第028話 目に見えないモノ
ハジメは自分の部屋に戻ってきていた。
探索を続けたいのはあるが、学校の宿題を片付ける必要がある。
「うーーん」
しかし、自分の机に座ったまま、ハジメは腕を組んで悩んでいた。
渇望して止まなかった魔法が使えそうな力を持っているは分かっている。
「自分を鑑定……」
名前:石垣一
階級:1
HP:5/5
MP:1/1
BP:1.193
状態:正常
職業:謎こんにゃく圧殺者
筋力:2
頑丈:2
敏捷:3
魔力:1
知力:1
幸運:1
特技:(鑑定:初回特典)
BP値が増えている。シンスライムプレスが順調に作動しているようだ。
返ってくる時に防鳥テグスをダンジョンから自宅まで引っ張ってきている。
それを手首に巻いているので経験値が入ってきているのであった。
「MPが減って無いのは何故なんだぜ?」
魔法陣の発動でMPを消費したのかもと思っていたが違っていた。
「でも、転移魔法陣は魔蘇で動かすってあったよな……」
事実、転移魔法陣を駆動させることに成功しているのだ。
きっと動かす切っ掛けに魔力は関係してくるのかもしれない。
「二階と転移のキーワードを魔法陣に伝えたのが魔力なんだろうな」
どちらか一方では転移は発動しなかった。
適切なキーワードで魔蘇に干渉するのだろうと想像している。
「ファイヤーボール……」
右手の手のひらに出現させるイメージで魔法名を唱えてみた。
何も起こらない。肝心の魔法そのものを発動させる事が出来ない。
「やっぱり駄目か」
ネット小説だと魔法名を叫ぶだけで魔法は発動していた。
何の訓練も鍛錬も教導も無しでだ。凄い事なのだと今だと分かる。
しかし、現実では叶わないのである。
「う~ん……」
何かが足りないのだ。
「まあ、魔蘇を身体から開放させるってイメージなのは間違ってないよなあ」
椅子に座ったまま天井を睨み付けている。
ダンジョンでメモしてきた図形を、ネット検索で類異性関係の比較を試みた。
ヘブライ文字と神聖文字に類異性を見出すも合致率は三十パーセントと低い物であった。
(古代文明の遺跡って線もあるな)
ハジメはこれらの文字の組み合わせで魔方陣の役割が決まると推測していた。
つまり見えない魔蘇に意味を持たせて機能させるのだと考えている。
(見えない魔蘇ね……磁力みたいなモノか?)
磁力は目に見えない。他にも重力子や光子に彼女の気持ちなども目に見えない。
しかし、存在している事を昔の偉い人たちが、色々と確かめたり玉砕したりしている。
人間の体には血液が巡る血管がある。それと同様に魔法が巡る回路が体内にあるに違いない。
車も道がないと走れない。
ハジメの予想ではそこを何とかすれば良いのではないかと考えた。
そこで魔法を使う為に鍛練を行う事にした。
まずはネット動画で見た瞑想。出来ることから試してみる。
分からない出来ないでは、折角出現したダンジョンを思う存分活用出来ないと思っている。
「言い訳を考えて生きてる訳じゃないからね……」
それはツマラナイ生き方なのだ。ハジメはもっとダンジョンを堪能したかった。
部屋中に御札(ネットから適当に拾った)を貼り付け気分を上げる。
エネルギーが躰の中を駆け巡るのを想像してみる。
ハジメがやっていることは道路整備みたいな事だと考えていた。
「う~ん……」
大気の中にある魔蘇を身体に取り込むイメージ。
鼻から吸い込み口から吐き出す。口から吐き出す。
そして、鳥居の柔らかそうな唇。
「まてまてまて、そうじゃない……」
違うイメージが紛れ込んでしまった。ハジメは頭を振って追い出す事にした。
柔らかそうな唇は魅力的だが、集中するのはそこではない。
「落ち着け俺……」
再び目を瞑って身体の中を魔蘇が巡るようなイメージを思い描く。
心臓からへその中心。そこから指先に向かう通路を作成をイメージ。
そして、魔法陣を辿る鳥居の指先。
「ち!がぁーう」
どうやっても、ハジメの煩悩がイメージの中に湧き出てしまう。
想像したいのであって妄想したいのでは無い。
(ううう……だって、オトコノコだもん……)
分かってはいるが横道に逸れてしまう。
部屋の中で胡座の坐禅ポーズのまま悶絶してしまうハジメ。
「………………」
ハジメの部屋のドアが少しだけ空いていた。
部屋のドアの隙間からジト目で妹のフタバに見られている。
(また、変な事してる……)
部屋中に貼られている怪しげな文様が描かれた紙。その中心で悶絶している兄。
でも、普段通りの兄なので気にしない事とにした。もちろん母親には言い付けるつもりだ。




