第045話 石造りの街
V字ポーズのハジメが魔法陣の中に現れた。上手く出来たのを確信しているのかニヤついている。
立ち上がったハジメは転移魔法陣の周りを見渡した。
「うん、第四階層に間違いなさそうだな……」
第四階層は石造りの街の風景と言った趣であった。
街というより廃墟と言った方が良いのかも知れない。
「鬼城みたい……」
動画サイトで見た某C国のようなガランドウの建物が乱立している様子に思った。
「まずは上空から眺めてみるとするか」
ハジメはドローンを飛ばし自動飛行で録画を始めた。
後でマッピングしてから、今後どうやって行動するのか決めるのだ。
「端っこの部分だけ見てみよう」
ハジメは廃墟を端から覗き見しながら歩いていく。直ぐに引き返すつもりだった。
すると、廃墟の一つから何かがポヨンポヨンと動きながら出てきた。
「お、早速お出ましか……」
ハジメは石斧を構えた。
するとソフトボールより一回り大きいサイズのスライムが遺跡の中を動いていた。
「……また、お前か」
スライム。
第四階層に降りたハジメが初めて目にした魔物であった。
「いや……分かっていたけどね」
ハジメは再び現れたスライムに失望感を拭えなかった。
「きっと、次の階層に行くのに全滅させなきゃ駄目なんだろうなあ……」
階層が深くなるに連れて存在するスライムの数が多くなっている。
今度は五百匹を超えるのじゃないかと考えながら石斧をスライムに叩き付けた。
ぼよん
石斧は弾かれてしまう。やはり、耐久力はこれまでの階層とは違うようだ。
すると、スライムがブルルと震えたかと思うと何かを吐き出してきた。
「うぉっ!」
ハジメはスライムが吐き出した物をフライパン盾(付与:テフロン)で受け止める。
ジュウ……
何とフライパンが溶け始めた。何等かの腐食液のようだ。
幸いハジメの身体には掛からなかったようだ。
「ヤバイ!」
ハジメは急いで後退りしてから振り返りダッシュで逃げ出した。
明らかにヤバい液体だ。少しでも掛かると致命傷になってしまう。
「拙いまずいマズイ……」
転移魔法陣の所まで戻ってきたハジメは肩で息をしながら考えた。
「スライムに掛けられた液を鑑定」
フライパンの溶けかかった面を鑑定した。
『スライム粘液:強酸』
どうやら吐き出されたのは強酸性の液体であるようだ。
「フライパンを溶かす強酸ってレベルじゃないだろ……」
表面が溶けているだけだが溶解してるのには違いない。
うっかり触れてしまう事を考えるだけでゾッとしてしまう。
「強酸を防げる装備なんて持っていないぞ」
ハジメが着ているのはスゥエット(付与:体臭)の上にボロイキャッチャー装備。
とてもじゃないが強酸に対抗できないのは明白であった。
「ホームセンターに行って探すしか無いのか……」
取り敢えずマッピングして考えようと一旦帰宅することにした。
色々と萎えてしまったのだ。
ダンジョンから帰宅すると母親と妹が居間で会話をしていた。
「ねぇ、お母さん」
「なあに?」
「最近、またお兄ちゃんが変……」
「ふーん、どういう風に変なの?」
「何かずっとぬいぐるみに話しかけていた」
「……」
これはハジメが『傀儡廻し』の練習の為に、妹のぬいぐるみを借りた時の事だ。
「時々、手を振り回しながら裏山に歩いていくのよ」
「……」
これはハジメがステータスを確認していた時の事であろう。
「後、空を見ながら何かニヤニヤしながらブツブツ言ってる」
「……」
これはステータスパネルを確認している時なのだろう。
BPが地味に増えていくのって嬉しいよね。
「じゃあ、普段通りじゃない?」
「それと、コンビニで猫缶買ったら箸を付けられたって嘆いていたわ」
コンビニへ行くと言った時に、ついでに家猫のフンダリ用に買ってきた時の事だ。
「ちょ……ひもじそうに見えたのかしら……」
「野良猫と間違えられたのかも……」
「やあねぇ~」
「お兄ちゃん、滅多に洗濯しないからだよ」
「そうね、すれ違うとお父さんとは違う臭さがあるわね」
「お母さんからちゃんと注意してよね」
(うん、コレはまあアレだ。何考えてやがんだ?あの店員……)
ハジメは二人に見つからないようにそっとニ階の自室に向かった。




