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Wine・Red  作者: 雪白鴉
六章
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76、隣の女子大生

 ざぁーという激しい雨の音を聞きながら、水瀬と白井は頭を悩ませていた。


「・・・どうしよう、着替えがない・・・」


 全身びしょ濡れでもちろん着ていた服なんてびしょびしょで着れる状態ではない。それを水瀬もわかっている。だからこそ大慌てなのである。


「私の服を貸そうにも私は白井さんの彼氏ではないですし・・・・」


 なぜこういう時に頭が回らないのか、適応力の欠如に水瀬は余計頭を抱えた。

 そして、その優秀なる頭脳をフル回転させてあげく、水瀬の中ではおそらく最善であろう回答が出てきた。


「白井さん、すみません。少し外に出てきます。すぐ戻りますから」


 風呂場の白井に聞こえるようになるべく大きな声で言ってから水瀬は外に出て、何をするのかと思えば、意を決して右隣のインターホンを押した。


「はぁ〜い」


 そうして出てきたのは水瀬のお隣さんの女子大生の御厨琴袮(みくりやことね)である。


「あれ、お隣のお兄さんじゃん。今日もイケメンだね。どしたん?」

「すみません、突然・・・」


 水瀬はイケメンなおかげでご近所関係は良好だ。特にこのお隣の琴袮とは比較的仲が良い。


「あの、実はですね、今、職場の女性の同僚が部屋にいるんですが」

「えっ!!ついに彼女!?」

「いえ、たんなる同僚です」

「なんだ、つまんない」


 目を輝かせた琴袮の期待をあっさりと裏切る水瀬。琴袮はあからさまにつまらなさそうな顔をした。


「それで、その・・・この大雨でずぶ濡れになってしまいまして、今着る服が無くて・・・」

「そんで私のところに来たんだ」

「はい」

「ん、わかった。ちょっと待ってて。すぐ行くから」


 理解力が凄まじい琴袮は部屋のドアを閉めてすぐに支度にかかった。

 自分の部屋に帰った水瀬は白井に「もう少しだけ待ってください」とだけ言って台所に立った。


 しばらくしてインターホンが鳴った。ドアを開けると、琴袮がカバンに大量の服を入れて立っていた。


「服、たくさん持ってきた!」


 まるで今から着せ替え人形で遊ぶかのように大量の服と満面の笑みである。


「で、その彼女(仮)はどこに?」

「ですから彼女でもないですし(仮)でもありませんから・・・」


 頭を抱えた水瀬は琴袮に風呂場まで案内し、その後は琴袮に全てを任せて水瀬はすぐにその場を去って、台所に戻った。


「ども!」

「ど、どうも・・・」


 バスタオルで全身を隠した状態の白井は、謎の女子に大困惑していた。


「暁さんに聞きました。あ、お隣のピチピチの女子大生です。怪しいもんじゃないんで」


 なんだか琴袮が色々言っているが、白井は混乱と恥ずかしさでいっぱいであった。そんな状態の白井にお構いなしにぐいっと琴袮が近寄る。


「ていうか、お姉さんめっちゃ可愛いですね!スタイルもいいし!!いいなぁ〜」

「あ、ありがとう・・・?」


 なかなか声の大きい琴袮。もちろん、もし水瀬が耳が悪くてもバッチリ聞こえるほどだ。実際、この女子特有のトークはバッチリ過ぎるほどに水瀬には聞こえていて、二人が知らないところで顔を真っ赤にしながら聞こえないように頑張っていた。


「沢山服持ってきたので好きなの着てくださ〜い」


 そう言われて大量の服が入ったカバンを渡された白井は、どうしようかと考え、カバンの中の一番上にあった服を着た。使っていいと言われたドライヤーで髪を乾かし、ちょっと恥ずかしそうにリビングに出た。


「・・・シャワー・・・お借りしました。・・・服もありがとうございます」

「よかった〜。ピッタリ!」


 リビングのソファには琴袮が座り、水瀬は台所に立って何かを作っている。


「あぁ、ソファに座っておいてください。もう遅いので晩御飯、食べて行ってください」


 琴袮に腕を引っ張られてソファに座った白井はずっともじもじしている。

 

 あたりを見渡した白井は、物の少なさに水瀬らしさを感じていた。しかし、台所はというと、綺麗にグラスというグラスが並べられ、見たこともないワインやお酒が並んでいた。これだけ見ればただの酒好きにしか見えないが、水瀬がバーでバイトをして、ソムリエの資格を持っていると知っていたら特に不思議なことはない。


「え、お兄さん、ソムリエの資格持ってたの!?」

「この前、とったばかりですよ」


 壁に飾られていたソムリエの合格証が目についた琴袮はとても驚いていた。


「・・・すっごぉ・・・」


 感心した琴袮はずっと合格証を凝視していた。その隣で白井は下を向いて縮こまっていた。


 シャワーを借り、服を貸して貰い、挙句こうしていさせてもらっている。自分が今日の天気予報を見ていなかっただけでここまでになるとは誰が予想できただろう。


「白井さん」

「っ!!」


 水瀬の声が聞こえてきて白井は咄嗟に肩が跳ねた。


「そんなに小さくならないでください。ご自分の家だと思っていてください。もうすぐ晩御飯できますから」

「・・・」


 背を向けているので水瀬の顔は見えないが、声だけで優しいのがわかる。

 白井はぎゅっと胸を抑えた。



 晩御飯まで作ってくれるなんて・・・・・・なんて素晴らしい紳士!!

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