の居酒屋へ設定する。
すると、電気自動車はゆっくりと走り出した。
(車は全自動なんだから、入国審査も全自動にしてくれたらな)
なんて他愛のないことを考えたりもするが、そしたらいざというときに動ける人間がいなくなってしまう。
やっぱりこの俺が好きな梅山、いや陽国は人間の手で守らなければ。
と強い使命感を感じる。
ただ、今日は同窓会。久々に自分へのご褒美で自己啓発のAI学習とかはなしでいいだろう。
そんなことを考えながら、俺は胸をワクワクさせながら外を見ていた。




