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嘆きを眺める母  作者: 紡里


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聖女の嘆きを眺めて

竜騎士の恋人、聖女ちゃんの登場です。

「たかが竜に負けた女だと、皆が私を馬鹿にする!

あんたの息子のせいよ!」


聖女の甲高い声が石の壁に反響して、五月蠅い。


だが、私はその息子の母として、頭を下げる。

どうか治療をしていただけないか、と。



罵りの言葉を、下げた頭の後ろで聞きながら思う。


確かに、皆があなたを馬鹿にしている。

だが、それは、竜に恋人を取られた、魅力がない女ということではない。


そんな当たり前のことを知らずに「竜騎士の恋人」を名乗っていたのかと、呆れているのだ。



竜騎士は、竜と魂を結び合う。

幼少期から厳しい訓練を耐え抜き、竜騎士予備兵になれても、竜に選ばれなければなれないのだ。


竜騎士の誰にとっても、竜は特別。

親よりも、妻よりも、子どもたちよりも。


竜騎士の嫁になるのは、ほとんどが竜騎士の娘だ。

幼い頃は父親に怒りを感じても、そのうちに諦め、その後に父の部下の青年への情にほだされ・・・。



止まらない罵詈雑言の中に、ふと違和感を覚えた。


私は顔を上げ、すいっと聖女に顔を近付け、ささやいた。

「治療しないのではなく・・・できない?」


聖女がバッと体を仰け反らせ、後退りする。

「な・・・そ・・・ば・・・!」


なんで? それを? ばかな? ・・・かしら。



ああ、そういうことか。

中級聖女として砦に来たのに、いつの間にか上級聖女として君臨していた。


・・・中級聖女としては本物だったのに、今、この娘は「偽物」になっているのだ。



ここが、この娘にとって運命の分かれ道。


正直にできないと白状して、中級聖女に戻るのか。


「嫉妬で恋人を見殺しにした」という新たな重荷を背負い、上級聖女として生きていくのか。



もう、この娘に用はない。

私は踵を返して、その場から立ち去った。


さきほどの嘘くさい嘆きとは比べものにならないほどの絶望が、背中に届いた。

この母は、父親も夫も息子も竜騎士なので、強いです。心も体も。

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