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脅威、恐竜ゴーレムのブレス!

 さあて、試合開始だな。くっくっく、まずはこいつを食らわせてやろう。


「先手必勝! 食らえ! 恐竜ブレス!」


 我輩はドラゴンの使う技の代名詞、ブレス攻撃を試合開始と同時にぶっぱなす。火炎放射のような恐竜ゴーレムのブレス攻撃が、挑戦者達を一気に薙ぎ払う。ただ、火炎放射みたいとはいっても、その射程、威力は桁が違う。恐竜ゴーレムのブレスは、会場である王都北に広がる草原を、地面の表面ごと消滅させる。挑戦者の数は結構いたみたいだけど、この一撃で生き残ってるのは極わずかだろう。くっくっく。


 なにせ、恐竜ことビッグヘッドランドドラゴンの使うブレスは超強力だ。ゴブリンの街で初めて使われたときは、城壁どころか地面まで消滅したからな。このブレス、なんとなく火属性っぽくみえるのだが、ぷうの分析では、物質をとことん分解するような効果があるようなのだ。だから、魔力で物質が分解するのをがっしり防いであげないと、たちどころに体が分解されて、やられてしまうらしい。


 ま、今回は実際に死ぬことはない。ぷうの防御魔法により、一定以上のダメージを受けると判断された参加者は、石像に代わることにより大けがは免れるはずだからだ。とはいえ、それでも失格なので我輩としては何の問題もない。そして我輩の予想通り、この攻撃に耐えれたのは極わずかだったようだ。挑戦者たちのいた場所周辺には、大量の石像が出来上がっている。というか、☆7ランクの大会に出ていたメンバー以外、全員石像になっちゃったかもしれないな。


 だが、そんな我輩の放った恐竜ゴーレムブレスをものともせずに突っ込んでくる者たちがいた。そう、昨日の優勝チーム、チームわんがお~の面々だ。


 へえ、流石はぴぴが鍛えたメンバーだ。まさか恐竜ブレスをものともせずに突っ込んでくるとはな。だが、その程度のことは想定内というものだ。まあ、火炎放射タイプの収束の甘いブレスは耐えるはずと、ぴぴから聞いていただけだけどね。だが、我輩の操る恐竜ゴーレムの実力がその程度などと思わないことだな! こちらには巨大な尻尾も、鋭い爪も、強靭な顎もあるんだからな!


「がうがう! がうがう!」


 ふむ、クロ将軍を先頭に、ギルマスと、レーヴェ将軍、ブランシュが突っ込んでくるというわけか。わんこ大臣は一歩後方にいるから、補助魔法でも使ってるのかな? まあいい、ここは格の違いというものを教えてやるとしよう。


 我輩は恐竜ゴーレムの体をよじらせる。そして、思いっきり尻尾をしならせ、クロ将軍達目がけて尻尾アタックを仕掛ける。さあて、どうする? ぷうが言うには、パワーもスピードも恐竜ゴーレムのほうが上だ。わんがおの面々は、パワーが劣るから攻撃を受けれない、スピードが劣るからよけれない。くっくっく、完璧ではないか!


「チームわんがお、破れたり!」


 どっか~ん!


 我輩の恐竜ゴーレムの尻尾アタックが、見事にチームわんがおの面々を捉えたと思った瞬間、我輩はバランスを崩してちょっとだけ、よたよたとしてしまう。


 くう、何が起きた? 落ち着いて考えるんだ。恐竜ゴーレムはそう簡単にやられることはないんだから。我輩は冷静に今の状況を分析する。我輩は体をよじって、左側から尻尾による攻撃を仕掛けた。だが、攻撃が当たる瞬間、恐竜ゴーレムの尻尾に、チームわんがおのメンバーの内、わんこ大臣以外のメンバーが突っ込んできたのが見えた。でも、それだけのはずだ。ちなみにレーヴェ将軍もいたけれど、我輩の中ではもうチームわんがおのメンバー扱いだ。だって、ギルマスを慕ってるところとか、わんこ大臣を親父とよぶクロ将軍そっくりだし、もうそれでいい気ががするよね。


 っと、いまはそんなことよりも、なんで恐竜ゴーレムがよろけたのかだ。我輩は恐竜ゴーレムのからだをよじって、チームわんがおのメンバーがぶつかった尻尾を見てみる。するとそこには、支援魔法を使っていたわんこ大臣を除いた4人の攻撃のせいで、ちょっと欠けた鱗が4枚あった。いや、正確には恐竜ゴーレムは土のゴーレムなので、鱗模様の表面の土が欠けていただけなのだが。


「な、な、な、よくも我輩の恐竜ゴーレムに傷をつけてくれたな!」


 恐竜ゴーレムと当たった4人は、盛大に吹き飛ばされ、軽く1km以上吹き飛んでいたが、ハピは恐竜ゴーレムを傷つけられてちょっとお怒りモードだ。いや、リアリティという意味で言えば、たぶんビッグヘッドランドドラゴンも、格下と思っている相手に鱗を傷つけられたら怒り狂う可能性は十分にあるため、ある意味ビッグヘッドランドドラゴンの気持ちすら汲み取った、ハピの高等なゴーレム操縦技術のなせる業だ!


「食らえ、必殺、レーザーブレス!」


 ハピはすかさず追い打ちをかける。追い打ちの手はレーザーブレスだ。そう、あのゴブリンの街で、猫トラックがあやうく直撃をくらいかけたあのブレスだ。4人の飛んで行った方向には多少のばらつきがあった。そしてその内、ハピが捕捉できたのは二人だけだ。もともとハピは戦闘向きな能力ではないので、こういう時に的確に捕捉し続ける術は持っていないのだが、ライオンの二人に関しては、二人とも全身を炎で包まれていたので、非常によく目立った。おまけに炎が消えていないことからも、まだ倒せていないはずだ。


 そして、恐竜ゴーレムは、必殺技レーザーブレスを放つ。火炎放射タイプのブレスのように収束の甘いブレスではなく、レーザー光線のように、収束されたブレスは、見事に吹き飛んでいる火の玉の一つ、つまり、ギルマスかレーヴェ将軍のどちらかにクリーンヒットする。


「ぎゃおお~ん!」


 まずは一人・・・・・・。勝利のおたけびを上げ、ちょっとの間かっこよく黄昏た後、お次は吹き飛んでいなかったわんこ大臣を倒そうと、わんこ大臣がいた場所に振り向く。しかしそこにはすでにわんこ大臣はいなかった。どうやら逃げたようだ。


 ふ~む、これはあんまり芳しくないな。どこにだれがいるのかわからない。いっそここは、周辺丸ごともう一度ブレスで薙ぎ払うかな? 我輩がそんなことを考えていると、突然周辺に深い霧が立ち込めた。


 むう、これはわんこ大臣の仕業か、だがまあ、ブレスで吹き飛ばせばそれで終わりよ。


 我輩はブレスで霧ごと周囲を吹き飛ばそうと大きく口を開け、魔力を込めて、ブレスを発射する。しかし次の瞬間、下あごに衝撃が走り、口が閉じてしまいブレスが暴発した。口の中で暴発したブレスは、牙の間から周囲に飛散する。


「ぎゃう?」


 なんだなんだ? ってそんなの決まってる。アッパーカットみたいに下から攻撃を食らったのだ。本来の恐竜のブレスによる攻撃は、その名の示す通り、体内で息に魔法を込め、息として思いっきり吐きだす技だ。当然その瞬間に攻撃をされて口が閉じれば、一種の自爆に近い現象が起きる。


 我輩は即座にダメージのチェックをするが、どうやら大丈夫なようだ。なにせ恐竜そのものではなく、あくまでも恐竜ゴーレムなのだからな。ごっくんと食べる攻撃のために一応食道なんかはあるものの、内部も鱗と同じく土で出来ている。そう簡単にキズは付かない。まあ、フルパワーのブレスを止めれたのならともかく、今程度の軽いブレスを止められた程度じゃあ、本物の恐竜でもダメージはなかっただろうがな。


 それにしても、わんがおのメンバーは全員吹き飛んでていないはずなのに、だれだよ、我輩の恐竜ゴーレムに攻撃したのは。尻尾アタックの際にほかのメンバーがそばにいた記憶はない。いや、そもそも並みの使い手じゃあ、今使おうとした、ほとんどタメのない緩めのブレスを止めに入るなんて不可能だ。ってことは、わんこ大臣の仕業か?


 我輩がそのボディと同様に、たぶん大きいだろう脳みそをフル回転させて犯人を推理する。わんこ大臣っぽいが、証拠がないと悩んでいると、不幸中の幸いというべきか、ブレスの暴発だけでもかなりの勢いだったようで、わんこ大臣の霧は完全に吹き飛んでいた。うん、視界良好! 計算通り! 我輩が自らの大きい脳みその力に戦慄していると、犯人が自首してきた。


「ほっほっほ、流石にあの程度では自爆せんか。それに、悔しいがわしの力では顎にもダメージをあたえられんかったようじゃのう。じゃが、ここからはわしらの番じゃ、やらせてもらうぞい」


 そう、霧が晴れたと同時に、いつの間にか恐竜ゴーレムを取り囲んでいたチームわんがおのメンバーが、襲い掛かって来るのだった。


 ふん、第2ラウンド開始のつもりのようだけど、第何ラウンドあろうが、永遠に我輩のターンであると、思い知らせてくれるわ!



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